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オフィス解約大全!必要な手続きやスケジュール、費用相場を解説
オフィスの移転にせよ、オフィスを「持たない」働き方にせよ、必要になってくるのが現在のオフィスの解約。
居住用の賃貸物件の解約もそれなりの手間がかかりますが、オフィス物件となるの更に考えなければならないことは増えます。
そこで今回はオフィスの「解約」に伴い、発生するやり取り、費用感、スケジュール感の目安などを徹底解説していきます。こ解約に必要な手続きの全体像から詳細なタスクまでまとめています。
目次
オフィスの解約に必要な手続きと相手先
賃貸オフィスの解約(および移転)に際しては、居住用の賃貸契約と比較して必要な手続きや、関わる相手が多岐にわたります。
いざ移転を実行するにあたって、確認漏れがありバタバタしないように、どういった業者とのやり取りが必要になるのか抑え、連絡先が不明な業者があれば、余裕をもってその点から確認を行いましょう。
解約予告:現在のオーナー、仲介会社
まず、当然必要となってくるのが現行の賃貸契約の解除です。現在契約している物件のオーナーに連絡をしなければなりません。どのように手続きを進めれば分からないという場合には、入居に際して仲介をしてくれた仲介業者に連絡するのも良いでしょう。
新オフィスの選定、契約(移転の場合):新しいオーナー、仲介会社
現在のオフィスの解約が移転をするためである場合、当然新しいオフィスを選定する必要が出てきます。その際に新たなオーナー、もしくは仲介業者とのやり取りの必要性が生じます。
取引先への通知:取引先
オフィスを解約・移転した場合、住所が変更になるだけでなく、エリアを跨ぐ場合には固定電話の番号も引き継ぐことができない可能性があります。
取引先など関係する各社には余裕を持った時期にあらかじめ解約(および移転)の旨を通知しておくことが求められます。移転日の一か月前には通知を出すことが望ましいでしょう。
近年はメールのみでの通知でも問題ないケースも増えていますが、ビジネスの慣例を重視する取引先や、取引額の多い取引先には葉書での通知も行ったほうが無難です。
また、電話番号が変更となる場合には当面変更前の番号に転送をかけるか番号変更のアナウンスなどの設定を行うとトラブル回避につながります。
法的手続き(必要な場合):法務局等
オフィスの解約・移転に伴い本店の所在地が変更となった場合、法務局にて登記の修正を行う必要があります。この手続きはオフィス移転後に必要となる手続きで、会社法上は変更から2週間以内に申請しなかった場合過料が課されるケースもありますので、忘れないようにしておきましょう。
搬出(および搬入):引っ越し業者、処分業者
既存のオフィスからの搬出に伴い、当然引っ越し業者が必要になります。
オフィスの環境を全て移動させるようなケースであれば引っ越し業者のみで足りますが、解約に伴って大量に何かしらの廃棄処理が必要な場合、物量によっては別途処分業者などが必要なケースも生じてきます。オフィス什器の買取業者もいますので、そのような業者に声をかけるのも良いでしょう。
原状回復工事、回線工事:施工会社、通信会社など
解約するオフィスは原則として、契約時の状態に戻して貸主に返却する必要があります。
敷設している通信回線などを撤去する必要があるのは当然のこと、天井を抜く工事(スケルトン工事)をしているなど大規模な内装工事を行っている場合、原状回復の工事も行う必要が出てきます。
オフィスの解約の流れは?希望時期に完了させるためのスケジュール
オフィスの解約に伴いやり取りが発生する可能性の高い相手を概ね確認できたところで、改めて解約に向けてどのようなスケジュール感で動くことが望ましいか、時期ごとに分けて解説していきます。
具体的なアクションとしては「半年前」くらいから動き始めると、不測の事態に慌てることもなく多少のスケジュールのずれにも余裕をもって対応することができます。
~半年前
半年前までに行うべきこととしては、まず現状の貸主に対して解約予告通知を出しておくことです。この段階で新しい入居先の目星を付け、内諾を得ておくことが大切です。現在の契約書の内容もきちんとチェックしましょう。解約予告期間が設定されていることや、そもそも解約不可という契約内容になっている場合もあるので要チェックです。
半年後の解約に向けてスケジュール表を作成し、時期ごとに必要なタスクを明確にします。
ある程度の規模のオフィスの移転であれば社内でプロジェクトチームを立ち上げるなどのアクションもこの時期に行うのが適切です。移転の場合は新しいオフィスのレイアウトについても設計しておきましょう。
3~2ヵ月前
オフィスの解約に新しいオフィスの移転が伴う場合はこのくらいの時期から新しいオフィスの契約を開始するのが理想です。
オフィスの規模によりますが回線敷設工事や内装工事の期間を考慮し、必要な機器の手配など、移転後、極力早く通常通り業務が行えるように環境を整えるためにこのくらいの時期から準備を始めることが望ましいです。
また原状回復工事の工事手配なども、この時期を目安に開始すると良いでしょう。少し早めに動く事で、原状回復工事の工事内容をしっかりと確認することが出来るようになります。
取引先に移転の旨を通知するのは1ヵ月前くらいが一般的ですが、抜け漏れがないようにリストを選定するにはこの時期に準備が必要です。
1ヵ月前
1ヵ月前には新オフィスへの引っ越しを完了させて、取引先等へのオフィス移転の通知などを行うことが望ましいです。引っ越しが完了し、オフィス内で誰も勤務しなくなってから、原状回復工事が開始されます。一般的な規模のオフィスの原状回復工事が、約1か月間、と言われています。
当月以降
無事新しいオフィスの準備が整い、移転が済んだら、無事に旧オフィスの解約となります。
解約時期までに原状回復が終了せず引き渡しの準備ができなかった場合、契約次第では多額のペナルティが発生する可能性もあります。
また、移転が済んだら速やかに各種届出も行う必要があります。
オフィスの解約に伴う、費用の発生項目と目安を解説
解約に伴い動くべきスケジュール感までご確認いただいたところで、改めてオフィスの解約(および移転)に伴い、どのような費用が発生するのかを項目ごとにまとめます。
基本的にはあくまで相場であり、個々の事情により金額が大きく変動するケースもありますので、可能な項目に関しては複数の業者から相見積を取るなどのコスト比較を行うことが望ましいです。
現在の貸主に支払う費用
基本的には解約に伴い、退去時までの家賃以外新たな費用が発生することはありませんが、契約期間に定めがあり、その期間の満了前に解約する場合には、期間を満たさない部分の違約金が発生するケースがあります。
新たな貸主・仲介業者に支払う費用
新たなオフィスを契約する場合、以下のような費用を用意する必要があります。
・敷金:50坪以下の場合賃料3~6ヶ月分、50坪以上の場合賃料の6~12ヶ月分
・礼金:最大で2ヵ月分程度(ただし、貸主が一定規模の法人の場合かからないケースが多い)
・火災保険料:年間1万円程度
・保証委託料:賃料1ヵ月分(保証会社に加入する場合)
・前家賃:賃料1ヵ月分(もしくは、その日割)
・仲介手数料:賃料1ヵ月分
火災保険料は相対的は少額のため無視して考えても、一定規模のオフィスの場合、最大で家賃約15ヵ月分の初期費用が発生することを想定しておきましょう。
個人での賃貸契約に比べると敷金の比重が非常に高いケースもありますが、オフィス物件の場合家賃の支払が遅滞した場合の貸主のリスクが高いためこのような設定がされています。
敷金に関しては原則として解約時に返還されるため、原状回復費などの諸費用に充当することが可能です。
新しいオフィスの内装にかかる費用
新たなオフィスの内装工事をする場合、以下のような費用を考えておく必要があります。内装費用は、どのような内装を作り込むかによって、大きく費用が変わってきますので、あらかじめ考えている予算を内装会社に伝えておくことが良いでしょう。
内装工事費用:50坪以下の場合には1坪あたり5~10万円程度、50坪以上の場合には1坪あたり10~15万円程度
規模が大きくなると費用も比例して大きくなるため、しっかりと内装業者と打ち合わせをしていく事が重要です。
法的手続きにかかる費用
本店移転登記に伴う手続き費用は、本店の移転が法務局の管轄の変更の有無が重要なポイントとなってきます。
(例:東京都港区→東京都中央区の場合は東京法局内での移転ですが、東京都港区→神奈川県横浜市の場合は管轄も東京法務局→横浜地方法務局に移転)
管轄の変更を伴わない場合:3万円
管轄の変更を伴う場合:6万円
上記が必ず発生する費用です。一連の手続きを司法書士などに依頼する場合別途3万円程度の報酬が発生します。
搬出・搬入・廃棄にかかる費用
オフィスの移転に伴う引っ越しの費用は相場としては
社員1人あたり、3~5万円程度
が相場です。当然、社員一人当たりの荷物の量や、移転する新旧オフィス間の距離によっても変動します。
廃棄が発生する場合の撤去費用ですが、相場としては
2トン車1台分の廃棄量:8万円前後
4トン車1台分の廃棄量:12万円前後
の費用が発生します。
単に撤去するだけでなく、セキュリティ上、データの消去や物理的な機器の破壊などが必要な場合はこれに加算される可能性があります。
なお、基本的には廃棄物は費用を払って引き取ってもらうのが一般的ですが、リサイクル・リユース可能な物品においては逆に買い取ってもらうことができる可能性もあります。
これらの引っ越し業者、搬出業者は原則として選択可能なので比較検討を行いましょう。
原状回復工事、回線工事等にかかる費用
解約するオフィスを明け渡す際には原状回復が求められますが、その費用は
原状回復工事費:50坪以下の場合に1坪あたり3~5万円程度、50坪以上の場合に1坪あたり6~8万円程度
が相場です。なお、スケルトン工事など、元の状態から大きく手を加えるような大規模な施工を行っていた場合は1坪あたり数万円の費用が加算される場合があります。
原状回復工事は貸主指定の業者がある場合も少なくありません。
回線撤去の工事にあたっては、
回線撤去工事:電話1台あたり2~3万円
程度の費用が一般的には必要です。ただし、複雑な配線を行っている場合やデータ通信において専用線を引いている場合など、特殊事情があれば工事費用が大きく上乗せとなるケースもあります。
オフィス解約時に気を付けるべきポイント・ありがちなトラブル
上記に示した通りの流れでスムーズにオフィスの解約、移転を行えればよいのですが、現実にはそれに伴ってトラブルが起きるケースもあります。
気を付けるべきポイント、ありがちなトラブルについてまとめていますので、事前にご確認の上、問題が起きそうであれば予め対処するなどの対応も有効です。
契約の内容によっては違約金等高額の費用が発生する
先ほど契約内容により現在のオフィスにて違約金が発生する場合があると解説しましたが、どのようなケースがあるか紹介していきます。
例えば、「途中解約の場合であっても、契約の残存期間分の家賃・共益費を支払う」といった契約が取り交わされている場合、何もしなければその支払いの義務が発生します。
なお、実際のところ上記の特約において「4年間」の賃貸契約に対し1年未満での解約に伴い、残存期間分の支払の特約の有効性を求めて裁判が行われたケースもあります。
当該判例では「4年間の支払いを求める行為は効力として借主の負担が大きく、移転の自由を奪う」として特約を無効として扱ったものの、解約後の家賃・共益費について「1年分」に支払を解約した借主が行う判決が出ています。
また、「契約期間が未満了での解約にともない違約金が発生する」といった文言において契約更新後新たに「契約満了」が設定され、その期間に満たない場合は違約金の発生対象と主張されるケースがあります。
たとえば、2年更新の場合で契約更新ごとに途中解約の違約金が設定されている場合、3年での解約であれば一度契約を更新していますが、2回目の契約を「未満了」という扱いで違約金を請求されるケースが該当します。
かつて問題となっていた携帯電話の更新期間・違約金の論点と似ていますが、オフィスの賃料ともなると負担額はその比ではありません。
新しいオフィスの審査に通らない
オフィスの解約に移転が伴う場合、説明の通り事前に移転先のオフィスを選定し、契約しておく必要があります。
しかし、希望する新しいオフィスに対して入居の審査が通らず、新たなオフィスが契約できないといったケースも想定されます。
万が一、移転できる候補先が見つからず移転を断念する場合であっても、一度予告した解約を取り消すことができるかはケースバイケースです。(既に次の入居予定者が決まっている場合もあるため)
旧オフィスと新オフィスで家賃の二重払いの期間を極力短くするために、契約の開始時期を遅らせることは移転のコストを抑える意味では有効ですが、直前になって審査に通らなかったことを起因とし慌てることのないよう事前に余裕をもったスケジュールで審査、契約を済ませておくことが望ましいです。
原状回復に高額の費用がかかる
賃貸オフィスの場合、居住用の賃貸物件と比較し状況によっては原状回復に多額の費用がかかるケースがあります。
特に、内装に大規模な工事を加えていた場合や、給排水設備を造作している場合、通常想定されるよりも多額の原状回復費用が発生するリスクもあります。
なお、借主起因で工事費が発生するケースであればその費用は当然に支払い義務が発生しますが、オフィス賃貸の場合には自然な経年劣化も原状回復の対象となる場合が多いため、あらかじめ注意が必要です。
また、原状回復工事は貸主指定の業者で行う必要があるケースも少なくありませんが、中には原状回復工事に不当な上乗せがあり、想定以上の費用を請求されるケースも全くないとは言えません。
しっかりと見積内容を検討する期間を設けて、不当な見積であると判断した場合は詳細な説明を求めるなどの対応も不当な支払い義務を逃れるためには時には必要な方法です。
まとめ
オフィスの賃貸契約の解約は、住居の賃貸契約と比べて貸主にとっても借主にとっても一大イベントです。
契約の内容やオフィスの状況によっては手配までに長い時間を要したり、多額の費用が発生したりするケースもあります。また、中には残念ながら意思疎通の不足や、貸主側の意図で不当な支払いが発生するようなトラブルも存在します。
予め必要なアクション、相手先、スケジュール感および大まかな費用感を把握し、不可解な点があれば都度確認しながら進めていくことが不要、不当なコスト発生を抑えるためには大切になってきます。