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アセットマネジメントとは?今後求められる役割の変化も解説!

不動産投資は長い歴史を持つ投資手法ですが、近年REITなど、不動産を証券化し、直接所有しなくても不動産投資を行えるような選択肢も増えてきました。

伴って、不動産の運用が高度化・複雑化する中で不動産にアセットマネジメントの概念が持ち込まれるようになりました。そして現在、元々はREITなどのファンド運用で活躍していたアセットマネージャーは、個々の不動産オーナーの資産運用に携わるケースも少しずつ増えてきています。

今回はアセットマネジメントとはなにか、そもそもの意味と、不動産投資での使われ方について解説した上で、アセットマネジメントを行う事業者、アセットマネージャーの役割や、不動産オーナーがアセットマネージャーに資産運用を委託するメリット・デメリットなどを解説していきます。

アセットマネジメントとは?

アセットマネジメントという言葉や考え方自体は、不動産投資に限らず投資全般に使われているものです。

しかし、とりわけ不動産投資の業界で登場する率が高い用語でもあるため、それぞれについて解説を加えます。

投資用語全般としてのアセットマネジメント

そもそも、アセットマネジメントとは言葉通り、Asset(資産)をマネジメント(管理)することであり、この対象は必ずしも不動産のみを指しているわけではありません。

依頼者である投資家や資産の保有者などから委託を受け、その資産の価値を最大化するための保全、運用、売却などの代行を行う業務のことを「アセットマネジメント」と呼び、アセットマネジメント業務を行う事業者(個人・法人)のことを「アセットマネージャー」と呼びます。

不動産投資の用語としてのアセットマネジメント

不動産投資においてもこの用語の運用のされ方自体に特段の違いがあるわけではありません。しかし、一般に「アセットマネジメント」の語が指す「アセット」は明記するまでもなく不動産のことを指しているケースも少なくなく、不動産投資用語として捉えられている側面もあります。

不動産は株式などの無形の資産ではなく、現物が世界に存在する有形の資産です。それゆえに享受できるメリットも多々ある一方、形があり、かつその名の通り動かすこともできない資産であるがゆえに、適切に物理的な管理がなされなければ資産価値が大きく値下がりしてしまうリスクもあります。

また、近年はREITのように不動産を証券化した投資商品も市場で頻繁に扱われるようになり、適切な管理・運用の需要はより高まっているといえます。

不動産アセットマネジャーの役割

不動産運用におけるアセットマネージャーの使命は、運用を担当する不動産収益の最大化を行うことです。その具体的な業務の内容としては3つに大別することができます。

買い付け運用

買い付けを行った不動産の収益を最大化するために運用を行います。実際に物件の価値を最大化するために具体的な不動産の管理業務に携わるのはプロパティマネージャー(次項で説明)ですが、その運用の具体的な戦略を策定し、プロパティマネージャーに指示出しを行うのはアセットマネージャーの責任範囲です。

また、取り扱っている資産全体の収益性や市場の動向などもチェックしながら戦略を練り直したり、資金計画を策定するのもアセットマネージャーの役割です。

ファンド商品を取り扱っている場合、投資家向けのレポートを作成したり、配当の比率を決めるのも投資を集められるかに直結するような重要な業務です。

売却

運用している物件を適切なタイミングを見計らって売却するのも、アセットマネージャーの最重要業務の一つです。

物件の資産額を策定し、買い手を探して交渉を行い、売却を行う。実際に引き渡しが完了し入金されるまでの一連の手続きを一貫して行います。

不動産を現金化した後は、新たに資産を最大化するために不動産(もしくは他の投資商品)に再投資を行ったり、プロジェクトの内容によっては売却した資金を投資家に分配することで運用を終了するような場合もあります。

アセットマネジメントとプロパティマネジメントの違い

アセットマネジメントという用語を不動産投資の分野において使う場合、関連して出てくる語として、「プロパティマネジメント」があります。

プロパティマネジメントも簡単に言えば「資産価値を向上させるために不動産を適切に管理・運用する」業務にあたるため、混同されやすい部分もありますがその役割には明確な違いがあります。

プロパティマネジメントは物件管理の「実務」を取り扱う

プロパティマネジメント(PM)を行う事業者は「プロパティマネージャー」と呼びますが、その使命は具体的な対象不動産の収益の最大化を目的として、

・入居者の募集、管理(空室率、解約率を下げる、家賃を適正な範囲で最大化する)
・物件の管理(物件の価値が下がらないよう適切な管理を行う)

といった実務を行います。

アセットマネジメント(AM)を行うアセットマネージャーは管理の実務を行うわけではなく、その不動産をポートフォリオの一つとして資産の最大化を行うことを使命としています。

両者の目的は最終的には一致しますが、責任領域や携わる業務内容が異なっています。

AMとPMは連携してその使命を果たす

アセットマネージャーとプロパティマネージャーの関わり方は大きく分けると2通りあります。

・AMがREITとして運用している物件を、PMが管理する
・AMが投資家から直接運用を受託している物件を、PMが管理する

いずれにせよ、アセットマネージャーがプロパティマネージャーに対して適切な指示出しを行い、プロパティマネージャーがその責任範囲の中で、物件の価値の最大化を行います。

プロパティマネージャーと管理会社の違い

プロパティマネージャーの業務内容は具体的な実務に落とし込んでみると物件の管理、賃借人の募集、管理、家賃交渉など、不動産のオーナーに代わりに物件管理・運用を行う「管理会社」と近いものがあります。

しかし、管理会社があくまでオーナーの自主管理を「代行」して管理業務を行うのに対し、プロパティマネージャーは物件の資産価値を最大化させることを考えて管理業務にあたります。

従って、業務に取り組む姿勢や、視点が異なることが挙げられます。

不動産オーナーは委託している管理会社が期待している働きをせず、迅速な入居者対応を行わず思わしい収益が得られなかったり、適切な管理が行われず物件の価値が目減りしてしまうことに不満を募らせているケースもあります。

また、そういった事例に直面しながら管理会社の選定に頭を抱えるオーナーもいるようです。プロパティマネジメントの視点を持ち、適切な業務遂行能力が備わっている事業者を選択できれば、そういった不安を軽減することが可能です。

不動産オーナーがアセットマネジメント契約を行うメリット

アセットマネジメントは元々、REITのような大規模な資産運用を行う法人・ファンドを対象として業務を行うケースが主でした。

しかし、近年はファンドではなく、比較的小規模なポートフォリオで直接不動産を所有している法人、個人の資産管理をアセットマネージャーが行うようなケースも少しずつ増えてきています。

不動産オーナーがアセットマネジメントを委託するメリットについて解説していきます。

自主管理よりも良い投資成績が期待できる

(自身で管理会社を選定することも含め)自主管理を行うよりも、市場の流れを理解している運用のプロに委託したほうが、物件をよりよい投資成績で運用できる可能性が上がります。

オーナー自身が豊富な知見を持っており、また、不動産の運用に時間を割けるのであれば別ですが、多くの不動産オーナーはそういった知見が十分ではなく、また別の仕事を持っており不動産に専業としての時間を割けないケースも少なくありません。

そういった状況下で、より高く、より安定した収益を確保するためにアセットマネージャーの活躍が期待されます。

不動産の物件の管理に関連するリスクを軽減できる

不動産という、その名の通り動かすことのできない実物の物件を扱うオーナーにとって、不動産投資ならではの課題もついて周ります。その一つとして挙げられるのが物件そのものの管理や入居者(賃借人)の募集・管理です。

物件は適切に管理されなければ資産価値を目減りさせてしまい、予想外の修繕が発生すること、新規の入居者の募集が難しくなることなどのリスクが考えられます。

また、入居者を新規に募集する際も、管理会社が積極的に募集などを行わなければ、入居者が見つかるまでの間空室リスクを負うことになります。

多くのオーナーは完全に自身で管理するのではなく、そういった業務を代行してくれる管理会社に委託をしていますが、この管理会社が想定どおり動いてくれないと、想定外の損害に繋がってしまうことも考えられます。

アセットマネージャーと契約すると、別途適切なプロパティマネージャーを選定し、指示を出してくれるためそういった心配をする必要もなく、単に適切に管理・運用してくれるというだけでなく、資産価値の最大化を目的として動いてくれることを期待することができます。

適切な出口戦略を策定できる

不動産は株式など証券商品と比べると流動性が悪く、一定以上の中長期的な期間保有することが前提の投資です。

しかし、特定の物件をずっと保有し続けるだけでなく、適切な時期に売却して保有する資産の入れ替えを行ったりといったことも資産を最大化するためには時に必要となる場合もあります。

そういった不動産の売却も含めた出口戦略をオーナーが単独で適切に考え、実行することは簡単ではありません。

アセットマネージャーは常に市場全体の動向や取り扱っている物件の価値を、先を見通しながら考え、オーナーにとって望ましい資産運用戦略の提案を受けることが期待できます。

不動産オーナーがアセットマネジメント契約を行うデメリット

次に、不動産オーナーがアセットマネジメント契約を行うデメリットについて解説していきます。

基本的には契約に伴い発生する報酬分を考慮しなければならない点や、プロに任せたからといって確実に成果が上がることが保証されているわけではない点が挙げられます。

手数料(委託報酬)が発生する

アセットマネジメント契約を行うことにより、当然ながらアセットマネージャーの受け取る報酬分を支払う必要があります。

逆に言えば、アセットマネージャーにとっては手数料を受け取ってもなお、オーナーやファンドに対して利益が残るだけの運用成績を出す必要があるとも言えます。

この委託手数料が発生する分だけ、損益分岐点も上がります。どのアセットマネージャーに委託するかだけでなく、そもそも委託するかどうか、といった判断も含めてオーナー側での慎重な検討・意思決定が求められます。

現在、個人の不動産オーナーに対してアセットマネージャーがつくケースというのは一定以上の運用する資産を既に保有しているケースが大半です。

アセットマネージャーの運用失敗により大きな損失が出る可能性がある

アセットマネージャーは豊富な経験と業界の最新の情報を持ち合わせており、不動産運用のプロフェッショナルとして高い運用成績を上げることが期待されていますが、当然プロであっても市場の予測を見誤る可能性はあります。

将来の展開を確実に予測することは誰にも不可能なため、「プロですら読み間違えるのだから仕方がない」と思えれば諦めもつきますが、「自分で運用して失敗するのならば受け入れられるが、プロに任せたことで失敗するのは許しがたい」と思うようであれば、他者に資産管理を委託することそのものがリスクとなりえます。

まとめ

アセットマネジメントについて、登場した背景から役割の変化、現在求められている役割から今後新たなサービスの登場により業界やアセットマネージャーに生じうる変化についても説明しました。

不動産を所有していると、所有する資産の規模が大きくなればアセットマネージャーに委託するような機会もあるかもしれません。また、自身の運用規模はアセットマネージャーに委託するほどではなくとも、魅力的な物件を所有していればアセットマネージャーから買い付けの要望が入るなどの機会で関わりがある可能性もあります。

いずれにせよ、アセットマネジメントという概念、アセットマネージャーという役割がオーナーにとって今後より身近な存在になっていくかもしれない変化は念頭に置いておいて損はありません。

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