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オフィスの最適な一人当たり面積とは?業種による違いも紹介

オフィスの移転やレイアウト変更の際には、一人当たりの必要な面積を確保することが重要です。
しかし、業種や職種によって一人当たりの適切な面積は異なります。そこで今回は、オフィスの一人当たり面積の目安について、様々な例を挙げて検証しましょう。

オフィスでの一人当たり面積について

まずは、一般的なオフィスの一人当たり面積について見ていきます。

適度な一人当たり面積とは

今と昔の一人当たり面積

一昔前では、一人当たりの適切な面積は約10㎡(約3坪)といわれていました。最近では、柱が少なく正方形に近いなど、レイアウト効率の良いオフィスビルが増えているためか、一人当たりのオフィス面積も確実に減っています。今では、適度な一人当たりの面積は約8.55㎡(約2.3坪)といわれています。

労働安全衛生法による目安とは

参考までに労働安全衛生法においては、面積ではなく容積について以下のように定められています。

『事業者は、労働者を常時就業させる室の気積を、設備の占める容積及び床面から4メートルを超える高さにある空間を除き、労働者1人について、10立方メートル以上としなければならない。』

これを面積に置き換えると、一人当たりの面積は1坪です。これを現在のオフィスビルに当てはめるのは無理がありますが、最低限の基準と考えればいいでしょう。

避難所の一人当たり面積

 災害時の避難所における一人当たり面積はどれくらいなのでしょうか。参考に例を挙げておきます。

内閣府防災ガイドラインでは避難者の一人当たり面積は示されていません。東日本大地震の時に岩手県で避難所となった学校施設の例を見てみましょう。
 
屋内運動場のアリーナ部分の面積と収容人数から逆算して、一人当たりの占有面積は発災翌日の約1.0㎡/人に始まり、2ヶ月後では約2.0㎡/人、3ヶ月後に約3.0㎡/人、そして4ヶ月後には約5.5㎡/人と変化しました。
 
また、長野県危機管理部の資料によれば、避難所における避難者1人あたりの必要専有面積は次の通りです。
 
●一人当たり1㎡・・・発災直後の座った状態程度の占有面積
●一人当たり2㎡・・・緊急対応初期の就寝可能な占有面積
●一人当たり3㎡・・・避難生活が長期化し、荷物置場を含めた占有面積

一人当たり面積の推移と傾向

 民間企業の調査による、東京都区部の一人当たりのオフィス面積の調査結果を確認してみましょう。オフィスの利用実態を掌握するためにオフィスビルに入居しているテナントに継続して行った調査結果の、一般的なオフィスでの一人当たりの賃借面積を表にしたものです。

一人当たり面積(東京都区部)
2008年4.02坪
2009年3.88坪
2010年3.96坪
2011年4.00坪
2012年3.96坪
2013年3.93坪
2014年3.92坪
2015年3.87坪
2016年3.80坪
2017年3.81坪
2018年3.85坪

2008年のリーマンショック後はその影響で少なくなりましたが、2011年にかけて4坪まで回復しました。その後、減少して2016年には3.8坪に落ち込みます。翌年、翌々年と増え続けて2018年には3.85坪に落ち着いています。

一人当たり面積の違いによるメリット&デメリット

 オフィスの一人当たり面積について、広い場合と狭い場合のメリットとデメリットを検証しましょう。

一人当たり面積が広い場合のメリット&デメリット

 まず、広い一人当たり面積のオフィスにおけるメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット

 広いオフィスであれば、デスクワーク以外の作業をする場所を広く取れて、快適かつ開放的な雰囲気で仕事をすることができます。結果として生産性を上げることにもつながります。

また、ユニバーサルデザインを取り入れやすいので、様々な人材を受け入れることができます。社員用スペース、来客用スペースともにユニバーサルデザインを取り入れることによって、事業の幅も広がるでしょう。

ほかにも見通しの良いスペースであるということは、部外者の侵入を防止することができます。また、緊急時における避難経路の確保もしやすく、セキュリティ上でも安心感が増します。
 

デメリット

 一方デメリットとして、広いオフィスの維持には当然賃貸料や光熱費等のコストが増えることがあげられます。
 
特に都心部はテナント料が高くなるため、あまり使わない無駄なスペースが生まれがちな広い面積のオフィスを借りるのは、経費のロスにつながるのです。
 
そのうえ、社員一人当たりの空調あるいは照明などにかかってくる費用も増えます。このように広い面積のオフィスでは、可能な限り無駄を生み出さないようなレイアウトや働き方が求められます。

一人当たり面積が狭い場合のメリット&デメリット

 次に、オフィス面積が狭い場合のメリットとデメリットを検証してみましょう。まずはメリットからです。

メリット

 一般的に、オフィスの面積が狭ければコストを削減をしやすいといえます。賃貸料や光熱費などの費用は、広い面積のオフィスに比べて確実に抑えることが可能です。
 
また、スペースがコンパクトにまとまっているということは、社員の動線も効率的になります。例えば、書類や備品の収納場所やコピー機に自然と近くなるため、オフィス内での移動の時間も少なくて済むのです。
 
また、社員間のコミュニケーションも取りやすいため、仕事上の連携においてもプラスになるでしょう。

デメリット

 狭い場合は作業に十分なスペースを確保できないので、何かと効率が下がるおそれがあります。程度にもよりますが、狭い空間にたくさんの社員が働く環境は、ストレスを感じやすくなることが考えられます。周りの音や動きが気になってしまって、業務に集中しにくくなるのです。

ほかには、オフィスが狭いと壁際の背の高いオフィス家具に囲まれている感じになり、閉塞感からのストレスを生むおそれもあります。

業種によって違う適切な一人当たり面積

適切な一人当たりのオフィス面積は、業種によって異なります。代表的な業種での適切な一人当たりの面積を詳しく見ていきましょう。

広い一人当たり面積が求められる業種とは

 
広い一人当たり面積が求められる業種といえば、金融機関や不動産などのように来客が多いタイプの業種です。
 
同向式レイアウトを取り入れているオフィスも、広さが必要です。同向式レイアウトは、フリーアドレス式レイアウトや対向式レイアウトに比べて一人当たり面積が多くなるからです。
 
ほかには、エンジニアなどのクリエイティブ系のスタッフが働く職場では、ハイスペックなパソコン機器が配置できるように広いスペースが必要です。その結果、一人当たりのオフィス面積が広くなりがちです。
 

狭い一人当たり面積でも問題のない業種とは

 一人当たり面積が狭くても特に問題のない業種を確認しましょう。企画や営業、あるいは会計部門などでフリーアドレス式レイアウト、もしくは対向式レイアウトを取り入れれば、広いスペースを必要としません。

とりわけ、フリーアドレス式レイアウトは、必ずしもスタッフ人数分の席を確保する必要はありません。狭い面積でも対応が可能です。フレックス制やリモートワークを取り入れている会社も、人数分の面積を確保する必要性は低くなるでしょう。 

コールセンターの一人当たり面積

 かつて、コールセンターはオペレーターの一人当たり面積を制限することで、コストを抑えることが業界の目標でした。オペレーターは顧客満足度に関与する業務ではあっても、同時にコスト削減努力が求められる業種です。
 
とはいえ、最小限のスペースに多くの人を詰め込む発想では、結果的に生産性や快適性を損なってしまいます。
 
コールセンターで人の流動性が高いのは、業務のシビアさもありますが、スペースが狭すぎることによる様々なストレスが原因での離職も多いからです。
 
また別の観点からいえば、同じコールセンターのオペレーターでもテクニカルサポート担当者と受発注担当者では、デスク形状やサイズはもちろん、収納庫の数や配置も大きく違ってきます。
 
コールセンターの一人当たり面積やレイアウトに関しては、ひと昔前から変化して試行錯誤がなされているようです。

オフィスの事務所以外の部屋の面積計算

基本として、事務所内のワークスペースの面積は、デスクの大きさプラス椅子の稼働スペースとして、5メートル×デスクの幅で算出します。ただし、実際にはそこに人の往来する通路が必要です。そこで、通路幅の5から6メートルを加えて計算しなければなりません。

ここからは、事務所以外の部屋の面積について少し詳しく見ていきましょう。 

役員室の適度な一人当たり面積

 役員室では、最も一人当たり面積が広くなります。役員の執務デスクと書庫やワードローブに要するスペースがあり、そのほかにも応接セットのスペースが十分に必要です。
 
応接セットを除けば5坪弱が妥当ですが、応接セットを含めたトータルとしての目安は、10坪近く取ることが望まれます。 

会議室の適度な一人当たり面積

 会議室はその性質上、収容人数に対して少ない面積で問題ありません。典型的なパターンでいえば、3人ずつが向かい合わせになる6人掛けのテーブルを配置する程度で、ホワイトボードなどは大して場所を取りません。
 
そのような想定で計算すると4.4坪程度で収まるので、6人で使用すると仮定すれば一人あたり0.7から0.8坪で済みます。 

休憩所・喫煙所・食堂の一人当たり面積

 休憩所や喫煙所、食堂などは目的が限定されているので、会議室同様に狭いスペースでも成り立ちます。休憩所あるいは喫煙所であれば、0.6坪ほどあれば問題ありません。食堂についても会議室同様の0.7から0.8坪以上であればよいでしょう。

まとめ

オフィスビルに関する一人当たり面積について、様々な角度から検証しました。一人当たり面積というものは業種や職種によっても異なり、社会環境の変化にも影響されます。オフィスの移転やレイアウト変更を検討している方は、一人当たり面積を考慮して、あなたのオフィスにふさわしいレイアウトを見つけてください。

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