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オフィスインタビュー オフィスツアー
vol.298 KDDI株式会社

未来を発信し続ける「街」へ。「つなぐチカラ」を進化させるKDDIの新本社オフィス見学ツアー

KDDI株式会社

2025年4月28日から順次、「TAKANAWA GATEWAY CITY」のTHE LINKPILLAR 1 NORTHへの本社移転を進めてきたKDDI。7月1日にグランドオープンを果たした新オフィスのコンセプトは、「つなぐチカラを進化させ、ワクワクする未来を発信し続けるConnectable City」です。オフィスファシリティに携わる松浦さん、福石さん、人事としてオフィス施策に携わる小林さんにお話を伺いました。

松浦 知哉
インタビュー
松浦 知哉
KDDI株式会社 総務部 オフィス戦略グループ

2018年にKDDIへ新卒入社。大手企業向けのプレセールスエンジニアとして、SaaSの導入支援や5Gを活用したPoCの技術支援などDX領域を中心に担当。2022年に社内公募で総務部へ異動し、新本社移転プロジェクトに参画。コラボレーションエリアやコワーキングスペースの設計・家具選定のディレクション、社内外向けのコミュニケーション施策を担う。

福石 太郎
インタビュー
福石 太郎
KDDI株式会社 総務部 オフィス戦略グループ

リクルート、伊藤忠グループにて内装デザインの提案、住空間やオフィスに関する新規事業立ち上げに従事。その後楽天グループにてインハウスのオフィス戦略に携わり、全国のオフィス移転・増床・レイアウト変更を経験。2021年KDDIに入社し新本社移転プロジェクトに参画。オフィス及びカフェテリアフロアのレイアウト・デザイン設計・家具選定のディレクションやコストマネジメント、品質管理を担当。

小林 真理奈
インタビュー
小林 真理奈
KDDI株式会社 人事戦略部 

2012年に新卒で入社後、法人営業としてコンテンツプロバイダー業界向けの直販営業やDX商材の専任営業を担当。2018年からは人事本部に異動し、新卒採用全般に従事。社内副業制度を活用し、動画サービスの企画運営も経験。2023年にはコーポレート統括本部長付役員補佐を経験後、2024年に産休・育休を取得。2025年に復職後、人事全体のインナー・アウターコミュニケーションを担当している。

目指したのは、働き方をアップデートする実験場

卯岡(IBASHO.ライター) :

まずは御社のご紹介からお願いいたします。

松浦さん :

「KDDI VISION 2030」として、2030年までのビジョン「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」を掲げています。

2026年3月期までの中期経営戦略において、5G通信と、データドリブン・生成AIを中心に、お客さま接点である通信基盤を生かして成長領域であるDX、金融、エネルギーといった付加価値サービスの提供で事業成長の加速を目指しています。

卯岡 :

ありがとうございます。ここからオフィスの話に移っていきたいのですが、その前にみなさまのお仕事内容についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

福石さん :

私と松浦さんは、総務部のオフィス戦略グループというオフィスファシリティにより社員の働き方や事業のアップデートをサポートするチームで業務をしています。今回は新本社移転プロジェクトの事務局メンバーとして、オフィスファシリティの企画・構築から運用開始直前の準備までを担当しました。このオフィスにどれぐらいの人が入るのかというボリュームフィットから始め、「どのような構造にするか」「フロアのゾーニングをどう分けるか」といった全体プランを策定しました。細部にわたっては、壁紙の色や家具の選定などの内装デザインも私たちが担当しました。

松浦さん :

福石さんがお話してくださった分野に加え、私はブランディングも担当しています。

小林さん :

私は人事本部の人事戦略部におり、人事全体のコミュニケーションを担当しています。インナーコミュニケーション(社内)、アウターコミュニケーション(社外)の両方をやっていまして、新本社に関しても社内外、双方への広報活動に携わっています。

卯岡 :

それぞれの役割でオフィスに関わられていらっしゃるんですね。現在、KDDIさんの働き方は、具体的にどのような形になっていらっしゃるのでしょうか。

小林さん :

私たちは、「価値創造に使う時間を増やし、事業貢献につなげていく」ことを目指して、2024年から働き方のアップデートを進めてきました。今回の新本社は、その動きをさらに加速させる位置づけになっています。働き方アップデートのコンセプトは「心豊かに、仕事に打ち込む」で、このコンセプトのもと「集い、つながり、成長する」「時間の使い方を主体的に考える」という2つを目指す姿として掲げています。

小林さん :

この「集い、つながり、成長する」では、チームの連帯感を高めるとともに、部署や組織の壁を越えたコラボレーションを強化し、新たな価値創造につなげることが最大の目的になっています。気軽なコミュニケーションを活性化することで、新たなアイデアやイノベーションが生まれ、情報共有や相互理解も深まり、それを事業貢献へとつなげていきたいという意図が込められています。

もう一方の「時間の使い方を主体的に考える」では、コミュニケーションの活性化が業務スピードの向上につながることに加え、その根本には、社員一人ひとりが業務内容に応じて最適な環境を自ら選ぶという自律的な行動を促したいという強い思いがあります。これらふたつのコンセプトが、オフィスのエリアづくりにも反映されています。

卯岡 :

そもそも、どのような理由で本社を移転させることになったのでしょうか。

松浦さん :

JRさんとの取り組みにおいて、高輪ゲートウェイという街がつくられていくタイミングだったという背景が、高輪エリアに本社を移転させる大きなきっかけでした。

高輪は江戸時代から交通の要所として栄えてきた街であり、150年ぐらい前の明治時代には、築堤という海の上に鉄道を通すためのものが作られたイノベーティブな歴史を持っています。日本初の鉄道が通ったのも高輪です。

松浦さん :

高輪ゲートウェイという新たな街づくりに、JRさん主導で私たちも携わらせていただいてきました。働き方をアップデートする実験場として、歴史を継承しつつ、さまざまな業界、分野の方が交流し、共創を生んでいく。そして、日本からイノベーションを生み出す場として、推し進めていきたいと考えています。

卯岡 :

具体的にどのようにオフィスづくりを進められていったのでしょうか。

福石さん :

すべての本部から代表者を出してもらい、コンセプトワークを行いました。約40名のメンバーで、計5~6回実施しました。そのワークを通じて、必要な場所や機能に関する要望を抽出し、それをブラッシュアップして実際のオフィス構築へと進めました。

福石さん :

ワークから生まれたのが「つなぐチカラを進化させ、ワクワクする未来を発信し続けるConnectable City」という言葉です。コネクタブルというのが非常に強い言葉で、自社内だけで完結する閉鎖的なオフィスではなく、多様なステークホルダーと交流する場として活用するという意味合いが込められています。これは、単に自社社員の効率化のみを目的としたオフィスを目指しているのではない、ということを示しています。

福石さん :

コンセプト、テーマはエリアごとに決めています。こちらの1番上にある「Co-create Home」は、いわゆる同じ部署のメンバーが集まる執務席を指しています。このスペースは社員の戻る場所として置いていますが、広さ的には縮小しており、その代わりにコラボエリア、「Discovery Village」を作っています。こちらは部署、フロア関係なく、このビルにいる人が誰でも使える場所です。執務エリアの自販機や複合機などといった、人が集まる機能はなるべく数を絞り、Villageに集約して置くことでコラボエリアに人が集いやすくなるようにしています。

その下にあるのが「Knowledge Camp」で、キャンプ場のように緑に溢れ、屋外家具が置かれた非日常の社内コワーキングスペースです。KDDIグループ会社の方も自由に使えるため、さらに大きなコミュニケーションを創出する拠点となります。

あと今回社員に喜ばれているのが、「K-Dining」「K-Café」です。高輪は開発中の街のため、まだまだ飲食店が少なく、社員の福利厚生の一環として食堂を設置することは、エンゲージメントの維持・向上を図る上で非常に重要だと考えました。

最後が「TSUNAGU BASE」、社外とのコラボエリアです。このエリアはコネクタブルと深く関連しており、13、14階はお客さまやパートナーの方をお迎えする場所になっています。お客さまやパートナーとのコラボレーションを加速し、KDDIの強みである通信、デジタルデータやAIといった「つなぐチカラ」と、「お客さまやパートナーの強み」を”掛け算”することで、社会に新しい価値を創出、発信する拠点です。

松浦さん :

新本社では、ロボットを動かすオフィスとしての設計も考えました。ロボットが自動ドアを通れるようにしたり、フラッパーゲートを通過してエレベーターに乗って移動したりもできるんです。会議室まで水を持ってきてくれたり、ビル内のローソンの商品をスマホ注文で届けてくれるなど。社員のパフォーマンスの向上を支援するオフィス、共創・コラボレーションを促進するオフィスの二つの側面から設計しています。

卯岡 :

最初にワークを行ったというお話でしたが、どのような意見が出てきましたか?

福石さん :

最初は「ジムがほしい」「サウナがほしい」といった無邪気な意見も出てきました(笑)。そういった実現が難しいアイデアも否定せずにまずはどんどん出していただいています。実現できたものでいくと、「Knowledge Camp」の一角にあるエアロバイクやウォーキングマシンですね。社員の声を拾いながらワークをやって良かったなと思える例です。形骸化することなく、よく使われています。

あとは、リフレッシュする場所がほしいという意見が多くありました。オンオフできる場所、ひとりで集中できる場所などですね。そうしたブースをつくったのも、社員のこうした意見があったからだと思っています。

卯岡 :

社員のみなさまの様子、反響はいかがですか?

福石さん :

「素敵なオフィス!」と言われることがまず最初に多かったですね。ダイニングとカフェとで内装の雰囲気を変えたり、「Knowledge Camp」は屋外をイメージしていたりと、印象が異なるので、雰囲気の違いも楽しみのひとつになってくれているのではないかと思います。

松浦さん :

街にちなんだ名前を付け、ABWの考え方を取り入れて場所を作ったため、仕事内容や気分に応じて移動しながら仕事をしてもらいたいなと思っています。一方で、これで完成ではなく、柔軟にアップデートしていけるオフィスでもありたいと思っています。

卯岡 :

では、実際にオフィスを拝見したいと思います!

KDDIの新本社オフィス見学ツアー

かなり広大なKDDIの新本社。お話に出てきたところを中心に見学させていただきました。

執務エリア「Co-create Home」

提供写真:「場所にとらわれない働き方」を志向し、フレキシブルに業務を実施
提供写真:1on1やオンライン会議で使えるブースも
提供写真:窓際席でリフレッシュ。1人用座席で作業に集中して効率的に働ける環境

社内コラボエリア「Discovery Village」

提供写真:可動式の家具で容易にレイアウト変更が可能
松浦さん :

交流、コラボレーションを重視しているため、会議室以外はあまり壁を作らないようにしています。

提供写真:活発な交流を促し、アイデアやイノベーションの創出を推進
提供写真:オープンスペースで部門を超えた活発な議論も実施可能に
福石さん :

部会や歓迎会など、以前は個室でやっていたものをオープンな場所でやるようになりました。他部署の目標達成した人がわかって「おめでとう」と伝えられるなど、コミュニケーションのきっかけが増えたと思います。

社内コワーキングスペース「Knowledge Camp」

提供写真:オープンな空間とすることで、偶発的な出会いを促進
福石さん :

こちらが「Knowledge Camp」です。キャンプ場のような空間でリラックスしながらの業務ができる場所になっています。

提供写真:植栽を置くなど、緑豊かな空間を演出
松浦さん :

一般的な業務をする場所とは離れた非日常的な空間を構想するにあたり、アウトドア、リラックスといったイメージから「キャンプ」というワードが出てきました。

提供写真:テントや椅子など、置いてある家具はほとんどがアウトドア製品
松浦さん :

大きなモニターやホワイトボードなどもあり、グループ会社とイベントをやるなど、交流のきっかけづくりにも一役買っています。

提供写真:社員同士だけでなく、グループ会社の方とのコラボレーションやイベント開催にも活用
卯岡 :

あ、これが先ほどお話のあったエアロバイクですね!デスクが付いているの、いいですね。資料を見ながら運動できそうです。

社外コラボエリア「TSUNAGU BASE」

提供写真:社外コラボ・インキュベーション、来客カフェ、ショールームとして機能
松浦さん :

13階はオフィスツアーの申し込みを多くいただいています。イベントも増えましたね。スタートアップ企業との定期的なイベントを13階で実施したり、有志が企画したりと、様々なイベントの予定が入っています。予約スペースは直近は予定が埋まっている状態ですね。

卯岡 :

すごいですね!

提供写真:「Lounge」人と人のつながりをサポートするコワーキングカフェ
提供写真:「Tomorrow Lab」みなさまの課題とその先にある社会課題を、ともに解決していくための対話の場
提供写真
提供写真
松浦さん :

技術について展示しているエリアは、オフィスツアーのときにもご案内している場所です。

提供写真:「Idea Palette」ともに描いた未来を一つひとつ形にしていくためのワークショップルーム
提供写真:「Theater」TSUNAGU BASEに来訪いただく方と“ともに創る未来社会”の入り口となる映像体験の場
提供写真:「Showroom」KDDIテクノロジーや事業領域を体感できるスペース
提供写真

食堂・カフェテリア「K-Dining、K-Café」

提供写真:社員が日々の食事を通じて環境にやさしい取り組みを実践できる場を提供
福石さん :

個人的に作っていてよかったなと思うのが、食堂です。会社内に食べる場所があると、チームメンバーと気軽に食べに行けるので、話す機会が増えたなと。外の飲食店だと、人数的に入りづらかったり、わざわざ出向く時間がなかったりしますので。

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卯岡 :

これだけ広いと、人数がある程度いても一緒に食べやすいだろうなと思います。

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福石さん :

打ち合わせでは顔を合わせるものの、普段あまり話さない人と「今日はどのメニューを選んだの?」など食を介して会話をすることで、その後の打ち合わせが円滑に進むようになるなど、ポジティブな効果を実感しています。社員からも好評で、「明確にエンゲージメントが上がりました!」という具体的な声も寄せられているんですよ。

卯岡 :

あまり自ら「エンゲージメントが上がった」と言うイメージはないので、うれしい驚きですね。

福石さん :

そうなんです。いきなり直接声を掛けられたことがあり、驚きました。食堂やカフェが出社したいきっかけになってくれているようで、うれしいです。毎日メニューが10種類あるんですよ。

小林さん :

食堂運営には人事も関わっていまして、味やボリューム、オペレーションに関して、社員の意見を継続的に反映し、小さな改善を積み重ねています。

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卯岡 :

カフェは雰囲気が違うんですね。

提供写真
小林さん :

ダイニングとカフェは内階段ですぐ移動できるので、ランチを食べたあとに午後のコーヒーを買って仕事に戻るといった習慣が自然と生まれたりしていす。量り売りのデリも提供していて、ランチを選択できる楽しみもあります。

提供写真
福石さん :

この階段付近で仕事をしているときに人と出会って話すなんてこともあります。動線もかなりこだわって考えました。

提供写真

ビル内コンビニ「Real×Tech LAWSON」

KDDI株式会社
ビル内にもオフィス環境に特化した「Real×Tech LAWSON」の実験店舗を設置
小林さん :

専用の「オフィスローソンアプリ」のスマホレジ機能で、待ち時間なしでお買い物ができるローソンです。

松浦さん :

ロボットに届けてもらうことで、ここに来なくてもスマホから買い物することもできます。そのため、生産性やモチベーションの向上、オフィス環境への満足度向上を目指しています。

卯岡 :

先ほど、お仕事中のロボットを見かけました。フロアを移動する余裕がないときなど、非常に便利ですね。

今後もアップデートを重ね、共創の成果を発信できるオフィスに

最後に、今後のオフィスについて意気込みを伺いました。

「定量的な意見、定性的な意見を集約して反映し、アップデートさせていきたいです。社内外を含めてコラボレーションできる環境を整えていきたいですね。『共創できる場をつくりました』だけではだめだと思うので、コネクタブルシティの成果がどんどん発信されていくようなポジティブな循環を生んでいきたいなと。いろいろな実験をしていくので、ご期待ください」(松浦さん)

「私はオフィスやオフィスで働いている人が好きで、この仕事をやっています。時勢などに応じ働き方への価値観は変わりますが、根本的に『出社したいな』と思ってもらえるオフィスにしたいなと。私は中途入社なのですが、このオフィスを自慢してくれる人が出てきて、それをきっかけにKDDIに魅力を感じた新卒の方、中途の方が入ってきてくれたらうれしいです。人を惹きつける魅力的なオフィスにしたいですね。また、本社以外の拠点にもこのコンセプトを注入していき、同じようなモチベーションで働ける環境をつくっていきたいとも思っています」(福石さん)

「KDDIには『心を高める』という社是があります。創業者の稲盛和夫氏の言葉にも、「働くことの本質は心を高め、人として成長し、人生を充実させること」という考え方があります。最近は出社回帰の流れがあり、『なぜ出社しなきゃいけないのか』と思われている方もいらっしゃる一方、多くの方が出社にも価値があると感じていらっしゃるのではないかと思います。例えば、偶発的なコラボレーションや気軽なコミュニケーションが生まれるなどですね。私たちは出社を目的にしているわけではなく、出社によりコラボレーションしやすい環境を整えることで新たなイノベーションが生まれやすくなったり、自律的な働き方を通じてハイパフォーマンスを発揮できたりする。そして、目の前の人から人間力や専門性を盗むことができ、成長に繋がる、そういったことが目的です。今後も人事として、偶発的な交流や気軽なコミュニケーションが生まれる施策を展開し、社員一人ひとりが「心を高め、成長できる」環境づくりを進めていきたいなと思っています」(小林さん)

本格的なアンケートを近々実施する予定があるとお話しくださったみなさん。どのような意見や感想が集まり、どんなアップデートがなされるのでしょうか。実験場での成果が次々と発信される日がくるのが楽しみです。

取材先

KDDI株式会社

https://www.kddi.com/ 公式サイト

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