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オフィスデザイン

イノベーションを生むオフィスにはテクノロジー×デザインが必要。イトーキの「IT×家具計画」の軌跡と新商品に込められた工夫に迫る

日本有数のオフィス家具メーカー、株式会社イトーキ。Web会議の浸透、ハイブリッド会議への広がりなど、働き方の変化に合わせ、ITを掛け合わせたオフィス家具を企画開発、製造しています。スマートオフィス商品開発本部の本部長であり常務執行役員の長尾和芳さんに、同社のIT×オフィス家具計画についてお話を伺いました。

長尾 和芳
インタビュー
長尾 和芳(ながお・かずよし)
常務執行役員 スマートオフィス商品開発本部 本部長

2023年1月株式会社イトーキ入社。現職。ソニーグループにおいて、主にBtoC AV機器の商品企画・マーケティング・新規事業開発を担当。イトーキでは「ITOKI Smart Office Concept」のもと、従来のオフィス家具の開発に加え、デジタルと融合したオフィス家具やソリューション、データサービス等の新たな分野の開発を加速させている。

イトーキの「スマートオフィス商品開発本部」とは

――長尾様が本部長を務められているスマートオフィス商品開発本部についてご紹介ください。

長尾さん :

弊社では従来型のオフィス家具作りのほか、デジタルと融合した新しいスマートオフィス家具とソリューションの開発も行っています。新規領域として注力している事業で、2023年1月に「商品開発本部」から「スマートオフィス商品開発本部」と名称を新たにしました。名称変更は、これまで以上にデジタルとの融合を目指す弊社の姿勢の表れですね。

――スマートオフィス家具の開発を始めたのはいつ頃からなのでしょうか。

長尾さん :

正式に「スマートオフィスコンセプト」として発表したのは2022年2月なのですが、始まりは2020年末頃からです。

コロナ禍により働く場所が多様化していく流れが強まりました。従来型のオフィスに集合して働く働き方も残っているなか、離れた場所で分散して働く働き方が加わったことで、集合している場所と離れた場所をつなぐ必要性が出てくるだろうということで、商品開発の方向性を定めたんです。

長尾さん :

ただ、働き方の多様性に着目し始めたのはさらに前のことになります。前回、本社13階をメインに見学していただきましたが、弊社オフィスに導入しているABWも働き方の多様化に対応するスタイルです。本社オフィスを作った当時から働き方の多様化は弊社のテーマといえるものでした。

イトーキ東京本社
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長尾さん :

また、やはりコロナ禍は大きな転機にはなりましたね。多様な働き方をデザインしていく動きが加速化しました。それまでにもデザインしてきた背景があるため、割とスムーズに対応できたと思います。その弊社の経験を体系化し、ポストコロナでの働き方、オフィスに求められる機能をアップデートしていっている感じです。

「スマートオフィス家具」商品開発のポイントと特徴

――スマートオフィス家具の新商品をご紹介いただく前に、これまで作られてきた商品についてお話を伺いたいと思います。ITOKI TOKYO XORK内でも実際に使われているそうですが、開発する際に大切にされているポイントをご紹介いただけますか?

長尾さん :

まずITやAVに関してお話いたしますと、そもそも前から商品として存在しているものではあったんです。例えば、プロジェクターを使って会議をするというのも、AVの走りですよね。

 

そこにいわゆるWeb会議が登場してきたことで、会議室のしつらえ自体も空間として考えていく必要があるよね、ということで、空間設計から考えていくことになりました。プロジェクターからフラットパネルディスプレイに変化したことで、この場所のような明るい部屋でも画面を使った会議ができるようになったんです。

 

ただ、そこからもう一歩進めようとすると、オフィス家具とデジタル機器が融合したほうが理想的な使い方ができるよねということで、今フロアにあるような商品が誕生してきたんです。

新商品「sound sofa(サウンドソファ)」開発秘話

――まずは、新商品についてお話を伺いたいと思います。

長尾さん :

今年の新商品は「共働」「共創」「共生」がコンセプトです。そのうち、今回出る新商品のキーワードは「共働」。離れた場所にいる人とも一体感を持って働ける環境作りがテーマです。

 

「相手の様子がわかりにくい」「音が気になる」というのがWeb会議の2大不満なんですね。そこで、コロナ禍でWeb会議が増え始めたころにフォンブースを設置する流れが生まれたのですが、人がオフィスに戻り始めた、でもWeb会議はなくならない。そんな状況において、フォンブースでスペースを埋め尽くすのはオフィスとしてどうなのかという疑問が生まれました。

 

また、コラボレーションを生むためにはそれなりの品質を保った会議ができることも求められます。そこで、テーブル席を快適にしつつWeb会議もできるようにと、まず2022年にこの「sound parasol(サウンドパラソル)」を発売しました。

――随分と印象的な見た目ですね。

長尾さん :

パラソル部分は指向性スピーカーで、一定の範囲にだけ音を届けられるんですよ。そのため、オープンなスペースでも快適なWeb会議ができます。テーブルの真ん中にはマイクがあり、こちらは半径1メートル程度の範囲の音だけを拾います。参加者がマイクから離れてしまうと音を拾えなくなってしまうため、あえてテーブルに固定したベンチシートにし、人の動きを家具でコントロールしている点が特徴です。

角度にこだわった新商品「サウンドソファ」

長尾さん :

こちらが新商品「サウンドソファ」です。いわゆるソファ席を快適なWeb会議環境にしようということで作られたものです。

長尾さん :

「サウンドパラソル」と同様に指向性スピーカーがヘッドレストに仕込まれていて、音が周りに漏れにくいのが特徴ですね。Web会議用の環境を作ることで、オープンな場でも快適に会議ができます。通路を歩く人とのコミュニケーションも取りやすいです。

――開発にあたっての工夫点、苦労点は何ですか?

長尾さん :

角度の微調整ですね。ヘッドレスト部分が、モニターのある奥から手前にかけて2度、角度を付けているんです。この微妙な角度があるおかげで、通路側に音が漏れにくく、全員がカメラに入りやすく、かつモニターが見やすくなっています。3度にすると狭いという意見が出るくらい、1度単位で感じ方が変わるものなんですよ。

▲微妙な角度が使い心地の良さの秘訣
長尾さん :

同じく、高さもどれぐらいがちょうどいいか試行錯誤しました。屋根付きも検討しましたが、覆ってしまうとオープンさが損なわれるため、なしに。吸音性の高い素材を使用し、声を張らずともマイクに声が届き、こもり感があるデザインにしました。スペース割の効率面を考えても、一般的なボックスソファ席の規定から逸脱しないことも重要でしたね。

長尾さん :

座席の背もたれにも20度の傾斜を付けています。これは座ったときに自然とスピーカーの近くにくる体勢を取れるようにと考えてのことです。この角度により、ハイブリッド会議だけでなくオフライン会議でも快適にお使いいただけます。

 

また、座席の快適さはもちろん配線の手軽さにもこだわっています。USBとHDMIを指す口があり、そこに差せば面倒な設定なしに誰でもモニターが使える仕様にしています。

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