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オフィスの建ぺい率・容積率を気にしなければならないケースとは?

通常、賃貸契約を行うオフィスの「坪数」は重要にせよ、物件全体の面積などについて考える機会はあまりありません。

しかし、物件を建てる際の制約となる数字、具体的には「建ぺい率」や「容積率」は場合によっては入居者側のビルの利用にも影響が出る可能性もあります。

今回はあまり気にされることがないオフィスの建ぺい率、容積率などの建築基準について、基礎的な部分から解説を行うとともに、そういった数字が問題となりうる「違法建築」や「既存不適格」についても解説し、どういった問題が生じうるかや、その対策についても触れていきます。

オフィスの契約に関して思わぬトラブルを回避することにも直結する内容なので、ぜひご一読ください。

建物を建てる際には様々な制約がかかる

世の中には超高層ビルやデザイン性に優れたビルなども数多く存在します。しかし、国内に建物を造る際には様々な制約がかかってきます。

理由としては、無制限に建物の造成を許可していると災害時に適切な避難路や対策のためのルートが確保できなかったり、景観が破壊されたり、周辺の物件に対して悪影響が及ぼされたりといったことが考えられるためです。

もしくは、特定のエリアに無制限に収容率の高い集合住宅が立ち並んだ場合、人口の移動が起き、特定のエリアへの人口集中などの問題が起きる可能性もあります。

そこで、現在建物を造成する際には建築基準法をはじめとし、エリアによっては都市計画法、農地法など様々な法律や条例の制限を行うことで、国民の生命の安全を守るとともに、国土という限られた資源を有効かつ適切にしようできるよう、調整が行われています。

一方で、超高層ビルを建てる際などは特定のエリアにおいて例外的な措置を適用するなどの柔軟な対応を取ることにより、全体のバランスがとられています。

建ぺい率とは?

建ぺい率とは敷地面積(土地全体の面積)に占める建築面積(建物の面積)の割合のことを指します。

具体的にどのように計算するか、なぜこのような規定が定められているか、解説していきます。

建ぺい率の計算方法

建ぺい率=建築面積 / 敷地面積 ×100(%)

で表すことができます。

例えば200坪の敷地面積がある土地に100坪の建物を建てた場合の建ぺい率は50%です。

敷地面積は敷地全体の面積なので迷いようがありませんが、建築面積は「壁・柱の中心線で囲まれた部分」として計算を行います。

また、基本的には建物の面積のみを考えればよいのですが、バルコニー、屋根付きのウッドデッキ、駐車場なども条件によっては建築面積の中に加算されます。(壁で囲まれた駐車場である「ガレージ」は必ず建築面積に含まれますが、屋根と柱のみの「カーポート」であれば基本的には含まれません。)

建ぺい率が定められている理由

建ぺい率が定めらている理由は「防災」「景観」「日照や通気」などの観点を考慮したものです。

最も重要なのは防災の観点です。例えば土地一杯に敷き詰められた建物が並んでいた場合、火災時に延焼しやすいことや、退避のためのスペースが確保しにくいこと、さらに消防などの活動に差し支えがでることなどから国民の生命に関わる部分であり、建築基準法という法律で厳格な制限を行っています。

また、敷地面積いっぱいの建物が並んでいる場合、万が一の災害時のことは抜きにしても、単純に景観を損なう点や、周辺の日照や風通しに影響がでる可能性がある点からも、土地一杯に無制限に建物を建築することは望ましくなく、制限が加えられています。

建ぺい率の上限は?「用途地域」により異なる

建ぺい率は全国一律というわけではなく、日本の土地を用途別に13種類に分類した「用途地域」の区分によって、さらにその中でも自治体の指定によって異なります。

例えば、居住用の建物を建築することがメインのエリア(第一種低層住居専用地域、第一種住居地域など)では最低で30%、最大で60%が上限です。オフィスなど様々な建物が建築できる近隣商業地域、商業地域などでは80%と、上限の規制が緩和されています。

容積率とは?建ぺい率と対になる「高さ」の制限

建ぺい率とセットで出てくる建築基準法による建築制限に容積率というものがあります。

容積率とは、敷地面積(土地全体の面積)に占める「建物の床全体の割合」のことを指します。つまり2階建て、3階建てといった複数階のフロアがある建物の場合、床の面積の総和は必然的に広くなっていくため容積率の制限を受けやすくなります。

容積率の計算方法

容積率=建物の床の面積の総和 / 敷地面積 ×100(%)

で表すことができます。

例えば、200坪の土地に、1階が100坪、2階が50坪の建物を建築した場合、容積率は

(100+50) / 200×100=75%

です。

仮にこの土地の容積率の上限が100%だった場合、3階の増築を行うにあたって認められる床面積の広さは上限の200坪(土地200坪×100%)から1階と2階の面積(100坪+50坪)を引いた50坪という形です。

基本的には建ぺい率と同様の考え方をしますが、容積率には前面道路制限という制限が付加されており、

「敷地に面している道路の幅(幅員)が12m未満である場合、その幅員に定数(地域により異なる)をかけた数字の方が小さいならば、その数字が容積率の上限になる」

というルールの制約も受けるため注意が必要です。

容積率が定められている理由

容積率も建築物の大きさに関する制限ですが、容積率の趣旨は「高さ」を制限することにあります。

建物の階数が増えると、自ずと容積率の制限となる対象の「床面積」も増えていきます。そのため、必然的に建物の高さに制限がかかっていきます。

低層の戸建て住宅が立ち並ぶ住宅街に突如高層マンションができた場合、周辺の家の日商は当然大きな影響を受けます。その区域全体の景観としても、損なわれることが想像できます。

加えて、容積率はその区域の「人口」を抑えることも目的の一つです。マンションやアパートなどの集合住宅が無計画に一つのエリアに集中すると、人口が急増し混乱を招きます。そういった事態も、容積率を制限することにより回避することができます。

容積率の上限は用途地域により大きく差がある。

容積率は低層の住宅専用地域で50%~200%、工場用途中心の地域(準工業地域・高漁船用地域など)や、近隣住民の利便性を重視した近隣商業地域などで200~400%、オフィス街などを含む商業地域で、200%から最大1300%です。

住宅地特に低層の戸建て住宅の多いエリアでは、近隣への日照を考慮し容積率は低めに設定されている一方、商業地域では高層の商業ビルの需要も高いことから容積率が高めに設定されています。

超高層ビルが建てられる緩和規定

最大で1300%の容積率では、15階建て以上の建物を建築可能であり、大半の建築物では十分な容積率を有していると言えます。

一方で、日本の国内には明らかにそれ以上の高層ビル・超高層ビルが数えきれないくらいに存在するのも事実です。

実際、現存する建物の中で最大の容積率をもつのは大阪の新梅田阪急ビル(1800%)、次いで東京の新丸の内ビルディング(1760%)など、1300%を大幅に超過した建物も存在します。2027年完成予定で、日本最大の超高層ビルとなる予定の「トーチタワー」(東京都千代田区大手町)は容積率が1860%となる予定です。

そういった従来の基準を大幅に越える建物の存在を許すのが高度利用地区、特定街区、特定容積率適用地区といった「特殊地区」における容積率の緩和です。中でも、特例容積率適用地区では区域内に定められている容積率の内、未使用のものを別の建設敷地に移転させることができます。

現在、国内の特例容積率適用地区としては東京都千代田区が挙げられ、東京駅の残余容積率は先述の新丸の内ビルディングをはじめとする丸の内の超高層ビルに移されている事例があります。

この残余容積率を「空中権」として販売するような考え方は日本では東京駅と丸の内周辺の一例のみですが、アメリカでは以前より行われており、今後日本でも同様の考え方が浸透し、超高層ビルが建てられるような可能性もあるかもしれません。

建築基準に適さない、違法建築・既存不適格物件とは?

超高層ビルなど、一般的な建ぺい率、容積率をオーバーしていても緩和規定により建築が許可されている建物がある一方で、こういった建築基準法に抵触する建築も少なくありません。

現在の基準と照らし合わせて、適合していない「違法建築」や「既存不適格」の建物について解説していきます。

違法建築

違法建築とは、その名の通り建築基準法やその他条例に抵触した違法状態の建築物のことを指します。

具体的には、

・無許可、もしくは許可内容を超えた増改築を行った結果、建ぺい率や容積率が超過してしまっている状態
・許可を得た内容とは異なる建物を建築し、建ぺい率や容積率が法律の範囲を超えてしまったり、仕様や構造が許可内容と異なっている状態
・建築物として許可を得た用途とは別の用途で使用している

などといった物件が「違法建築」と認定されます。

既存不適格

既存不適格とは、建築時は当時の法律を遵守して建造されたが、現在敷かれている法律の基準と照らし合わせると不適格となってしまっている物件のことを指します。

建ぺい率をはじめとする、その地域の建物に対する規制は未来永劫固定されているものではなく、その状況に応じて変更されることがあります。

規制が厳しくなった結果、その基準値に抵触してしまった建築物が「既存不適格」です。

既存不適格は違法建築とは区別された扱いを受けられますが、建築時には当時の法律に適合していたことを示す検査済証を有していることが必要です。

違法建築物件・既存不適格のデメリットや罰則

違法建築は故意、もしくは過失で法律に抵触している建築物であるため、行政からの是正勧告を受けることがあり、かつそれを無視することは罰則にもつながります。

一方、既存不適格は法改正の結果法に抵触してしまっている状態であることから基本的には是正勧告をうけることはありませんが、消防法に抵触するなど近隣の安全を脅かしかねない場合には是正勧告を受けるケースがあります。

建て替え・増改築を行う際には既存の基準に適合するよう義務づけられていますが、既存不適格の場合は改築後の建物が現在の基準に沿っていれば問題ありません。

一方、違法建築の場合は既存の法律に適合する水準に減築等の措置を取らなければそもそも増改築を行う許可が得られません。

また、売買を行う場合既存不適格物件に対しては金融機関の判断によっては融資を受けられる可能性もありますが、違法建築の場合はそもそも融資の許可を得ることはできません。

違法建築・既存不適格物件をオフィスに利用するリスク

違法建築や既存不適格の物件は程度の違いはあれ、現在の法律・条例に適合していない部分に制約を受けます。

オフィス用途として利用する場合、物件を購入し、オフィスとして利用する場合とテナントで入居して利用する場合に場合分けして説明します。

ケース①購入を検討している場合

まずオフィス用途で利用する物件を購入しようとしている場合です。まず、前提として仮に違法建築であっても、所有だけでなく、売買自体も違法とはなりません。既存不適格の場合も、売買することは問題になりません。

いずれの場合でも、周辺の物件の相場と比較し非常に安価に入手できるため、一見経済的に見えるかもしれません。

しかし、違法建築の場合は購入時に融資を受けることが非常に難しく、既存不適格の場合も融資を得るハードルは一般的な物件と比べると難しい傾向にあります。

既存不適格の場合は消防法などに抵触していなければ是正の勧告を受けることはありませんが、違法建築の場合は是正の勧告を受け、罰則のリスクもあります。

度合いの差はあれ、増築やリフォーム、リノベーションを行う場合に現在の基準に適合させるよう制約がある点もデメリットとして挙げられます。

なお、いずれの場合でも売買契約時に売主の側に違法建築、もしくは既存不適格である旨、およびその抵触する部分の告知の義務があります。

ケース②テナントとして入居を検討している場合

違法建築、もしくは既存不適格の物件のオフィス利用といってもテナントとして賃貸契約する場合であれば、購入する場合と比較すると負うリスクはかなり抑えられます。

また、そういった物件はテナントとしても入居を避けられがちな傾向があるため相場と比べて抑えられた賃料で契約できることも期待できます。

しかし、違法建築の場合最悪のケースでは使用停止、立ち退きなどの命令が出ることもあり、業務の利用に支障が出るケースもあります。

また、いずれのケースもリフォーム・リノベーションに大幅な制約がかかっているため、自由なオフィスづくりが難しい点も、デメリットとして挙げられます。

まとめ

建ぺい率、容積率をはじめとする建築基準はその地域における安全や景観、周辺環境を守るための規定です。

特例容積率が適用されているなどの例外は別として、法律に抵触している物件は仮に安く購入・賃貸契約できても、オフィスの改装に制約がかかるケースや場合によっては物件そのものが使えなくなってしまうリスクがあります。

後から問題になることを避けるためにも、該当するような物件は基本的にはそもそも選択しないと同時に、そういった点も含めてオーナーと直接やり取りの上で確認・交渉することがあらゆるトラブルの回避にも繋がります。

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