- オフィスインタビュー
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注目のミドルベンチャー経営者に聞く!オフィス構築#4 ラバブルマーケティンググループ社 林氏
成長著しいミドルベンチャー企業の経営者は、働き方やオフィスにどんな想いを描いているのか。これまで成長し続けてきたからこそ、またこれからも成長し続けるからこその“働く場”の形成、オフィス戦略について深堀る連載企画。
第4弾の今回は、SNSマーケティング支援を中心に、「愛されるマーケティング(Lovable Marketing)」活動を推進している株式会社ラバブルマーケティンググループ 代表取締役社長 林 雅之氏にお話を伺いました。
立命館大学法学部を卒業後、三和銀行(現 三菱UFJ銀行)に入行。その後大手半導体メーカーの海外営業担当としてフランス・デンマークの営業拠点開設に奔走。2008年に株式会社コムニコを設立し、代表取締役に就任。日本におけるSNSマーケティングの第一人者として、セミナーやカンファレンスでの講演や書籍出版の実績多数。2014年に株式会社ラバブルマーケティンググループを設立。
目次
事業紹介・自己紹介
――貴社の事業についてご紹介ください。
ラバブルマーケティング、日本語にすると『愛されるマーケティング』を重要なコンセプトに掲げて事業展開をしている会社です。愛されるマーケティングとは、企業や顧客、すべての人にポジティブなマーケティングを指している言葉で、『嫌がられるマーケティングはしない』という思いを表しています。
日本の広告業界は年間6兆円ほど。それだけの費用がいろいろな広告宣伝費に使われているわけですが、なかには顧客に嫌な思いをさせるものも存在しています。例えば、自宅に届く興味のないチラシのポスティングや、記事を読みたいのに強制的に表示されるウェブ広告など。せっかく費用をかけて広告を出していても、見る側に嫌な思いをさせているのはもったいないと思っています。
業界課題があるなか、少なくとも自分の会社ではそういったマーケティング活動はしたくない。そこで、社名に『ラバブル』と掲げたんです。メインはSNSマーケティングの支援で、SaaSツールも出しています。
ラバブルマーケティンググループ社のオフィスと働き方
メンバー同士がコネクトする場所として、オフィスとは呼ばずKCB(神谷町コネクションベース)と呼ばれるラバブルマーケティンググループ社のオフィス。コロナ以後、全員がオフィスに出社することはないと考え、移転時の人数の半数が出社できる規模を選んだのだそうです。
壁面に飾られている絵画は、林氏の好きなアーティストが描いたもの。こちらはアーティストにコンセプトを伝えた上で描いてもらった特別な絵なのだそうです。この他、いくつか飾られている絵は、すべて林氏のお気に入りアーティストのもの。
「そこだけはわがままを言わせてもらいました(笑)」(林氏)
一角にはキッチンも。ラバブルマーケティンググループ社はアイス部やコーヒー豆部、カクテル部など飲食系の部活動が豊富で、キッチンは部活の活動場としてよく使われているのだそうです。
「冷凍庫にはアイス部の部長が定期的に買い込むアイスが入っています。」(林氏)
林氏のオフィス観「オフィスは人と人が混ざり合う、交流を生み出す場」
コロナ禍による100%リモートワークの時期には、「大きなオフィスががらんとしているのがもったいない」として、シェアオフィスに一時的に移ったこともあったという林氏。オフィスへの考え方についてお聞きしました。
コロナ後のオフィスの存在意義は「人が混ざり合う」ことにある
ラバブルマーケティンググループ社では、5~6人がチームとなって顧客のサポートに当たるケースが多いとのことです。単独プレイはほぼなく、チームワークが重要な仕事スタイルなのだそうです。
「コロナ禍による強制的なリモートワーク経験から、業務自体はオフィス以外でもできることが証明されました。ただ、フルリモートで業務はできても、チームワークを作るのは難しいと感じています。
また、弊社は業界未経験者が多いため、社風に馴染むことはもちろん、業務を知ってスキルを身に付けていってもらうためにも集まれる場は必要。オフィスは顔を合わせられ、自分たちの居場所を確認できる場だと捉えています」(林氏)
オフィス家具選びも、「人と会い、関わるためのオフィス」という位置づけから行われています。
「『働くためのオフィス』にとって『いい場所』はいいデスク、椅子があって、いい姿勢を取れることだと思います。そうではなく、いろいろな人が混ざり合ってコミュニケーションが取れる場所、強制せずとも来たくなるオフィスを作りたいと思い、構築したのがKCBです」(林氏)
「このオフィスに来る従業員は、うちの従業員だ」と思えるのが自社オフィスの良さ
コロナ後のオフィスは人と会うことに存在意義がある。であれば、同社が以前選んだように、シェアオフィスという選択肢も取れます。改めて自社オフィスを構えた理由について、林氏は次のように語ります。
「シェアオフィスはいろいろな会社の方が入り混じることもあり、誰が自社の従業員か、従業員同士でも把握しづらかったんです。エレベーターで顔を合わせたときに挨拶を交わそうにも、もし別会社の従業員だった場合、怪訝(けげん)に思われるかもしれないという不安もあった。個人的には、従業員に『社長とすれ違ったのに無視された』と思われるのは嫌だなという思いがありました。私自身も、誰がうちの従業員なのか判断するのが難しかったんですよ」(林氏)
オフィスには社長室を設けておらず「人と会い、関わるためのオフィス」を社長自ら体現しています。
現在、オフィスは日頃4割程度が埋まる利用状況だといいます。半数が入れる設計にしたものの、部署単位のミーティングが重なったときには席が埋まり「社長の座れる席がない」といった事態も起きてしまうとのこと。
「以前より社長室はずっとないのですが、公に話すべきでない内容の打ち合わせを、会議室を取らなくてもパッとできるので、いつかほしいなという、これは夢ですね」(林氏)
本音では「いつかほしい」と思っているのだそうです。
毎日同じメンバーが出社するわけではないが以前と違い、「このオフィスに働きにくる人はうちの従業員だ!という感覚があり、ようやく顔なじみが増えていく環境が整えられました。」と語ります。
限られた場所で、さまざまな風景を
今回のオフィスを作るにあたって、大事にしたのは「風景のバリエーションを増やすこと」でした。
「変化があることで、マンネリ化を防げます。椅子の高さも、低いものから高いスツール、ソファと多様に取り揃えました。気分に応じて使い分けられます。キッチン周りは部活動を楽しむ従業員に人気ですね」(林氏)
可能性のある場は作れた。今後は活用の幅を広げたい
「可能性のある場を作れたと自負しています。あとは使い方ですね。投資家や株主に来ていただき、オフィスで会社説明をすることで、雰囲気を感じてもらえる機会をつくりたいとも考えています。あとはグループ内でのコネクトを実現する場にもしていきたい。複数あるグループ会社の中でも、大きい組織のグループの従業員の出社率が高くなる傾向があるようなので、ぜひ規模とか関係なくどのグループでも積極的に活用してほしいなと。遠慮が生じるのかもしれませんが、こちらから背を押したいですね」と林氏。
また、東京の他、高知にもオフィスを持つラバブルマーケティンググループ社。高知オフィスもコネクトという思想を持って作られたオフィスですが、「神谷町と比べると、正直物足りないところがあります」と語ります。
「東京だけが特別にならないよう、サイズ感は違っても、どこでも同じコンセプトでやりたいですね。〇〇コネクションベースとして展開したいです」(林氏)
「同じ会社の別部署、同じホールディングスの別会社の人との交流をもっと積極的に行っていきたい。ここにいる人は仲間だから、初対面でも声を掛け合える雰囲気を醸成できたら」と語ってくれた林氏。KCBの活用の幅が広がっていくのが楽しみです。