ワークシェアリングとは?メリットや国内外の導入事例

オランダなどのヨーロッパ諸国で失業率を大幅に低下させた実例もあるワークシェアリング。今、日本でも新しい働き方として定着し始めている「ワークシェアリング」についてまとめました。

2018年03月29日

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ワークシェアリングとは

ワークシェアリングとは、そのまま訳すと「仕事の分かち合い」と言う意味です。
雇用を分担し、労働者一人あたりの労働時間を短縮することで、社会全体の雇用者数をより増やそうという政策のことを指します。

 

ジョブシェアリングとの違い

似たような言葉で「ジョブシェアリング」というものがありますが、こちらは多くの人に雇用の機会を与え、多様な人材を確保する「雇用創出型」の形態。通常フルタイム勤務者1名で担当する業務を、2人以上1組になって分担して行うことです。

この際、ただ業務を切り分けるだけでなく、その業務の成果に対する責任は共同で負い、評価・処遇についてもセットで受けることになります。ワークシェアリングの中の1つの形態です。

 

ワークシェアリングの分類

電話をかけるサラリーマン

厚生労働省が発表しているワークシェアリングには4つの類型で「維持」と「創出」について解説されています。

 

1.雇用維持型(緊急避難型)

不況などが原因で企業の業績悪化の際、緊急措置として取られるワークシェアリング。
企業の雇用を維持するために従業員一人当たりの勤務時間を短縮する方法。

 

2.雇用維持型(中高年対策型)

中高年層を対象とした雇用維持対策
中高年層の勤務時間を短縮することで、対象の雇用を維持する方法。

 

3.雇用創出型

様々な短時間労働を組み合わせることで雇用機会を増やす方法。
これにより多くの人に雇用の機会を提供し、失業者の雇用を創出する。

 

4.多様就業対応型

多様な就業形態を導入することにより、企業ニーズと労働者ニーズを相互に充足する方法。
労働者は多様な就業形態から適切な就業形態を選択することができるため、雇用機会の創出と維持に繋がる。

 

ワークシェアリングの目的

仕事をしている男女

ワークシェアリングの元々の目的は、ヨーロッパ圏において「労働者の過労死・失業による自殺の解決方法」として用いられたのが始まりです。
現在では、一人あたりの労働時間を短縮し、仕事を分かち合うことで雇用を創出し、社会全体の雇用者数の増大を計り、一人当たりの賃金を下げてでも雇用を確保することで、失業者を減らし雇用の安定化につなげることが目的とされています。

 

ワークシェアリングをするメリット

電話をかける男性

メリット1:雇用機会の拡大

一人当たりの労働時間や業務負担を小さくすることで、雇用の機会を増やすことができます
例えば、子育て中でフルタイムで働くことが難しい主婦や親の介護をしている社員、労働意欲はあるけれども体力的な問題で働くことのできない定年退職後の社員などは、ワークシェアリングを導入することで仕事を続けやすくなり、雇用機会が拡大することができます。

 

メリット2:優秀な人材の流出を防ぐ

また、メリット1であげたような社員が会社の軸となるような人材であった場合、人材の流出を防ぐこともできます。
雇用機会を拡大するだけでなく、元々勤めている社員の雇用維持や、また新たに優秀な人材を確保することができ、企業にとって失いたくない人材を守ることができます。

 

メリット3:失業対策に繋がる

一人当たりの労働時間を短縮することで、過労を防ぎプライベートの時間を創出し、ストレスをある程度防ぐことができます。
長時間労働が是正されることで、離職率が高かった職場の労働環境が良くなり、離職率の低下に繋がる可能性もあります。

 

メリット4:従業員の満足度向上

プライベートの時間が増えることで、社員の意識を高めることにもつながり、満足度も向上するといわれています。
また、しっかり休むことで、仕事にもやる気がでる気持ちをワークシェアリングによって引き出すこができるのも大きなメリットです。

 

メリット5:社会福祉金の削減

不況の影響によって、各企業が雇用削減や人員削減を進めて行くと、国内に失業者が増加することになります。そうなると、生活保護費や医療費、年金などの生活福祉金が失業率が上がる前よりも大幅に膨れ上がることにも繋がります。
しかし、ワークシェアリングを行い失業率を下げることによって、生活保護費や医療費、年金などの生活福祉金の増加を抑えることができます。

 

メリット6:安定した税金の確保

不況により各企業が人員削減や雇用削減を進めて行くと、税金を比較的多く取りやすい給与所得者の数も減ってしまいます。そうすると、国としては税金の額が減ってしまうことで、公務員への給与も削減せざる負えない状況になってしまうことが問題視されています。

また、「生活福祉金」は、国民の税金で賄われているため、不況による各企業の人員削減や雇用削減による給与所得者の数の減少は、同時にそういった国民へのサポートが上手く機能しなくなる要因にも繋がることになります。
サポートがない失業者はさらに生活が苦しくなり、正規社員になるのも困難になり、それによって、より税金の収集の効率は悪化し、さらにまた国民へのサポートが疎かになるという悪循環に陥るでしょう。しかし、ワークシェアリングによって失業者を減らすことで、そういったことを未然に防ぐ、もしくはそれができなくとも影響を軽減することができます。

 

メリット7:生産性の向上

一人当たりの労働時間や仕事量を減らすことで生産性が向上するというメリットもあります。
だらだらと長時間働くよりも、短時間で仕事が完了するように考えて動くことで、結果的に生産性が上がるという考え方です。

 

ワークシェアリングをするデメリット

デメリット1:企業の雇用コストの増加

一人当たりの労働時間を減らしたり、新たに雇用を増やすことで、企業にとっては賃金にかかる費用が増えることになります。つまり、よりコストがかかり苦しい状況になってしまいます。
ましてや、企業側としては不況の中人員削減や雇用削減でコストを抑えておきたいところであるにもかかわらず、むしろ新たな雇用を生み出し、経費を増やすというのは、さらなる赤字を招き、最悪の場合、倒産の危機に陥るリスクもあげられるでしょう。

 

デメリット2:低賃金労働者増加の可能性

ワークシェアリングを推進する際には、短時間労働者などパートタイマーの受け入れなど多様性のある雇用形態で従業員を獲得する必要です。
この際、価格格差が是正されないまま多様化が進められれば、低賃金労働者が増加する可能性が出てきます。
失業者の割合が減って労働人口は増えたのに、従業員の平均賃金が上がらないという事態になりかねないのは課題点です。

 

デメリット3:雇用の格差

正社員とパートでは所得に差があります。この状況のままパートの雇用だけが増えるようなことがあれば、雇用形態による格差がますます広がる可能性もあります。

 

国内版・ワークシェアリングの導入事例

ワークシェアリングのポイント

TOWA

半導体メーカーの「TOWA」がワークシェアリングに取り組んだ背景は、2000年ごろから半導体業界が不況に見舞われ、その煽りから売り上げが激減したことが挙げられます。
そこでTOWAはワークシェアリングを実施し、従業員の稼働日を週4日にすることで雇用の維持を図りました。
こうすることで従業員の給与は多少下がることになったが、雇用が維持されたことで失業せずに済み助かった人もいるといいます。

 

日野自動車

自動車メーカー「日野自動車」は、従業員の労働時間を短縮することにより、その分の賃金をカットし、雇用の維持を試みました。
これは日本におけるワークシェアリングの1つのモデルとして大きく取り上げられることになり、注目を集めましたが、賃金がカットされる部分に注視され、また効果も今ひとつだったようです。
原因としては、短時間勤務になり給与削減されることで生活に支障が出る社員がいて、社内展開が思うように進まなかったことが挙げられます。

現状の日本では、ワークシェアリングによってある程度機能したと言える事例も見られますが、雇用維持を目的としたワークシェアリングはほとんど機能できなかったというのが実情のようです。

 

海外版・ワークシェアリングの導入事例

オランダ

オランダでは、1980年前半にオランダ病と言われるほどの大不況に見舞われ、これを克服するために1982年、ワッセナー合意に基づき労働法が改正されました。
その後、労働時間調整法の制定により、時短によるワークシェアリングが一気に広まっていきました。
のちの1996年には、フルタイムの労働者とパートタイムの労働者の時給や福利厚生などの条件に格差をつけることを禁止する、同一労働条件が取り決められた。これにより、労働者自身が自発的にフルタイムかパートタイムを選ぶことができるようになり、自分で労働時間を決められるようになりました。
これらの効果が成功し、失業率は1983年の11.9%から2001年には2.7%にまで低下しました。
これらの事例はワークシェアリングが大きな効果を発揮した事例として「オランダ・モデル」と呼ばれている。

 

フランス

フランスでは、1982年に労働改正法により、法定労働時間の1時間短縮を行なったが、これは短縮時間が少ないことから実際にはあまり効果は得られなかったようです。
雇用状態の不況が続く中で、2000年にオブリ法・第二次法の成立によって、法定労働時間を週35時間と定め、政府主導の施策であったこともあり、早期導入企業には社会保障の負担への優遇をするなどを行ない、導入を促進させていきました。

 

ドイツ

ドイツでは、1980年代から自動車メーカーや金属産業を中心に、失業者を出さないことを目的とした労働時間の短縮によるワークシェアリングが実施されました。
これは労使協約によって行われたもので、一時的な業績悪化による緊急対応型と位置付けられます。
政策としては2001年にパートタイム労働及び有期労働契約法が定められ、同一労働同一賃金やパートへの差別の禁止を規定しています。

 

まとめ

ワークシェアリングにはいろんなメリットやデメリットが存在しています。
そのため、その時々の社会的状況や企業ごとの経営状況を見極めた上で決定することが重要になるでしょう。

近年日本では働き方改革として、企業の協力のもと新しい働き方が導入されつつありますが、これはまさにワークシェアリングを推進するものであり、今よりも労働環境が改善され、全ての人が働きやすい社会に近づいていくことも考えられます。
そうなるためには経営者だけでなく、労働者もワークシェアリングについて学び、理解する必要があると言えるでしょう。

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