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オフィスインタビュー
vol.234 株式会社データドック

世界でも稀有なIT機器を雪で冷却する「寒冷地型データセンター」。カフェ風の内装にもこだわりがあるデータドックのオフィス

世界中で盛り上がりを見せているSDGsやエコ。日本でも、さまざまな企業が取り組みを行っています。

株式会社データドックが手掛けているのは、日本では珍しい寒冷地型データセンター事業です。データセンターとは、顧客のサーバーやストレージといったサービス提供に欠かせないIT機器を預かり、顧客がサービスを提供する支援を行う場所のこと。電気、水道、ガスと並ぶ必要不可欠な社会インフラといっても過言ではありません。その特性上、センターにまず求められるのは頑強なセキュリティです。そのため、あえて目立たない外装にすることが業界の常識であり、内装も他業界のオフィスと比べるとあまり力を入れないことが一般的。しかし、データドックのデータセンターの内装は、まるでカフェのようなおしゃれさが特徴です。

また、データドックのデータセンターの特徴は、立地にもあります。万一のときの駆けつけ業務を想定し、地方にセンターを置くことへの懸念もまだ根強いなか、同社がデータセンターを設けたのは、新潟・長岡です。寒冷地型データセンターにこだわる理由や、内装へのこだわりについて、宇佐美さん、山本さんにお話をうかがいました。

宇佐美 浩一さん (うさみ・こういち)
リクルートやIT系出版社で営業/制作/編集長など歴任後、2007年ネット広告代理店の株式会社メディックスに取締役として入社。
2016年に新規事業コンテストから生まれた株式会社データドックを代表取締役として創業。
これからのデジタル社会と持続可能な世の中の創出のために日々奮闘中。
山本 祐二さん (やまもと・ゆうじ)
ネット広告代理店在籍中に新規事業としてデータマネージメントに特化したデータセンター事業を起案(現データドック)更にデータセンターの余熱を活用して養殖と農業を行う新会社(株)プラントフォームを起業。

東京・新潟の2拠点。寒冷地型データセンターは日本では稀有の存在

uoka

卯岡

こぢんまりとしながらも、カフェのようなおしゃれな空間ですね。データドックさんのオフィスは、ここ東京のほか、新潟にもあるとお聞きしました。

宇佐美さん

ええ。管理本部と営業が在籍しているのが東京事務所で、新潟には当社の事業であるデータセンターがございます。データセンター事業の仕事は、顧客のサーバー機器などを管理し、運用するためのサービスを提供すること。当社では、そのデータセンターを事務所と切り離して新潟に置いているわけですね。

山本さん

東京事務所は、元は親会社のオフィスの一角にあったのですが、親会社が移転することになったタイミングで、神田エリアで独立したんです。

データセンターのある新潟・長岡にすぐに行けるよう、新幹線の発着駅である東京駅に近い場所、さらに賃料の相場の兼ね合いも考え、神田に落ち着きました。

宇佐美さん

データを取り扱っている官公庁や企業の多くは、東京に拠点を構えているため、データセンターもそのほとんどが東京にあります。我々のスタイルは「寒冷地型データセンター事業」と呼んでいますね。ただ地方に作るのではなく、寒冷地に作るのが特徴なんです。

山本さん

だから、新潟のなかでも冬に雪が多く積もる場所である長岡を選んでいます。


▲冬の新潟データセンター

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卯岡

寒いところのほうがいいのですか?

宇佐美さん

データセンターでは、放熱する機械を冷やす冷却装置にかなりの電気を使うんです。冷やさないまま放っておくと、室温は50度を超え、機械も壊れてしまいます。寒冷地では、外気や雪を活用できるため、電気を活用した通常の空調設備をフル稼働させずに済むんです。

山本さん

世界的にも、データセンターのような場所で使う電気は自然エネルギーで賄おうという流れがトレンドになっています。

宇佐美さん

Googleは、100%再生エネルギーでやろうと言っていますしね。そうした背景もあり、当社では雪が積もり、外気が冷たい新潟を選びました。

山本さん

秋口から冬場は冷涼な外気を活用して冷やし、春先から夏場にかけては、冬の間に貯めておいた雪を冷却に使っています。通年通してエネルギーをリサイクル資源で賄えているんです。


▲冷却用の雪を用意するための様子を見せていただいた

uoka

卯岡

世界では寒冷地データセンターがトレンドになっているとのことですが、日本にはデータドックさん以外にこうした取り組みを行われている会社はないのですか?

宇佐美さん

当社は国内2例目です。ただし、1例目のデータセンターは、外気を活用できる期間が意外に長かったことから雪の活用を止めてしまったと聞いておりますので、稼働しているのは当社だけのようです。

uoka

卯岡

たった2例しかない上、現状では実質データドックさんだけなのですね。

宇佐美さん

ええ。どうしても、「地方でやる」デメリットのほうを危惧してしまうんですよ。

山本さん

よく耳にするデメリットは、物理的距離ですね。「もし何か起こったときに、東京からすぐ駆けつけられない」「通信遅延が起こるのではないか」といった不安が未だに根強い。

宇佐美さん

ちなみに、当社のお客様も東京の会社が多いですが、これまでにトラブルが起きた事例はないですね。

山本さん

また、東京よりも土地に余裕のある場所だからこそできることもあります。当社では、雪を冷却に使って溶けた水でさらなるエネルギーのリサイクルを目指し、養殖と水耕栽培も行っているんです。

uoka

卯岡

詳しくお聞かせください。

山本さん

データセンターではIT機器から出る熱で暖気が発生しますが、首都圏ではその暖気を外に捨てるしか手がないのが現状です。そこで、当社では土地に余裕がある地方型データセンターという利点を活かし、植物工場を隣の敷地に建てることで暖気を再利用しています。


▲水耕栽培の様子

山本さん

さらに、暖気だけでなく、寒冷地の特性も活かして、雪エネルギーとして活用した冷水も再利用しています。養殖に使った水は、排泄物が植物の栄養になるため利用でき、植物がまた水を綺麗にする。こうした栽培方法を、「アクアポニックス」と呼びます。

宇佐美さん

この仕組みは、植物が栄養素を吸うことで自然のフィルターとなり、水が綺麗になるので、延々と水を循環させられるエコな仕組みですね。野菜はレタス、バジル、イチゴ、ワサビなどを栽培していて、魚の方はキャビアが採れるチョウザメを養殖しています。


▲地元の道の駅のほか、都内の一部飲食店に卸されている

uoka

卯岡

どちらも高級食材ですね。

山本さん

新潟のほか、都内の一部レストランで食材としてご利用いただいています。

「最先端」を目指す会社の姿勢を表すため、データセンターの内装にもこだわりを

uoka

卯岡

新潟にあるデータセンターは、内装にもこだわっていらっしゃるのでしょうか。


▲実際にデータを取り扱う場所は、ご覧のようにシンプル

山本さん

はい。むしろ、新潟データセンターのほうがスペースが広い分、東京事務所よりもおしゃれですよ。

宇佐美さん

一般的なデータセンターのイメージが、陰と陽という言葉で表すとすると陰なんです。セキュリティ上の理由で窓を付けられない等の制約もあって、業界的にデザインに気を遣う場所ではないとの認識を覆したかった。

uoka

卯岡

それは、採用を見据えてのことですか?

山本さん

そうですね。若い人たちにも入ってきてもらいたいと思いまして。事業内容としても、従来のデータセンターとしての「データを預かる」いわゆる場所貸しビジネスのようなものではなく、ゲノム解析など、最先端ビジネスを行うことを目指しているんです。それをデザインで伝えたい想いもありました。

uoka

卯岡

では、あらためて新潟データセンターのお話を、お写真とともにお聞かせください!

クリエイティブな仕事ができるオフィスに相応しい内装を。データドックのオフィス紹介

新潟データセンターを作る際に意識したのは、「クリエイティブな仕事ができる、リラックスできるカフェのような場所を作ること」だと語ってくれた山本さん。

加えて、エネルギーのリサイクルと同様、「エコ」にも配慮されて作られました。新潟データセンターのこだわりを2点、東京事務所のこだわりを1点ご紹介します。

【新潟データセンター】ポイント1:リラックスできる空間が、クリエイティブを後押しする。「カフェ風の内装」


▲新潟データセンターのエントランス

山本さん

エントランス、オープンスペース、会議室は全体を通してカフェのような内装を希望しました。

uoka

卯岡

おしゃれです……!

山本さん

先ほどお話したように、クリエイティブな仕事をするためには、ある程度のゆとりが必要だと考えまして。広々としたリラックスできる空間に仕上げたんです。あとは、採用面への影響を考えました。

uoka

卯岡

採用に関して、効果はいかがですか?

宇佐美さん

おしゃれなオフィスがさほど珍しくはない東京と比べると、珍しさもあるのでしょう。新潟・長岡の地であることも相まって、一定の効果が出ていると感じますね。


▲新潟データセンターの会議室

【新潟データセンター】ポイント2:ただおしゃれなのではなく、エコへの意識を。「新潟の古民家の廃材の活用」

uoka

卯岡

カフェのような内装と一口に言っても、テイストには幅があると思います。データドックさんの内装は、黒や焦げ茶色といった色合いが多い渋めの雰囲気ですが、これには理由があるのでしょうか。

山本さん

理由のひとつとして挙げられるのは、利用した木材の特徴を活かせる内装を、と考えたことですね。

uoka

卯岡

利用した木材、ですか?

山本さん

新潟の古民家を取り壊す際に出た廃材を利用しているんです。

宇佐美さん

リサイクル、エコを打ち出していますから。

uoka

卯岡

すごい、資材選びにも通じていたんですね……!

【東京事務所】ポイント:色選びは新潟と関連付けを。会社としての「統一感」

uoka

卯岡

ちなみに、ここ、東京事務所についてはいかがでしょうか。

山本さん

こちらも僕が担当しました。ビル自体が古いため、全面改装しています。以前は壁がピンク色だったため、かなり雰囲気が変わりましたね。

宇佐美さん

オーナーさんが見に来られた際に、「こんなに変わるものなんですね!」と褒めてくれました。

山本さん

スペースの関係や限られた予算といった枠組みのなかではありましたが、新潟データセンターとギャップがありすぎるのも東京メンバーにとって良くないと思い、できる範囲で内装に気を配りました。家具やグリーンは、型番で指示して一つひとつ選びましたね。

uoka

卯岡

木材の色合いが新潟データセンターと似通っているのは、御社で希望していたのでしょうか?

山本さん

はい。雰囲気が似たものになるよう、意識しました。移転前にいた親会社のオフィスが非常におしゃれだったため、目下の目標は「移転後にメンバーから文句が出ないこと」だったんですよ。

uoka

卯岡

結果、いかがでしたか?

山本さん

出ませんでした。よかったです(笑)。


▲東京事務所の会議室

「寒冷地域でもやれる」前例を作り、最先端を追求する

「採用のためにおしゃれな内装を」だけではなく、木材に廃材を利用するなど、オフィス×エコの取り組みを行うデータドック。採用状況は上々で、これまで新潟で実施されてきた新卒説明会にも多くの学生が集まっているのだそう。

「今後も再生エネルギー100%で運営し続けられるデータセンターを目指して、業界内にも『寒冷地地域でもやれる』と思ってもらえるよう、がんばっていきたいですね」と語ってくれた宇佐美さん、山本さん。

本業のデータセンターとしての役割も、新たなサービスを積極的に出していきたいとのこと。「最先端の仕事」への意識の高さは、寒冷地データセンターやアクアポニックスへの挑戦からもうかがえます。今後の展開も楽しみな企業です。

取材先

株式会社データドック

https://www.datadock.co.jp/corp/ 公式サイト

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