- オフィスインタビュー
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次の飛躍を成功させるための、最後の助走期間を過ごす場に。Libryの新オフィス
中高生にスマートな学習環境を提供する、Libryのサービス「Libry(リブリー)」。分厚い教科書や問題集を電子書籍化することで、教師、生徒双方の負担を軽減しています。その上で、これまでの勉強方法の良さも残したサービスです。
そんなLibryが新オフィスのコンセプトに掲げたのは、ロケットの発射台を意味する「Launch Pad」。今後のビジネス展開を見据えたコンセプトへの想いや「Libry」について、代表取締役CEOの後藤さん、オフィス移転プロジェクトを担当したデザイナー永石さんにお話を伺いました。
株式会社Libry 代表取締役CEO。東京工業大学大学院在学中に、株式会社forEst(現:株式会社Libry)を設立。小学生のときに決めた「世界平和」という夢のために、「誰もが生まれた環境に左右されず、自分の可能性を最大限に発揮できる社会」を創る。
大学在学中に友人と学生向けのSNSを開発・運営。その後インターンとして株式会社Libryにジョインし、大学卒業後に入社。リブリーのUI/UXデザインを担当。
目次
デジタルとアナログの良さを両取りし、学習をもっとスマートに
卯岡
まず、Libryさんの事業内容をお聞かせください。
後藤さん
スマートに学べる問題集「Libry」という中高生向けの学習サービスの開発が当社の事業です。
卯岡
スマートに学べる問題集、ですか?
後藤さん
教科書や問題集を、タブレット端末やスマートフォンで見られるようにしたサービスです。電子書籍のように閲覧できるので、たくさんの本を持ち歩く必要がなく「中高生の重たい通学カバン問題」の解決に貢献しています。
卯岡
ああ…中学生から肩こり持ちの人間なんです、私。
後藤さん
学生が持ち歩かなければいけない荷物、本当に多いんです。まずはこれを見てほしいんですけど…
卯岡
問題集から感じる圧が強いです(笑) 。
後藤さん
これ、高校生が3年間で使う数学の教材なんですよね。
卯岡
すさまじい重量感です。使っていたんですもんね、これを。
後藤さん
これだけ分厚いと持ち歩くのも大変です。あと、開いていたページがぱたんと閉じてしまうとか。
卯岡
ありました、ありました…!
後藤さん
電子書籍化してしまうことで、そうした問題がなくなるんですよ。さらに、学習履歴が残るので、以前間違えた問題のレコメンデーションもできます。
永石さん
特定の問題の「類似問題」を、別の問題集も含めて探し出してくることもできるんですよ。
卯岡
便利…。勉強をするときはデバイスに書くんですか?
後藤さん
いえ、そこは従来のアナログ式です。ノートに筆記用具で書き、解答を見て答え合わせをし、デバイス上に正誤情報を入力する、といった流れですね。
▲「今の中高生はスマートフォンの画面サイズでもサクサク使いこなすんです」と語る後藤さん
卯岡
タブレット端末での学習というと、解答もデジタル端末で行うイメージでした。
後藤さん
僕らがLibryを開発する際に重視したのは、今までのやり方を大きく変えないこと、その上でスマートにすることなんですよ。タブレットに直接書き込むのは、現状ではまだあまりスマートとは言えないと考えています。
永石さん
紙とペンの書きやすさにはまだまだ劣るので。
後藤さん
クレジットカード払いの際、デジタルデバイス上でうまくサインを書くことって、できなくないですか?
卯岡
確かに。
後藤さん
Apple Pencilなら書きやすいといった違いはありますが、大切なのは今あるもので、誰でもスマートに使えることなので。紙とペンが書きやすいのにデバイスへの直書きにこだわるのは、作り手のエゴでしかないと思っています。
卯岡
「今までのやり方を大きく変えない」のは、なぜですか?
後藤さん
これまでのやり方を否定されていると先生方に思ってほしくない、また否定したいわけでもないからですね。たとえば、先生方もできるだけ効率化できる部分は効率化したいと思っているんですが、その一方で採点を全部自動化させたいのかというと、そうではないんです。
卯岡
そうなんですね。
後藤さん
導入している学校の先生から寄せられる言葉で多いのが、「デジタルとアナログのバランス感覚が秀逸」なんです。変えてもいいものは利便性を重視したものに変えながら、残したいものは残す。いきなりがらりと変えるのではなく、0.5歩先のイノベーションが学校側、生徒側双方にとってベストだと思っています。
卯岡
0.5歩。わずかだけれど、確かに変化はあるということでしょうか。
後藤さん
はい。テクノロジーの利用としては0.5歩かもしれませんが、体験としては3歩先を進んでいる感覚があると思っています。生徒が楽になるのはもちろん、学習状況を共有することで先生は簡単に生徒の苦手分野などを把握できるため、先生の負担軽減にも繋がっているんです。
卯岡
学校側にもメリットがあるサービスなんですね。
後藤さん
はい。今後、すべての教材をLibryで使えるようにしていきたいですね。Libryは、僕自身が欲しくて作ったサービスなんです。
卯岡
私も学生時代にほしかったです…!
次の移転は大きな飛躍をするとき。新オフィスに求める役割
卯岡
今回、Libryさんがオフィスを移転した理由は何だったのでしょうか。
後藤さん
社員が増加していくなか、そろそろかなというのが理由です。ただ、明確に移転の時期は決めてはいませんでした。
永石さん
移転に関しては、僕やコーポレートのメンバーが物件探しから担当しました。期限は決まっていなかったものの、そうこうしているうちに社員が増えていくので、少しの焦りはありましたね。僕自身、オフィスの移転プロジェクトは初めての経験でした。どう進めていけばいいのかもわからず手探りでしたが、まずは次のオフィスのコンセプトを決め、木下商会さんにご協力いただきながら、コンセプトをオフィスレイアウトで表現しました。
後藤さん
エリアだけは「前のオフィス同様神田で」とある程度絞れていました。社員が東京西部、神奈川、千葉と点在していまして、出勤しやすいエリアがちょうどこの辺りなんですよ。
卯岡
コンセプトなど、オフィスづくりに際して重視した点は何ですか?
永石さん
コンセプトは「Launch Pad(ローンチパッド)」です。意味はロケットの発射台ですね。
後藤さん
会社として、このオフィスで過ごす期間は、最後の助走期間だと思っているんです。次に移転するときは、全国の中学高校でLibryを使ってもらえるように事業成長させる段階だと想定しています。
永石さん
だから、このオフィスを、大きく飛び立つための力を蓄える最後の準備をするための場所だと位置づけ、ロケットの発射台=Launch Padとしました。
後藤さん
このコンセプトは、オフィス移転のために考えたものです。ただ、オフィスづくりの上では、Libryの「7VALUES」をとても大事にしています。これはLibryの行動指針で、まだ社員が8名しかいなかった2018年5月、湯河原で合宿を行い、社員みんなで作ったんです。
▲湯河原での合宿の様子
永石さん
合宿では、ポストイットに「自分たちがこうありたいと思う姿」や「これから一緒に仕事をする仲間にもっていてほしい価値観」」を書いていき、最終的には200個以上出てきました。 それを7つの言葉にまとめたのが「7VALUES」です。
卯岡
オフィスづくりに、どう活かされたのでしょうか?
後藤さん
第一に、きちんとパフォーマンスを出せる環境であることを重視しましたね。
永石さん
7VALUESのひとつ、「Be Professional」の精神に基づいて、デスクを大きめにしたり、集中できるスペースを設けたりしました。「業務効率化のために必要です」といえば、モニターや椅子も自分の使いやすいものを買ってもらえるんです。
後藤さん
パフォーマンスがそれで向上できるなら、安い投資です。あと、ドリンクやお菓子が飲み放題・食べ放題です。小腹が空いたときには、サッとカロリーを摂って、しっかり頭を働かせてもらいたいので。
卯岡
パフォーマンスを出せる環境作りのために、福利厚生や制度で工夫している点はありますか?
後藤さん
ランチ関係が多いんですが…クロスランチ制度、シャッフルランチ制度があります。
卯岡
どう違うのですか?
後藤さん
クロスランチ制度は、他部署の人とランチに行ったらひとり1,000円、月3回まで補助が出る制度です。「One Team」を目標としているので、コミュニケーションを活発化させたいのが狙いですね。
卯岡
シャッフルランチは何でしょう。
永石さん
こちらは、新しい社員が入ってきた際などに、会社側が「この人とこの人」とメンバーを指定してランチに行ってもらう制度ですね。
後藤さん
最初のきっかけが掴めず、なかなか誘えない社員がいるので、「だったら会社が指名するから行ってきてみてよ」と。最初にシャッフルランチできっかけを得て、2度目からはクロスランチができるようになる社員たちもいます。
永石さん
あとは、月に1回オフィスで締め会を、週に1回ミーティングを行っています。
後藤さん
ミーティングは、ニュースを共有する時間を設けているのが特徴です。教育系ニュースはもちろん、それ以外のニュースも共有することで、新たな知識を得られたり、その後に個々で深掘りしたりするきっかけになっていますね。
永石さん
備品と同様、「制度も新しいものがほしいときは言ってね」というスタンスの会社なんです。
後藤さん
いいパフォーマンスを出すために必要なものは、どんどん言ってほしいので。7VALUESの「Love Growth」や「Be Professional」のためには、何が必要で、何を会社に求めるのか、どうリソースを引っ張ってくるのか、を考えてもらいたいと思っています。
卯岡
そうして力を蓄えて、次の段階に前進するんですね。では、そんな「Launch Pad」としてのオフィス、見学させてください!
次の飛躍のため、成長が見えるオフィスに。Libryの新オフィス見学ツアー
「Launch Pad」をコンセプトとしたLibryの新オフィス。プロジェクトを担当した永石さんが重視したのは、「人が増えても一体感のあるチームでいられる場所」「日々の成長が見えてワクワク働ける場所」です。
さっそくエントランスから見学していきましょう!
可動式の壁が空間を仕切る「エントランス」
卯岡
エントランスの白い壁はふたつに分かれているんですね。
後藤さん
この壁の向こう側は、イベントなどもできるフリースペースになっていて、人数に応じてスペースを広げられるよう、この壁は可動式なんです。
卯岡
奥にお酒がずらりと並んでいますが…
後藤さん
このお酒は、移転祝いに贈っていただいたものですね。僕が「日本酒が好きです」と言っていたら、大量の日本酒を差し入れていただきました。とてもありがたいです。。
▲自動販売機は1人1日2本まで無料で。広告スペースはオリジナル。自由に使えると聞き、永石さんがデザインしたのだそう
床一面をグリーンで統一した「執務スペース」
執務スペースの床は、すべてコーポレートカラーのグリーンに統一。「One Teamで働きたい」という想いから、部署の垣根なく働ける環境を作りたかったのが理由です。
卯岡
執務スペースの中央にある本棚がインパクト大ですね!
永石さん
この本棚、芯になっているのは構造上取れない柱なんですよ。内覧時、邪魔だなあと思っていたんですが、本棚で囲めば活用できるんじゃないかと思いました。
後藤さん
費用が割と掛かったので、最初は「え、いる…?」と思ったんですが、作って正解でした。
▲コーポレートカラーにペイントしたロケットも飾られている
卯岡
本は会社で買ったものが並べられているんですか?
後藤さん
そうですね。そのほかにも、社員から欲しい本のリクエストがあれば積極的に会社で買って、そのままここに並べています。7VALUESのひとつ「Love Growth」の精神を具体化したような存在なので、Love Growth本棚と呼ばれているんです。
永石さん
ちなみに、こんなものも並べられています。
卯岡
これは…後藤さんの学生時代のノートですか? ノートのまとめられ方がきれいですね!
後藤さん
そうです、僕の学生時代の努力の証です(笑)。起業の際に、学生時代のノートを探し出してそのまま並べています。
気分を変えられる「リラックススペース」
執務スペースの一角には、靴を脱ぐスペースが。
永石さん
気分転換ができる場所として考えました。
後藤さん
奥に飾ってあるポスターは、永石がデザインして作ったものなんですよ。
卯岡
「ONE TEAM」とありますね!
後藤さん
小さな丸が集まってリブリーのロゴのシルエットを形作っている、まさに「ONE TEAM」を表した彼の力作なんです。
コミュニケーションを生む「ホワイトボード」
Libryのオフィスは、さまざまな場所にホワイトボードを設けています。
永石さん
書きながら気軽にコミュニケーションを取れるよう、人が集まれる場所としてホワイトボードを活用しました。
▲会議室の壁にも一面のホワイトボードが掲げられている
集中したいときにこもれる「集中スペース」
卯岡
一角にあるこのスペースは、集中スペースですか?
永石さん
はい。社員からの要望があったのと、このスペースも柱がどうしても取れなかったため、有効活用しました。
卯岡
囲われている感覚、落ち着いて仕事ができそうです。
0.5歩のイノベーションから、教育業界に変革を
「学校のIT化を促進」と聞くと、今あるものをデジタルツールにすべて置き換えていくイメージを抱く人もいるでしょう。しかし、それで本当にいいのか。これまで培ってきた教え方、学習方法をすべて変えることは、スマートではないだろう。 そう考え生まれたのが、デジタル×アナログのハイブリッド学習ツール「Libry」なのです。
「学校・生徒の双方がスマートに学習できる環境を作る」ことを大切に、サービスの開発・提供を行っているLibry。ミッションに掲げているのは「一人ひとりが自分の可能性を最大限に発揮できる社会をつくる」です。
新オフィスには、Libryが次のステージに上がるための力を蓄えながら、社員個々の成長、ワンチームとしてのパフォーマンスを引き出せる工夫が凝らされていました。教育に、0.5歩のイノベーションを。今後の展開が気になる企業です。