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健康経営オフィスとは?オフィスづくりで失敗しないためのポイントを事例付きで解説
働き方改革や持続可能な経営を推進する企業が多い中、「健康経営」という考えを取り入れ実践している企業の数も増加傾向にあります。
その一方で、健康経営について興味はあっても実践に踏み切れていない企業もまだまだ存在しています。
本記事では、健康経営の基本的な考え方から実践ポイントまでを詳しく解説していきます。他社の事例も紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
健康経営とは?
健康経営とは、政府が推奨する政策の一つです。
従業員への健康投資を積極的に行うことで組織の活性化や生産性向上を図り、企業の業績や株価の向上を実現することが目的であるこの政策は、日本経済の再興戦略の一環として重要な政策に位置付けられています。
健康経営に係る各種顕彰制度として、平成26年度から「健康経営銘柄」の選定を行っており、平成28年度には「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。
優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業」として社会的に評価を受けることができる環境を整備しています。
引用元: 経済産業省「健康経営」
「企業は、従業員の健康管理に対して経営的・戦略的な視点で取り組むべき」という考えのもと、健康経営を実践している企業を見える化しこの認定制度のスタートによって「健康経営=企業のイメージアップ」という印象が広がり、2024年時点で申請数・認定数ともに前年より増加を続けています。
健康経営とウェルビーイング、SDGsの関係は?
昨今、企業経営に関するキーワードとしてよく耳にするようになったものとして「SDGs」や「ウェルビーイング」があげられます。
いずれも、「従業員が健康的にいきいきと働ける会社」というイメージがあるため、健康経営と混同されているケースも少なくありません。
ここからは、健康経営とウェルビーイング、SDGsとの関係性について解説していきます。
ウェルビーイングとの関係
「ウェルビーイング(Well-being)」という言葉は、一般的には「幸福」「健康」と訳される英単語です。
世界保健機構(WHO)が定めた世界保健機関憲章内では、「健康とは、単に病気になっていないという状態ではなく、肉体的・精神的・社会的に完全に満たされた状態(ウェルビーイング)である」と定義されています。
出典:世界保健機関憲章 (https://www.who.int/about/accountability/governance/constitution)
ウェルビーイングは、仕事だけに限らず、個々の人生において健康で満たされた状態という意味合いとなるため、企業経営の視点から従業員を見ている健康経営という考えに比べると、より広く多面的な「健康」を意味する言葉なのです。
SDGsとの関係
全ての人類が取り組むべき持続可能な開発目標を定めたSDGsには、健康経営の基盤となる考えがいくつも含まれています。
そもそもSDGsは、地球全体という視点から持続可能な未来づくりのために取り組むべきことを定めたものであるため、自社の経営に軸を置いて考える健康経営よりも視座が高く設定されています。
そのため、SDGs内で設定された目標の中には、健康増進やジェンダー平等、生産性向上や働く喜びなど、健康経営の理念につながる内容が数多く含まれています。
健康経営オフィスを作る際に押さえておくべき5つのポイント
健康経営とは、従業員が個々の持つ力を存分に発揮できる健康状態の維持・増進を起点に経営の好循環を回していく仕組みです。
その好循環を生み出すためには、起点となるオフィス作りをしっかりと行うことが大切です。
ここからは、実際に自社のオフィスで健康経営を実践していくために押さえておくべきポイントを5つ紹介します。
1.快適と感じられること
視覚や聴覚をはじめとする五感への過度な刺激がないことや、正しい姿勢で業務にあたることができる環境、適度にリフレッシュできるスペースがあることなど、心身ともに快適だと感じられるオフィスは、従業員の健康維持・増進に大きく貢献します。
2.業務効率が高まること
業務上必要なものに誰もが効率よくアクセスできるオフィスレイアウトや、余分な人員や工数が省かれスムーズに業務を進めることができる業務フローなど、高い効率で仕事を進められるオフィスは、従業員の長時間労働の削減やストレスの軽減といった効果が期待できます。
3.コミュニケーションが活性化すること
社内で良好な人間関係が築きやすいオフィスは、仕事や会社に対する従業員エンゲージメントを高め、それぞれがやりがいや充実感を持って仕事に取り組みやすい環境づくりにつながります。
挨拶や報連相が行いやすい動線やレイアウトを考えたり、ブレインストーミングや共同作業が気軽にスタートしやすいスペースや仕組みを作ったりしてコミュニケーションの活性化を図ることは、従業員のメンタルヘルスケアや離職防止にも寄与します。
4.気分転換ができること
適度な気分転換ができるスペースや仕組みがあるオフィスにすることで、従業員は休憩やリフレッシュの時間を取りやすくなり、従業員の脳や心に疲れが蓄積することを防ぎます。
瞑想や仮眠ができる部屋やお菓子・飲料が無料のラウンジエリアの他にも、集中して仕事ができる個別ブースやスタンディングワークエリアなどが効果的です。
5.衛生的であること
新型コロナウイルスの流行を機に、オフィスにおける安全衛生管理に注力した企業もたくさんいるのではないでしょうか。
空調や換気システムの管理をはじめ、ゾーニングの改善や社内清掃の仕組みづくりを通じて、オフィス内を清潔に保つことで、様々な感染症の社内感染やアレルギー症状の悪化を防ぐことができます。
健康経営オフィスを取り入れた企業事例
ここからは、すでに健康経営オフィスを実現している企業の事例を紹介していきます。
キンドリルジャパン株式会社
ITインフラストラクチャーサービスの世界的プロバイダーであるキンドリル社は、2024年に日本のビジネス拠点であるキンドリルジャパン株式会社のオフィスを東京・六本木に移転しました。
「従業員エンゲージメント向上」をコンセプトに掲げた同社の新オフィスは、健康増進につながる歩幅サインをフロアにプリントしたり、高層階からの眺望を楽しみながらゆったりとコミュニケーションが取れるスペースを設けたりと健康経営につながる要素がふんだんに盛り込まれています。
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株式会社タイミー
スキマ時間を使って効率よくバイトを入れられるサービス「タイミー」を提供している株式会社タイミーは、2023年2月に東京・汐留に約890坪の新オフィスを開設しています。
東京都内を一望できる高層フロアのオフィスは、仕切りや壁のない執務エリアをはじめ、集中用個室、屋外のようなリフレッシュエリアやシアタールームやお菓子などが無料で利用できるカフェテリアなど、ワンフロアのオフィスが目的別にしっかりゾーニングされているのが特徴です。
同社のオフィスには、社内横断型コミュニケーションの活性化を促しながら、一人一人が高い生産性で働くことができるオフィスデザインに必要な要素がふんだんに盛り込まれており、健康経営オフィスのお手本と言えるでしょう。
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レジル株式会社
分散型エネルギー事業、グリーンエネルギー事業、エネルギーDX事業の3つを展開しているレジル株式会社は、「自分のキャリアは自分で決める」というコンセプトのもと、従業員の働き方を変え、ビジネスモデルを変え、社名もオフィスも新しくしました。
「意志ある成長が叶う場所」「働くことの制約にならない場所」を掲げスーパーフレックス制度を導入している同社は副業エリアを設けるなどして、従業員がオフィスを自身のキャリアの起点として自由に使ってもらえるように社員の成長をサポートしています。
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今こそ移行のチャンス!健康経営オフィスで自社の人的資本力を高めよう!
コロナ禍をきっかけに、自社にとって最適なニューノーマルを模索する動きが加速し、従業員が心身ともに健康な状態で仕事に取り組むことができる環境づくりの重要性を多くの企業が再認識するようになりました。
健康経営オフィスは単に安全で衛生的なオフィスではなく、そこで働く従業員がそれぞれの能力を存分に発揮でき、心身ともに快適と感じられる空間のことを指し、その空間は企業の業績やイメージに多大な効果をもたらします。
健康経営オフィスへのリニューアルや移転に際しては、本記事では紹介しきれなかった様々なノウハウやポイントがあるため、まずはオフィス移転のプロに相談してみることをおすすめします。