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オフィスの居抜き退去で原状回復工事0円? 進め方や注意点を解説
オフィスを移転する際、旧オフィス側でかかるコストの中でも負担が大きいのが物件を契約前の状態に復元する「原状回復工事」。しかし、内装を次の入居者に引き継ぐ「居抜き」での退去ができれば原状回復の負担を大幅に軽減できるケースも。
本記事では居抜き退去の進め方や、居抜き退去を行う際の注意点、トラブルを避けるポイントなどを解説します。
退去のコストを抑えたい方、居抜きでの退去を検討されている方はぜひご一読ください。
目次
オフィスを居抜き退去するメリット
オフィスの居抜き退去には、費用面および期間面での経済的なメリットがあるだけでなく、SDGsの観点からも利点があります。
それぞれのポイントについて見ていきましょう。
オフィス退去に伴うコストを大幅に削減
居抜きでの退去が可能な場合、原状回復工事が不要、もしくは大幅に削減できます。
原状回復工事の費用はオフィスの広さや内装の状態にもよりますが、1坪あたり3万円~10万円程度発生するため、原状回復費用を大幅に抑えられるコストメリットは大きいといえるでしょう。
加えて、新オフィスに持っていかないオフィス什器についても、残したまま退去できれば廃棄コストが抑えられます。
原状回復工事には通常1~2ヶ月かかるため、工事が不要になることで旧オフィス・新オフィスの賃料を二重に支払う期間が短縮できる点も大きなメリットです。
オフィス退去に伴い発生する廃棄物を減少(SDGsの観点)
オフィス退去に伴う廃棄物を通常の移転よりも大幅に減らせるため、コスト・期間といった自社にとってのメリットだけでなく、SDGsの観点からもメリットがあります。
入退去に伴うSDGs施策は取組事例としても扱いやすいため、SDGsを意識した企業には付随的なメリットが生まれるといえるでしょう。
株式会社サイカでは居抜き入居に際して什器の再利用率80%、壁材など構造物の再利用率100%を実現し、入退去に伴う大幅な廃棄物の削減に成功しています。
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オフィスの居抜き退去の進め方
オフィスを退去する際は、オフィスをスケルトン状態へ戻す「原状回復工事」を行ってから引き渡すのが一般的です。「居抜きオフィス」のニーズは増えているものの、居抜きでの退去は多くの物件にとって例外的な退去だということを理解したうえで、居抜きで退去する場合の進め方を見ていきましょう。
1.オーナーに居抜き退去の相談
最初に取るべきアクションはオーナーへの居抜き退去の相談です。オーナーの意向によってはそもそも居抜き退去が認められない場合もあります。まずは居抜き退去したい意向を伝え、その可否や条件などについて確認して合意をとりましょう。
2.居抜き入居企業の候補探し
居抜き退去を行うにあたっては、その物件を新たに使う「居抜き入居」を希望する入居者の存在が欠かせません。居抜き退去は居抜き入居とセットである必要があり、居抜き入居者が見つからない場合は通常通りに原状回復工事を行って退去することになるケースがほとんどです。
居抜き物件のマッチングサイトへ退去予定の物件情報を掲載したり、不動産会社へ相談するなど、居抜きで入居してくれる候補を早い段階で探しておきましょう。
3.解約予告通知および居抜き退去の条件交渉
新たな入居者の目途が立ったら、改めてオーナーに対して解約予告通知を行います。その際に、居抜き退去にあたっての条件についても交渉し、契約として明文化しておくことも重要です。
一般に、オフィスの解約予告は原状回復工事の期間も見越して6ヵ月前と定められている場合が多いですが、居抜き退去の場合は原状回復工事および新しい入居者の内装工事の期間を短縮できるため、退去までの期間を短縮できる可能性があります。
4.新たな入居者候補と条件を調整
居抜き退去においては、物件のオーナーとだけでなく新たな入居者とも条件を調整する必要があります。居抜きで退去した後に生じた内装や什器の不具合について責任の所在を明確にすることが、後々のトラブルを避けるために重要なのです。
退去時に残すもの、新しいオフィスに持っていくもの、破棄するものについても明確にしておきましょう。
5.オフィスを退去
オーナーおよび新入居者との条件の調整がついたら、オフィスを退去し新しいオフィスへと引っ越しを行います。
オフィスの居抜き退去の注意点。トラブルを避けるポイントは3つ
居抜き退去は原状回復工事を伴う退去と比べ、特有の注意点がいくつかあります。
①オーナーの許可が下りない可能性がある
②思わぬ退去費用が発生する場合がある
③退去後にトラブルが発生する可能性がある
④新しい入居者が見つからない可能性がある
⑤新しいオフィス移転のスケジュールがタイトになる
居抜き退去の可否・退去の条件は事前にオーナーに確認・相談する必要があります。そのうえで新しい入居者との間でも事前に取り決めを行うことが重要です。また、オーナーに対して解約予告を行う前に入居者の目途をつけておくのが基本です。期日までに新しい入居者が見つからない場合には原状回復を求められる場合もあるため注意しましょう。
居抜き退去する場合、原状回復工事が省略できるため、解約予告から実際の退去までの期間(一般的には6ヶ月程度)を短縮できる可能性があります。
一方で、新しいオフィスに入居するにあたっては、内装工事が必要であったり一定の期間を要します。賃料の二重払いの費用を抑えつつスムーズに新オフィスに移転するにあたってはタイトなスケジュールで移転を実施しなければならない可能性がある点にも注意しましょう。
居抜き退去は通常の退去と比べると後からトラブルになるリスクが高いですが、注意すべきポイントを抑えておくことによりリスクを回避できます。ポイントを3点、ご紹介します。
1.入居時に居抜き退去の可否を確認
居抜きでの退去を魅力に感じる場合、今後の物件においては入居前から居抜き退去の可否について確認しておくのも得策といえます。
未来のこととなるため、確実に居抜き退去する・居抜きの許可を取っておくといった話をまとめるというよりも、将来的に居抜き退去したい可能性と、それを認める可能性について合意しておくことが重要です。もしくは、物件の検討段階でオーナーにそもそも居抜き退去を認める意向が全くないことが確認できれば、それを織り込んだ意思決定ができます。
将来的に居抜き退去する場合の条件についても入居契約時に定めておくと、将来的なトラブルのリスク軽減が可能です。
2.あらかじめ入居候補者に目途を
居抜き退去の意向がある場合、次の入居者候補の目途をしっかりとつけておくことも重要です。
居抜き退去自体にオーナーの内諾を得られていても、次の入居者が見つからなければ原状回復工事が必要になる場合もあります。
また、候補者が見つかったとしても入居の意向を取り消す場合や審査に通らない場合もあるため、契約に至る段階までは気を抜かないようにしましょう。
3.オーナー・新入居者と調整し責任分界点を明確に
居抜き退去後にトラブルになりがちなのが、責任の所在が不明瞭なまま退去し、すぐに物件の経年劣化や損傷が見つかったり什器が壊れた際の修理や入れ替えコストの負担で揉める、といった点です。
こういったトラブルを回避するためにも、オーナーおよび新しい入居者とよく話し合い、責任分界点(時期も含む)について明確にしておくことが重要といえるでしょう。
直接の交渉ではうまくいかないケースも多いため、専門業者やオフィスのコンサルティング会社に間に入ってもらい、それぞれのリスクの洗い出しや、将来的なトラブルにならないようオーナー・新入居者との調整もサポートしてもらうことをおすすめします。
まとめ
オフィスを居抜き退去できた場合、原状回復工事費用が大幅に抑えられ、次のオフィス入居までの期間を短縮できる可能性があります。
ただし、まだまだ一般的な方法ではないため、調整が難しい点や居抜き退去に伴うトラブルが発生することも。
居抜き退去を検討する場合、必要なステップやリスクについてオーナーや新しい入居者とも確認の上で、慎重に進めていくことが重要です。