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オフィスビルのオーナーとは?タイプ別オーナーの種類と特徴も解説

現在、企業がオフィスを構えるにあたり主流なのはどこかの物件に「入居」し、その賃料を支払うケースです。

当然、その家賃を受け取る大家(オーナー)が存在するのですが、それがいったい誰なのか、住居の賃貸物件と比べ、見えにくい場合が少なくありません。

そこで今回はオフィスビルのオーナーはどのような人、または法人なのか大きく分けたパターン別に説明し、それぞれのメリット、デメリットやさらにオフィスへの入居に関わる別の登場人物についても紹介していきます。

オフィスビルのオーナーは大きく分けると3種類

オフィスビルのオーナーには大きく分けると「個人」「不動産を本業にしている法人」「副業で不動産を運用している法人」の3パターンに分けることができます。

それぞれ、所有してる物件の規模や性質なども異なってきます。まずは、それぞれの簡単な特徴についてまとめていきます。

①個人のビルオーナー


まずは個人のオーナーがビルを所有しているケースが考えられます。

個人の不動産投資の中にも、ワンルームマンションの区分投資からアパートの一棟所有、さらに広義にはコインランドリーといったものまで様々なタイプが考えられます。その中でも主に法人向けに、オフィスとして貸し出しているパターンの投資を行っているケースがこういった分類にあたります。

②不動産のプロフェッショナルの法人オーナー


次に不動産の所有者が個人ではなく法人であるといったケースも考えられますが、その中でも不動産の運用を本業のビジネスとして扱っている法人がオーナーというケースが考えられます。

不動産の運用そのものを主な業務としているようなケースもありますが、不動産の開発から運用、さらには管理までトータルで一社、もしくはグループ会社で行ってるようなケースも多くあります。

③「副業」で不動産を運用している法人オーナー


同じく不動産のオーナーが法人であるケースでも、その法人は不動産とは別のビジネスを本業で持っており、いわば「副業」といった位置づけで不動産の運用を行っていることもあります。

資産として土地を所有しているような企業や、資金が潤沢にある企業が専ら不動産収益をあげる目的でオフィスビルを所有している、というケースや自社ビルとして活用しつつ、余剰スペースを他社に貸し出すことで収益を上げているようなケースがあります。

個人のビルオーナー

まずは、オフィスビルを個人が所有しているケースについて説明します。

扱っている物件の規模


個人のオーナーが扱っているオフィスビルの規模は基本的には小規模です。個人が所有している土地にオフィスビルを建築したり、ある程度の予算を扱える個人の不動産投資家が安定した家賃収入を得るべく法人向けの不動産経営を始めたりといったケースが考えられますが、いずれにせよ法人が取り扱う物件と比べると小規模なケースが大半です。

個人所有のビルにテナント入居している法人は飲食店など店舗型の業態の法人が比較的多いですが、小規模な法人がオフィス・事務所用途として個人所有のビルに入居しているケースも十分に考えられます。

メリット

個人のビルオーナーの扱っている物件のメリットとしては以下のようなものを挙げることができます。

・家賃が比較的安い傾向にある

法人が所有している物件と比べると、そもそもの物件価格の特性から大きさや立地などの面では不利になりやすい個人所有の物件ですが、その分家賃としては比較的安く抑えられる傾向にあります。

小規模な法人がビジネスを行うエリアにこだわる場合(例えば「東京都中央区」などの肩書が欲しい場合)、予算を抑えながら入居できる物件を探すにあたっては一つの指標となりえます。

・融通が利きやすいこともある

個人が所有している物件の場合、良くも悪くもオーナー個人の意向が契約や運用に反映されやすい面があります。

オーナーとの合意が取れれば、柔軟な価格交渉に応じることが可能であったり、オフィスの改装なども寛容に許可してもらえる可能性もあります。

・敷金が抑えられる傾向にある

敷金は一般的な居住用物件の契約でも発生することがある入居の際に発生する初期費用です。

家賃の滞納などがなければ原則として解約後に現状回復費用を差し引いて返還されますが、最初にまとめて発生する一時費用であり、大規模なオフィスでは家賃12ヵ月分といった多額の費用が発生するケースもあります。

個人オーナーのビルの場合、敷金は3か月程度から多くても6ヵ月程度のケースが多く、特にスタートしたばかりで資金に余裕のない法人にとっては有難いものといえます。

デメリット

一方でデメリットとして考えられるのは以下のようなケースです。

・管理が不十分なケースがある

個人オーナーの場合、ビルの管理は管理会社に委託されているケースが大半です。しかし、支出にシビアなオーナーの場合、管理費を節約するためにいい加減な管理会社に任せて放置していたり、管理会社をつけない「自主管理」を選択しつつ、十分な管理を行わないといったケースも考えられます。

管理が不十分であると、設備の老朽化の悪影響を受けたり清掃が行き届いていないことが訪問者への悪印象に繋がるような懸念もされます。

・オーナーの意向で融通が利かないことがある

個人の所有物件はオーナーの意向が強いため、場合によっては非常に融通がきかず、思い通りのオフィス運用ができないケースもあります。

実際にあった事例ではテナント入居している企業がコスト削減のために通信回線を切り替えることを検討したところ、オーナーが切り替え先の企業が嫌いだという理由で回線の工事の立ち入りを許可せず、断念されたケースもあります。

とりわけ、個人オーナーとの契約にあたっては仲介業者が入ることが多く、入居にあたっての条件の合意が不十分であることにより、後からトラブルになるケースも少なくありません。

・礼金が発生するケースも少なくない

敷金は抑えられる傾向にある個人オーナーの物件ですが、礼金が発生するケースも少なくありません(1ヵ月~3ヵ月程度)。敷金とあわせても初期費用としての支払いは抑えられる傾向にあるものの、礼金は完全に支払うと戻ってこない費用であり、長期的な収支としてはマイナスに作用します。

不動産のプロフェッショナルの法人ビルオーナー

続いて、不動産のプロフェッショナルともいえる法人が所有しているオフィスビルに関してです。

扱っている物件の規模

取り扱っている物件の規模は基本的には大きなものが目立ちます。

企画から開発、運用まで一つのグループで行うようなプロジェクトであるため、必然的に案件の規模も大きくなりがちです。

例えば、2007年開業、地下5階・地上54階の膨大な敷地の中で、商業施設・オフィス・ホテル、さらには病院まで展開する総合施設「東京ミッドタウン」のオーナーは不動産ディベロッパーでも最大手の一つである三井不動産ですが、東京ミッドタウンの管理、運用を行っているのは三井不動産の100%子会社、東京ミッドタウンマネジメント株式会社です。

また、2018年に開業した、地下4階・地上35階建の「東京ミッドタウン日比谷」はオーナーである三井不動産自身が管理、運用を行っています。

2022年秋に開業予定の東京ミッドタウン八重洲においても、オーナーとなる三井不動産が直接、もしくは子会社が管理、運用を行うことが想定されます。

メリット

プロフェッショナルの法人がオーナーである物件のメリットは全体としての安心感が挙げられます。

管理・運営を行っているのも直接、もしくはグループ会社であるケースが多く、契約から入居に至るまで、オーナーや管理会社の知見やオペレーションの能力に起因するトラブルが想定されにくい点は入居する側からすると大きな魅力と考えられます。

また、そういった物件では外部の仲介業者が入ってくるケースは少なく、契約時の意思確認が不十分であることに伴うトラブルも比較的起こりにくいこともメリットとして挙げられます。

デメリット

一方で、上記のような物件はオーナー側の立場が相対的に強く、ケースにはよるものの金銭面での交渉がしにくいことや、オペレーションがしっかりしている分、様々な面で融通を利かせてもらうことも難しい面が目立ちます。

また、上記のような物件はそもそも条件が強気で入居のハードルが高いといった面も挙げられます。

「副業」の法人ビルオーナー

最後に、法人がいわば「副業」としてビルのオーナーをしている事例について解説していきます。

扱っている物件の規模

法人のビルオーナーが扱っている物件は小さなオフィスビル1つを所有しているケースから大規模なオフィスビルを全国各地に所有しているケースまで幅広く存在します。

前者は小さな土地を所有している、それほど大きくない規模の法人がオフィスビルを建て、自社で利用しない部分について他の法人にテナント物件として貸し出すことで収入を得ているようなケースを想定するとわかりやすいでしょうか?

大手企業の中にも、大規模な自社ビルで上記のような不動産運用を行い、多額の家賃収入を得ている事例もあります。

例えば、全国紙である毎日新聞社の本社は東京都千代田区にあるパレスサイドビルディングですが、このビルの所有者である毎日新聞社のメインのオフィスであるのは当然ながらグループ会社も含め別の法人も数多く入居しています。

また、低層階には多数の飲食店が並び、オフィスワーカーのランチを中心とした需要を満たすだけでなく、オーナーの重要な収入源にもなっています。

富国生命保険相互会社はその名の通り生命保険業を中心事業として扱っていますが企業の中に「不動産事業部」という不動産運用を専門的に扱う事業部が存在します。

本社のある地上29階地下5階建の富国生命ビルや、地上28階地下4階建の大阪富国生命ビルのような大規模な商業ビルをはじめし、全国に不動産を持ち、自社の支店オフィスのみならず、各エリアの好立地な土地に自社ビルを所有し運用しています。

メリット

「副業」で不動産を扱っているオーナーの物件のメリットは、ケースバイケースではあるものの、安心感と柔軟性のバランスがとりやすいことが挙げられます。

不動産専業でない法人が管理する物件の場合、ある程度信頼のおける管理会社に委託されてるケースが多く、通常の運用におけるトラブルのリスクは比較的低いと言えるでしょう。

その上で、グループで管理まで一貫して行っているオーナーほどに立場が強くもないケースが多く、ある程度入居者の希望が通る余地がある可能性があります。

デメリット

一方で、上記物件のオーナーのデメリットとして柔軟性や安心感のどちらも完全には担保されないことが挙げられます。

また、個人所有のケースと同様、契約時に仲介業者が入ることにより、後からトラブルになるリスクがあることが挙げられます。

オーナー以外でオフィスの契約に絡んでくる業者

オフィスビルのオーナーが大きく分けると3種類であることがご理解いただけたと思いますが、オフィスの契約、運用に関わってくるのはオーナーだけではありません。

賃貸オフィスに入居してから退去するまでに関わってくる主な業者やその特徴などについて説明していきます。

仲介業者

仲介会社はオーナーと賃貸契約を結ぶにあたり、その契約の仲介を行う業者です。一般的な居住用物件の場合でもしばしば登場するため、比較的イメージしやすいのではないでしょうか?

仲介業者はどのような物件でも必ず存在するわけではなく、中には仲介を通さずにオーナーと直接契約を結ぶことも可能ですが、現状の実態としてはほとんどのオーナーが仲介業者に仲介を依頼しています。

仲介業者は幅広く世の中の物件やオーナーに対してアクセスすることができます。入居希望者が条件に合う物件を探す際にも、希望を伝えることにより複数の物件の中から希望に近い条件を選定してくれることを期待できます。

また、不動産物件の契約に関しても、専門的に扱っていることからスムーズに行われると考えられます。

一方で相場として賃料一か月分の仲介手数料が発生するほか、「施工」といった居住用の物件にはない事項が絡んでくることから、むしろ間に一社入ることにより説明の有無などでトラブルになるケースも存在します。

管理会社

管理会社は不動産が運用されていく中でその目的を果たすために物件を維持するために適切な管理を行うための業者です。

日常の清掃や簡易な修繕、セキュリティ管理から、大規模な修繕計画までその物件を運用していく上で必要な事項の計画や必要な業者への発注といった運用を一貫して行う役目を持ちます。

管理会社も居住用の物件においてもごく一般的に存在する業態です。オーナーが普段の管理や修繕計画を行うようなケースも考えられなくはないですが、運用としては大半のケースでは管理会社が存在します。

施工業者

一般的な住居の賃貸契約と大きく変わってくるのが、施工業者の存在です。居住用の賃貸物件と比較し、オフィス物件の場合は入居者の希望によって、賃貸契約した物件にある程度の施工が行えるケースも少なくありません。

作業スペースとしてのごく簡単な内装であれば、ほとんど施工が行われないようなケースも考えられます。一方で中には社内外に会社のブランディングを行うためにエントランスや会議室にこだわった施工を行ったり、開放感を出すために天井のパネルを外す「スケルトン工事」を行うなど大規模な内装の施工を行う企業もあります。

入居時や契約中に施工するケースがあるほか、契約を終了し退去する際には再度内装工事を行い、契約前の状態に戻す必要があります。(原状回復)

入居前や入居中など、入居者の意思で行う施工に関しては原則として入居者側で業者を選定できますが、原状回復工事についてはオーナー側が指定する業者で発注する必要があるケースも少なくないため、注意が必要です。

まとめ

オフィスの物件を所有しているオーナーの種類やその違い、さらにオーナー以外にオフィスの入居に関わってくる事業者についても解説を行いました。

オフィスの物件のオーナーは「個人」、「不動産が本業でない法人」、「不動産が本業の法人」に分類され、順番に契約の自由度は高くなる一方で、トラブルになる可能性も孕んでいることをあらかじめ理解しておく必要があります。

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