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オフィスインタビュー
vol.276 株式会社マツリカ

「つい行きたくなるオフィス」で、目的に応じた働き方ができる環境を。マツリカ 新オフィス見学ツアー

マツリカ創業時より続けてきたハイブリッドワーク。コロナ禍が落ち着き、出社回帰の流れが出てきて気づいたのは、「オフィス施策の不足」だったといいます。目的に応じて、オフィスが適しているときには出社を選ぶ従業員を増やしたいという思いで目指したのは「つい行きたくなるオフィス」づくりです。取締役の飯作さん、オフィスづくりの実務に携わる黒木さんにお話を伺いました。

飯作 供史
インタビュー
飯作 供史(いいさく ともふみ)
取締役

東京理科大学卒業後、アビームコンサルティング株式会社にて企業のIT戦略、システム導入、システム統合、IT運用等の全社BPRに従事。
また営業チャネル・販路拡大を目的とした新規事業を立ち上げ後、株式会社ユーザベースへ技術統括執行役員として参画。
プロダクト運営、製品開発に従事した後、2015年に株式会社マツリカ(mazrica inc.)を共同設立。

黒木 香織
インタビュー
黒木 香織(くろき かおり)
Corporate Culture Division Division Manager

大学を卒業後、フリーアナウンサーとして活動。その一方で、テレマーケティング会社やIT系ベンチャー企業でコールセンター運営、営業、バックオフィス全般と様々な業務を経験。成長企業でより専門的な分野に従事したいと考える中、マツリカのビジョンやバリューに共感し2019年に入社。大阪からリモート勤務&ワーママでも活躍できる環境に感謝が絶えない。現在はCorporate Culture のマネジメントを担当。

「創造性高く遊ぶように働ける」環境の体現を目指して

卯岡(IBASHO.ライター) :

まずは御社の事業内容についてご紹介いただけますか?

飯作さん :

弊社は購買活動に従事されているマーケティングや営業の方々、カスタマーサクセスの方々など、会社の売上を上げるミッションを担っている職種の方に向けた次世代型営業DXプラットフォーム「Mazrica(マツリカ)」、デジタルセールスルームという営業と顧客のための商談情報共有ツール「DealPods」を提供している会社です。マーケティングオートメーションやカスタマーサクセスに使われるCRMなどですね。

飯作さん :

一般的に思われているDXツールの強みは日々の非効率の改善だと思いますが、我々は単なるベンダーではなく、その先を見据えています。例えば、私は営業職について「ビジネス界の芸術家」だと思っていまして、採用活動のときにもそう伝えているんですね。

書道家や画家のように、真っ白な用紙に向き合い、お客様から課題を聞きながら絵を一緒に描いていくのが営業職の仕事で、「君の絵が1番いいね」と言われたら受注に至るわけです。

卯岡 :

なるほど。だから営業職=ビジネス界の芸術家なんですね。

飯作さん :

そうなんです。そして、芸術家のスキルを図るのが難しいように、受注するためのノウハウ、スキルの標準化は難しく、そこが今の課題だと思っています。その課題に対し、SaaSサービスを使って営業データを活用し、後世に営業スキルやノウハウを日々の活動や商談管理に活用できる状態を創り出す。これが我々のビジョンである創造性高く遊ぶように働ける環境を創ることを目指しています。

卯岡 :

ありがとうございます。ここからオフィスや働き方について伺いたいと思います。リモートで働かれている方も多いとお聞きしましたが、働き方はハイブリッドなのでしょうか。

飯作さん :

そうですね。創業時からハイブリッドで進めてまいりました。

黒木さん :

私は普段は大阪で仕事をています。私の仕事はオフィスづくりに関わる実務なのですが、移転時の物件の選定など現地での対応が必要な場合は出張し、リモートで可能な仕事はリモートで対応しています。

卯岡 :

オフィスでなくても働ける環境を整えていらっしゃるということですが、では御社にとってオフィスとはどのような役割を担うものだとお考えなのでしょうか。

飯作さん :

新オフィスでは、コミュニケーションの活性化、メンバーの成長促進、創造性の向上を目的とし、出社したくなるようなオフィスを目指しました。

我々は「創造性高く遊ぶように働ける環境を創る」をビジョンに掲げています。お客様にこうした環境を提供するためには、まず我々が創造性高く遊ぶように主体的に働ける環境で働けていなければなりません。ハイブリッドワークを進めてきた結果、コロナ禍がきても慌てることはなく、培ってきたリモートで効率的に働けるノウハウが活かせましたが、一方でオフィスの施策は特に打てていないままだったなと気付かされたんです。

緊急事態宣言が明け、出社できるようになり、オフラインでのコミュニケーションが価値提供スピードを上げられることがあらためて可視化されました。やはり出社環境を整えることが大事だと考え、出社したくなるよう試行錯誤をしたのですが、リモートが普通になった状態から、なかなかオフィスに人を戻すことができていませんでした。

“金曜日に首都圏在住メンバーは出社を”という施策も行ったのですが、他の日は70席中10人、少ないと2人ぐらいしか出社していないという状況だったんです。

飯作さん :

そこで、従業員たちに出社したときのオフィスの雰囲気について希望を聞いたところ、「出社するなら来ている人が多いほうがいい」という意見が多くありました。オフィスという場自体も、そこで行う施策も、できるだけ来たくなるようにしようという方針に定まり、あらためて、そもそも「なぜ出社するのか?」から考えたんです。

卯岡 :

それが今回の移転のご理由なんですね。

黒木さん :

そうですね。あとは、前オフィスが入っていたWeWorkの更新期限が近いという現実的な事情も移転理由の1つでした。ただ、それ以前にも移転を検討していたため、半年に1回は物件情報を集めたり、実際に内見にも行き、ある程度は今の物件情報を持っている状態からプロジェクトをスタートできました。

卯岡 :

どのような観点で物件を選んだのでしょうか。

黒木 :

条件は費用や期間を圧縮できる、フルセットアップ、ハーフセットアップ、居抜きのいずれかであること。加えて、執務スペースだけではなく、カフェスペースやイベントスペースが確保できるような物件を探しました。

卯岡 :

「従業員が出社したくなる」という観点で考えたことはありますか?

黒木 :

今までオフィスへの出社頻度が少なかった従業員が来たくなるよう可能な限り環境を整えました。設置型の社食の用意やソフトドリンク、アルコールを会社負担で無料提供するなどの福利厚生面を充実させました。
この物件はハーフセットアップ物件のため、ある程度家具は入っていたもののフォンブースはなかったので、オンラインで打ち合わせができるように新たに設置しました。あとは、各作業スペースにはモニターを配備し商談用のスペースなども確保しました。

卯岡 :

では、ここからは実際にオフィスを拝見しながら詳細を伺いたいと思います。

「つい行きたくなる」マツリカ 新オフィスツアー

「つい行きたくなるオフィス」がコンセプトのマツリカの新オフィス。それぞれのポイントについてご紹介いただきました。

ひな壇やバーカウンターなど、人が集まる工夫いろいろ。コミュニティスペース

卯岡 :

入った瞬間に、「コーポレートカラーが印象的だな」と感じました。

飯作さん :

社内ブランディングを担当しているデザイナーにお願いし、カラーコードを合わせてもらいました。

黒木さん :

ひな壇に置かれている椅子は市販品で、ネット通販で手配したものです。画面上で色がコーポレートカラーに近いものを探すのが大変でしたね。最後は賭けでした(笑)。

卯岡 :

ひな壇も印象的です。

飯作さん :

これは経営陣からのオーダーです。コミュニケーションを取ったりご飯を食べたりする場所にひな壇がほしいなと。

黒木さん :

元は個室とラウンジに分かれていたのですが、できればユーザーを招いてイベントを開いたり、全社会議をしたりしたいという話があったため、壁を取り払うことにしました。できるだけ工事の手間を省ける物件を選んだつもりが、結果的に大掛かりな工事も行うことになったのがこちらのスペースですね。

黒木さん :

かっちりしたひな壇ではなく、不規則にしているのはあえてです。遊び心を持たせたいなと。あと、飯作からの要望だった「滑り台を入れたい」が広さ的に叶えられなかったため、遊具がない代わりに段差を不規則にしたという事情もあります。

卯岡 :

滑り台!なぜ置きたかったんですか(笑)。

飯作さん :

遊び心ですかね。楽しく過ごしたいという思いがあるからだと思います。創業時からの夢なのですが、なかなか実現できずにいます。

卯岡 :

壁面のイラストもインパクトがあるなと思っていたのですが、ここに遊具が描かれているのは、飯作さんのご要望がきっかけなんでしょうか。

黒木さん :

公園を描いたこちらは、コーポレートサイトを作った際に社内デザイナーが作成したものです。滑り台を入れることで「創造性高く働く」を表現したいという思いをそのデザイナーに相談をしたところ、壁面プリントという形でそれを表したらどうかと提案をしてもらい採用となりました。

卯岡 :

こちらもばっちりコーポレートカラーが活かされていますね。

黒木さん :

ちなみに、ひな壇には機能性も持たせています。一部ひな壇は可動式ですし、床下収納機能があるところもあるんですよ。

卯岡 :

そんな工夫が隠されていたのですね!収納スペースの確保は大事ですよね。

ハンガーラックに掛かっている華やかなTシャツは社内で染めて作ったものなのだそう
黒木さん :

バーカウンターはマグネットスペースとしての役割を持たせています。ウォーターサーバーやコーヒーメーカーもありますし、先ほどお話した無料のドリンク、設置型の社食もこちらにあります。

社食のメニュー
黒木さん :

ここで出会った人とコミュニケーションを取ってもらえたらいいなと思って用意した場所ですが、出社している従業員に聞いてみたところ、実際に頻繁にコミュニケーションが生まれているようです。

卯岡 :

思惑通りですね。

黒木さん :

うれしいです。また、コミュニケーション活性化のために動線も工夫しました。先ほどもお伝えしたようにこの物件はハーフセットアップオフィスのため、扉の位置があらかじめ決まっていたんですよね。エレベーターを降りて左側にこの場所があるのですが、実は右側にも執務室に直接行ける扉があるんです。執務室としか行き来しない動線があるとコミュニケーションの機会が減ってしまうと考え、右側の扉は封鎖し通れなくしています。

黒木さん :

こちらがエレベーターを降りた場所ですね。先ほどお話しした右側の扉がこちらです。

卯岡 :

リビングを通らないと子ども部屋に行けないようにするという戸建て住宅の話みたいだなと感じました。

元の間取りを活かした会議室

黒木さん :

こちらは会議室です。元々あった間取りを活かしています。

バラエティ豊かな席を設けた執務エリア

卯岡 :

執務エリアにも自由に使える空間があるんですね。

飯作さん :

フリーアドレスなので、気分に応じて場所を選べるようになっています。

黒木さん :

新たに導入したフォンブースがこちらです。

卯岡 :

移転後に従業員からリクエストがあって対応したものはあるのでしょうか。

黒木さん :

いろいろありますね。最近ではアーモンドミルクがバーカウンターエリアに導入されました。

アイスカフェラテが飲みたいというリクエストがあったのですが、牛乳は日持ちがしないため、代わりに賞味期限の長いアーモンドミルクを入れることにしました。すべてのリクエストを叶えるのは難しいのですが、実現できそうなもの、実現できそうな方法を探して工夫しています。

普段はリモートの黒木さん。月に2度はオフィスで直接コミュニケーションも取るようにしているとのこと
黒木さん :

月2回は出張でオフィスに来ているので、その際にメンバーに聞くようにしています。あとはSlack内にあるマツリカワークスタイルというチャンネルで、スペースの使い方やほしい設備、起きたことをメンバーが自主的に報告してくれて、私も把握できるように努めています。

卯岡 :

オフィスの使われ方、反響、出社比率の変化はいかがですか?

飯作さん :

社外向けのイベントとして、ユーザー会や勉強会を何度か開催していますね。出社に関して定量的なルールは設けてはおらず、首都圏在住メンバーは週2日以上を目安に、あくまでも出社メリットがあるよう目的ベースで出社しようと話しています。

オフィスに来る目的は大きく3つあると思っています。1つは新入社員が入ったとき。これはみんなで歓迎して迎え入れることで、少しでも早くなじんでもらいたいからですね。2つ目は人がより成長する環境をつくるため。日々の業務やスキルや経験を対面の方が効果が大きいものは出社しようという考え。3つ目は全社コミュニケーションの活性化。これらの目的に合致することをするときは、オフィスにきましょうねと伝えています。

お客様に価値提供するものは開発サイドだけでつくるものでもなければ、ビジネスサイドだけでつくるものでもなく、互いが密に情報連携をすることが重要ですし、正しい姿だと思っているためですね。従業員たちもそうした目的を理解して出社してくれていると感じています。

卯岡 :

お客様や従業員からのオフィスの反響はいかがでしょうか?

黒木さん :

お通しするのがひな壇エリアなので、「かっこいいね」「おしゃれだね」と言っていただけることが多いですね。ここにはスクリーンや音響設備も入れているので、それらをお褒めいただけることも多いです。従業員に人気なのは、やはりバーカウンターかなという印象ですね。

飯作さん :

新オフィスのプレスリリースをご覧になった受注前のお客様から実際にオフィスに行ってみたいとご連絡をいただき、オフィスにお越しいただいたこともあります。その際に最終提案をさせていただき、受注に至ったという事例がありました。

卯岡 :

従業員だけではなく、社外の方からも「つい行きたくなる」と思ってもらえたのでしょうね。素敵なエピソードです!

オフィスはビジョン実現の手段の1つ

「オフィスをつくっても、使ってもらえなければただの箱になってしまいます。出社が難しいメンバーもいますが、出社可能なメンバーのコミュニケーションが活性化し、提供できる価値が高まっていく場になればと思っています。今後も従業員のみんなに愛着を持って『行きたい』と思ってもらえるような施策を検討したいです」と黒木さん。

社内で行う各イベントや、従業員同士のランチ、ディナー、懇親会などの交流の場を設けた場合に費用を負担する制度、隔週金曜日にアフタヌーンティーを開催しコミュニケーションの場を設けるなど、さまざまな施策を続けているマツリカ。

飯作さんは「我々のビジョンを実現するには、創造性高く働いている必要がある」とし、オフィスは「その1つの手段」と語ります。

「弊社にはフルリモート従業員や海外に住む従業員もいます。オフラインオンライン含め、会社全体として、みんなで考えて進んでいきたいですね。バリューの体現がビジョン実現につながると思っています。バリューを浸透させ体現し、みんなが同じような価値基準で業務を進めていけると、スピードも品質も上がるでしょう。ビジョン実現に向けて取り組んでいきたいです」と締めくくってくれました。

取材先

株式会社マツリカ

https://mazrica.com/ 公式サイト

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