目次
CROSS DOCK HARUMIは築40年の倉庫をオフィスにフルリノベーションした事例です。倉庫の雰囲気を残しながらも、高級ホテルのような内装になっているのが印象的です。
元々の倉庫として活用されていた物件の特性を活かし、高さ4mの天井もスケルトンとしてあえてそのままにしておくことで、開放感や「倉庫っぽさ」を残したオフィスデザインを実現しています。
1フロアが非常に面積が広いため、オフィスとしてだけでなく、食堂やイベントスペースとしても活用が容易なデザインであることもポイントです。


入居者が事前申請のもとに自由に使えることのできるミーティングスペースはおなじみの「コンテナ」風のデザインにするなど、オフィス全体のコンセプトと親和性の高い遊び心が細部にまで表れています。

オフィス名にもなっているCROSS DOCKですが、物流用語で「商品が集まり、すぐ配送される拠点」を表します。
「いろんな人の知恵が集まり、世の中に新しい価値を発信していく拠点」となれることを願い、このような名前がつけられているようです。
このように元々オフィスだった物件だけでなく、倉庫など別用途で使われていた物件をリノベーションすることも含めると選択肢は考え方次第で無限大であることがわかります。
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リノベーションの社員のモチベーションに及ぼすメリット

まずリノベーションの影響を最も受ける社員に及ぼすメリットについて説明します。オフィスを機能的に改装することによる業務効率向上のみでなく、社員の仕事の意欲にも影響す可能性があります。
オフィスの業務効率効率が改善する
オフィスがリノベーションにより改善されることで
・オペレーションの効率化
・他部署とのコミュニケーションの活性化
・集中できる環境がつくれる
などといった物理的な機能性の向上が期待できます。
単に既存のオフィス環境における構造上の課題を改善する、というだけでなく社員にどのような環境を用意することが望ましい形での業務効率向上に繋がるかといったことも考えながら最適な形のレイアウトを考案していくと共に、その意図を事前に社員に共有することで更に効果が増していきます。
新たなオフィスデザインが社員の士気を上げる
単に業務上の効率が良い、というだけでなくリノベーションによりオフィスを新たな空間へとつくり変えることにより、社員の仕事のモチベーションにも大きく影響します。
たとえば、天井を抜くスケルトン工事により得られる開放感は、オフィスを良い意味で「オフィスっぽく」なくし、長時間その中で働く内勤社員の仕事のストレス軽減に繋がります。
また、会議室をコンセプトに併せて落ち着いた空間や、意欲を上げるような空間にデザインすることで、ミーティングの目的を加速させられるなどといった効果が期待できます。
リノベーションの社外に与える印象におけるメリット

次に、社外の訪問者に向けてのメリットも複数あるので解説していきます。単に「印象を良くする」だけでも十分な意味はありますが、デザインによってはそれ以上のメリットを及ぼすことも可能です。
オフィスのデザインが訪問者に好意的な印象を与える
まず、訪問者を迎え入れるオフィスの空間は顧客にとって会社の印象を左右する重要なポイントの一つになります。
落ち着くデザイン、洗練されたデザイン、近未来的なデザインなど、どういったデザインが好ましいかは会社次第でもありますが、自社の印象を訪問者にさりげなく伝えることで、好印象をもたらすことに繋がります。
オフィスのデザインが会社の理念やビジョンを体現する
良いデザインが訪問者から見た会社のイメージアップに貢献するのは当然のことですが、それにとどまらずそのデザインの中に会社の理念やビジョンを反映することによって、会社全体のブランディングに繋げていくことも可能です。
たとえば、エントランスや会議室といった訪問者にとって印象に残りやすい空間を企業のコーポレートカラーで構成したり、ビジョンや理念となる標語を掲げたり、商品などを飾ったりといった形でさりげなくアピールすることにより、企業としての在り方を空間に示すことができます。
リノベーションのコスト面におけるメリット

後述しますが、リノベーションはどのような形を取るにせよ一定のコストがかかります。しかし、上述のような社内外への好影響のためにコストを割く、という意味合いだけでなくコスト削減という意味においても有効なケースもあります。
実際にコスト面でリノベーションの優位性が考えられる場面について考えてみます。
設備の利用効率の向上によるコスト削減
リノベーションによりオフィスの設備を有効活用できるようになると、月々の固定費を削減することにつながります。
たとえば空調効率が良くなるような空間設計をすることにより、月々の空調費用を削減することが可能になります。また、採光などを工夫することは月々の電気代の削減に繋がるかもしれません。
リノベーションにより、賃料だけでなく物件に関わるコストが全体的に見直せることによって固定費を削っていくことができるかもしれません。
スペースの利用効率の向上によるコスト削減
リノベーションを加えて空間の利用効率を上げることもコスト削減に繋がります。
たとえば、「1人1席を割り振っているが社員の外出が多く稼働率が50%の賃貸オフィス」があったとします。稼働率がどうであろうと毎月の賃料は当然一定のため、利用効率に改善の余地がありそうです。
もし、1坪当たりの単価が同じという条件でオフィスのレイアウトをフリーアドレスにすることで、契約する面積を半分にできれば、単純計算でオフィスの賃料を半分にすることができます。
実際はそれほど単純に「半分になる」というものでもありませんが、空間を効率的に利用することでそもそも賃貸するスペースの絞ることがコスト削減に直結するのは間違いありません。
新オフィス入居に伴う相対的なコスト削減
最後に、直接的な「コスト削減」という文脈ではありませんが、リノベーション物件を活用することにより、自社の目指すオフィス環境の実現を相対的に安上がりに実現することができるかもしれません。
たとえば、新築・築浅の物件をオフィスとして利用した場合、そのそもそもの家賃や、契約時に必要になる初期費用は周辺の面積などが同等の物件と比較して高額になりがちです。
一方で、比較的築年数が経過しているような物件であれば、周辺相場と比較して良い条件で借りるられることも十分に考えられます。
物件の外観自体は古くても、しっかりと計画してリノベーションを加えることができれば、オフィスとして十分に来訪者への印象付けやブランディングを行うことは可能です。
築年数やビルの外観に強いこだわりをもつ理由がなければ、コストを抑えながら理想のオフィス環境を実現するにあたって、リノベーション物件を活用するというのは一つの有効な選択肢です。
リノベーションのデメリット・注意点

オフィスのリノベーションは様々なメリットをもたらしてくれますが、一方でデメリットや注意しなければならないポイントもあります。
いずれもある程度事前に予見し回避策を検討しうるポイントでもあるため、どういった部分が問題になる可能性があるかを説明しておきます。
施工内容により膨大なコストがかかる
リノベーションの施工費用の目安については次の項目で説明しますが、施工の内容によっては相場よりもかなり莫大な費用がかかる可能性があります。
特に、レイアウトそのものを大幅に変更するような施工を行う場合は想定していた以上の予算がかかることもあるため、早い段階で概算でも見積を取得しておくことが重要です。
複数の業者を選定し、費用感を冷静に確かめるのと同時に、もし既存のオフィスのリノベーションに膨大なコストがかかるのであれば、むしろ施工にそれほどコストをかけず理想のオフィス環境を実現できる物件を新たに探したほうが総合的にコストを下げられる可能性もあります。
施工内容によっては、ランニングコストが上がる
リノベーションを行うことによって照明のコストや冷暖房のコストなどの固定費を下げることも可能ですが、場合によっては逆にコストが上がってしまう可能性があります。
代表的なものは、天井を抜く「スケルトン」の工事。天井を高くすることにより心理的な開放感を得られる効果をはじめ、オフィスの印象を大きく変えるには最適な施工ではあるものの、単純に天井までの高さが上がる分、空間の容積が大きくなり空調効率が悪くなります。
冷暖房のコストが上がりがちな上、天井が高くなる分執務スペースに十分な明るさを届けるためにはライトの個数を増やしたり、もしくは照度を上げるなどの対策が必要になるため、そういったコスト増が起きる可能性もあります。
空調効率に関してはデザインを損なわないようであればシーリングファンを取り付けることでの対策も可能です。
いずれにせよ、空間のデザインを変更することによって一時費用だけでなく、毎月のランニングコストが増える可能性についても事前に十分に認識した上で施工内容を検討する必要があります。
施工中、代替環境を用意する必要がある
新規に入居するオフィスにリノベーションを行う場合は事前のスケジュールさえ設定できれば移動は一度のみでスムーズに行うことができます。しかし、既存のオフィスに大規模なリノベーションを加える場合、従来のオフィス環境を利用することはできず工事が完了するまでの間、長くて一か月程度代替環境を用意する必要があります。
ある程度の規模の面積があれば、少しずつ施工を行っていくことによって大規模な移動はなく進めることも可能ですが、それが難しい場合は一時的に別のオフィスを短期契約するなどの手間やコストも必要になってきます。
また、会社側で負担が必要なコストは当然のこと、既存の環境から代替環境へ、代替環境から新環境へを2回の変更を余儀なくされることによる業務効率の低下の懸念や社員への負担増に関しても無視できるものではありません。
それでいてリノベーションによりオフィスの満足度が下がってしまった場合、社員のモチベーションにも悪影響が及ぼされる可能性もあります。
事前に少しでも負担が下がるように環境を整えておくと同時に、オフィスのリノベーションの必要性について事前に理解を深めてもらうことで多少の不便を強いてしまうことにも前向きに捉えてもらうことが大切です。
退去時の原状回復工事にも費用が上乗せされる可能性がある
テナントのオフィスでリノベーションの施工を行った場合、退去時には原状回復工事を行い、入居前と同じ状態に戻す必要があります。
その費用は経年劣化などを除き借主負担ですが、この費用も施工の内容によっては大きなコストとなってしまう可能性があるため、注意が必要です。
特に、リノベーションを加える施工の業者に関しては、基本的に借主側の裁量で決めることが可能ですが、原状回復工事においては貸主指定の業者で行わなければならならない契約がなされている場合も少なくないので、特に注意が必要です。
一般的には、リノベーション時に大きなコストをかけて行った施工に関しては、原状回復工事の際にも高額な工事費用が掛かりがちです。
リノベーション時にかかるコストだけに目がいきがちですが、特にテナントオフィスの場合、改装時にコストをかけたぶんだけ、原状回復にもコストが掛かることを念頭においておく必要があります。
物件の制約により自由なリノベーションが行えない場合がある
リノベーションを行いたい場合でも自由な施工が行えないケースもあるため、注意が必要です。
具体的にはまず建物の構造上の制約がある場合があります。また、建築基準法に抵触するような施工を行うこともできません。
こういったポイントについては物件の図面を見ながら業者と共にデザインを考えることによってリスクを回避することが可能です。
また、別途問題となりうるのが契約の関係でリノベーションを行えなかったり、行いたい施工に関してオーナーの許可が出ない、といったケースが考えられます。
こういった点については、事前に契約の内容をよく確認することや、オーナーに理解してもらえるよう説明を行うなどといったことが事前に取りうる対策として挙げられます。
ただし、当初はリノベーションを加えることなどあまり考えておらず、上記の問題点のいずれかに抵触することで思い描いていたオフィスデザインが実現できないといったことも当然考えられます。
様々な優先順位を考慮し、オフィス環境を整えることの優先順位が高ければ、リノベーション可能なオフィスを新たに探すといった対応も視野に入ります。
リノベーションにかかるコストや期間の相場

リノベーションにかかるコスト相場は1坪あたり10万円~30万円です。幅が大きいですが、施工の内容によっても費用がかなり異なってきます。
一般的にはフルリノベーションの方がポイントリノベーションに比べて1坪単価の費用も高くなりがちです。
また、目安として50坪程度までの施工に比べて50坪以上の施工となった場合の方が単価が上がる可能性が高いです。
かかってくるコストは施工の種類、内容、面積によっても大きく変動しますが、加えて同じ工事内容でも業者によっても見積額が大きく変わってきます。
それぞれの業者の得意不得意もありますので、内容を明確にした上で複数の業者から見積を取ることで、不要なコストを抑えることも大切です。
工期も同様にポイントリノベーションか、フルリノベーションかや施工する面積によってもかなり幅があります。
オフィスの規模によって異なりますが、ピンポイントでのポイントリノベーションで2~3日程度。広範囲のフルリノベーションで1ヵ月程度を目安に見ておきましょう。
部分的な工事であれば上手く調整し、休日などに行ってしまうことで業務に支障を出さないことも可能ですが、大規模な工事が加わる場合は一定期間代替環境を用意する必要があります。
まとめ

オフィスのリノベーションについて、そもそもの定義からメリット・デメリット、リノベーションの恩恵を受けるための方法から予算、工期の目安まで幅広く解説しました。
もともとはオフィス用途ではなかったような物件がリノベーションによりオフィスとして機能するような事例もみられ、発想次第で選択肢が無限大であることも実感いただけたかと思います。
リノベーションは目的通りの効果が発揮されれば、受けることのできる恩恵は絶大ですが、一方でリノベーションの実行そのものには社員への負担も含めて相応にコストがかかります。
なぜリノベーションを行うのか、リノベーションの結果どのような効果が見られればそれが成功したと言えるのか明確化させると当時に、事前に社員からの十分な理解を得ることも大切です。
また、新たな物件のリノベーションを行うにあたっては仲介業者を間に入れることが何らかのリスクとなる可能性が高く、直接貸主に交渉するような形が有効である場合もあることもぜひ頭に入れておいてください。