- オフィスインタビュー
-
コミュニケーションが生まれる、「タイムレス」な場を。Cogent Labsのオフィス
シンプルであること、ナチュラルであること。AIの研究・開発や関連サービスを提供する株式会社 Cogent Labsが、前オフィスから大切にしてきたポイントです。これらのベースには、時間が経っても色褪せることのない「タイムレス」を大切にしたい同社の想いがあります。
また、オフィスにシンプル&ナチュラルを求めた背景には、メンバーの半数が多種多様な国の出身者であるというCogent Labsならではの理由もありました。
六本木から東京の街並みを一望できるオフィスにて、川内さん、Sulimaさんにオフィスのこだわりについてお話をうかがいました。
(2/24に取材を行いました。)
外資系の建築コンサルティング企業やソフトウェア企業にて総務、バックオフィス業務などに従事したのち、2018年9月にCogent Labs入社。総務マネージャーとして、2019年のオフィス移転プロジェクトを統括。
モデルとしてパリコレなどで活躍したあと、一転して人事・採用の世界へ飛び込む。Apple Japanの採用マネージャーなどを経て2018年1月にCogent Labsに入社。現在は、人事・採用マネージャーとして世界中から人材を採用。
目次
2カ所に分かれていたオフィスを、インターナショナルな街・六本木でひとつに
▲会社のロゴ看板は控えめ。開放感のあるおしゃれな空間だからか、来客者の受付端末があるにも関わらず、会社の占有スペースだと気付かれないこともあるという
卯岡
まるでラウンジのようなスペースですね……!
川内さん
他の会社に訪問に来られた方が、オフィスビル内の共有スペースだと勘違いして入ってこられることもあるんですよ(笑)。
Sulimaさん
代官山にあった前のオフィスは、観光客が通るような場所にあった上に、元々ブティックに使われていた建物を利用していました。そのため、このときもカフェや美容院と勘違いされて尋ねられることがあったんです(笑)。
▲取材は会議室にて。天候にも恵まれ、窓の外は絶景。
卯岡
では、前のオフィスもおしゃれな内装だったんですね。
川内さん
コンセプトは今のオフィスと近しいですね。社長が重視している「タイムレス」が、前オフィスから変わらないオフィスコンセプトです。
卯岡
タイムレス、ですか。
川内さん
永久・永遠・不変といった意味の言葉ですね。そのため、流行りすたりのあるものは選ばず、普遍的なものを使用することにこだわってオフィス作りを行いました。作り込んだ家具を置いたり、床の高さを変えたりといった大掛かりなことはせず、今あるものを配置するオフィス、といいますか。たとえば、オフィスによくあるようなファミレス席を設けていないのも、コンセプトに沿っていることの表れです。
卯岡
どういうことでしょうか。
川内さん
ファミレス席は壁に作り込むことになるので、一度作ると変えられないものですよね。そうではなくて、動かせる家具を選んでいるんです。
先ほどのオープンスペースを含め、このオフィスには前のオフィスから使い続けている家具も多くあるんですよ。
Sulimaさん
植物を置いたり、木や石といった自然素材を用いた家具を選んだりしているのも、「飽きの来ない普遍的な内装を」との想いが理由です。あとは、インターナショナルやボーダレスも、当社だからこそ重視した部分ですね。
卯岡
外国人のメンバーが多くいらっしゃるんですか?
Sulimaさん
はい。現在、外国籍の社員は39名、およそ半数弱です。国もさまざまで、21カ国の人が在籍しています。私はドイツ出身です。
川内さん
インドネシアやフィンランド、メキシコ、ニュージーランド……。
Sulimaさん
リトアニアに、アゼルバイジャン。本当に多種多様なんですよ。
卯岡
バックボーンの異なる人たちが一緒に働くオフィスなんですね。文化が異なると、内装に対する要望や好みもさまざまだと思うのですが、内装の工夫はされたのでしょうか。
Sulimaさん
シンプルでナチュラルなものを選んでいるので、国籍関係なくなじんでいますよ。日本っぽくもなければ、アメリカっぽくもない。どこか特定の国の「らしさ」を含んでいないんです。
卯岡
だから、インターナショナルやボーダレスとおっしゃられたんですね。
Sulimaさん
はい。ただシンプルであり、自然と空が見える。オフィスで働きながら空が見えるのはいいですね。
川内さん
前のオフィスは1階で、スペースの都合上、近距離で2カ所に分かれていました。そのうちのひとつは窓が大きかったので、外の景色に触れられる環境ではあったんだよね。
Sulimaさん
オフィスの周りには、カフェなどのいろいろなお店があって、公園のような素晴らしい場所でした。
川内さん
オフィスビルに入るとなると、そうした良さは失われてしまいますが、その点セキュリティ面の安心感や快適さを得られました。また、ご覧の通り空や東京の街並みを一望できるので、ビルの中に閉じこめられている閉塞感はないですね。
Sulimaさん
東京の街並みが見えるのは、僕たち外国籍の社員にとっては地理の勉強にもなるんです。街の位置関係がわかります。
川内さん
来社されたお客さんが「僕の会社はあのあたりです」とお話されることもあり、話題のきっかけにもなっています。
卯岡
では、さっそくそんなオフィスを拝見させてください!
コミュニケーションのきっかけ作りの種があちこちに。Cogent Labsのオフィス見学ツアー
流行りすたりに影響を受けず、さまざまな国の出身者が迷わずに使えるシンプル&ナチュラルさを追求した、Cogent Labsのオフィス。
ラウンジのようなフリースペースから見学ツアー、スタートです。
仕事・リフレッシュ・コミュニケーションなどに大活躍の「フリースペース」
▲厚みと重さ、サイズ感との両立に苦心したテーブル
ビルの共有スペースと勘違いして入り込んでくる人もいるという、おしゃれなフリースペース。印象的なのは、中央に鎮座する大きなテーブルです。
Sulimaさん
このサイズのテーブルを一枚の石で作っていただくのに苦労しました。
川内さん
フリースペースは、仕事や休憩のほか、ケータリングした食べものを並べてパーティーをしたりセミナーを開催したりと、さまざまな用途で使える場所として作っていただきました。
金曜日に行っている「フライデーアップデート」と呼んでいる全社会議も、ここで開いています。85名(取材当時)が集まっても、まだゆとりがありますよ。
Sulimaさん
部署ごとでどういったことをしているのかの報告や、新人紹介の場ですね。移転前は2カ所に分かれていたため、1カ月会っていないメンバーがいたり、知らない間に新人が増えていたりといったことが課題になっていたんです。
川内さん
フライデーアップデートは夜に行われるため、終了後にはビールを飲む人たちもいます。
そのほか、ゲーム好きのエンジニアたちが、スクリーンを使ってゲームする「ゲームナイト」を開いていることもありますね。20数名くらい集まってボードゲームを行うこともありまして、インターナショナルな会社なので、見たこともないゲームが登場することも。ルールを覚えるところから苦戦することもしばしばです(笑)。
卯岡
これだけのスペースがあると、全員が集まってもゆとりがありそうです。
川内さん
エレベーターを降りて最初に見える場所なので、すっきりとした印象を与えるため、ある程度の空白感があったほうがいいとデザイナーさんからご提案いただきました。
卯岡
さまざまなソファや椅子があり、場所が選べるのもいいですね。
Sulimaさん
奥にある会社ロゴの看板や一部のグリーン、ソファは前のオフィスで使っていたものも混じっています。家具類は、基本的に社長を含む経営陣が選びました。
▲入って真正面の壁に、慎ましく掲げられている会社ロゴ
川内さん
自然素材、ナチュラルなカラー、グリーンとマッチすることが選ぶ際のポイントだったと聞いています。奥にある大きなソファでは、「はじめまして」の挨拶のほか、「ありがとう」を伝える「グラチチュードフライデー(Gratitude Friday)」と呼ばれる場が開かれています。
▲奥の大きなL字ソファが「グラチチュードフライデー」に利用されている場
卯岡
「フライデーアップデート」に引き続き、こちらも金曜日なんですね。どういった目的で設けられている場なのでしょうか。
川内さん
「グラチチュードフライデー」は社員が自発的に行っているもので、目的は社員間でのコミュニケーションですね。感謝は、仕事上でのものだけではなくプライベートでのものも含み、コーヒーを飲みながら話すんです。昼休憩を利用して行っていまして、親密になるきっかけになっていると感じています。
▲フリースペースにのみ設置しているコーヒーメーカーは、執務スペースでの座りっぱなしを防ぐ狙いが。なお、同じ理由で、ゴミ箱もフリースペースにのみ設置されている
回遊できるよう、部屋を配置。どこからでも空が見える「会議室」
▲こちらはフリースペースから執務スペースに行く扉。提案された回遊できる設計は、思っている以上に各スペースへの動線が良く便利だという
続いて案内してもらったのは、会議室です。Cogent Labsのオフィスは回遊式になっていて、会議室はどの部屋もガラス張りになっているのが特徴です。
川内さん
会議室の名前は、数学者や科学者の名前から付けられています。当社の事業であるAIが、数学や科学が発展した先の技術であることが名付けの理由です。インタビューをした会議室は「Lovelace(ラブレス)」。世界初のプログラマーの名前ですね。
卯岡
まったく聞いたことのないお名前です。
川内さん
私にとっても、「誰それ」と感じる名前が多いですよ(笑)。有名どころだと、執務室内にある会議室「Newton」ですね。
Sulimaさん
さまざまな人種・ジェンダーが混ざるように選びました。
卯岡
一風変わった名前の会議室では、呼び名として浸透するのかどうかに懸念があるのではと思うのですが……。
川内さん
不安だったのは、「日本人メンバーが発音できるのかどうか」でした。カタカナ発音だと、外国人メンバーに伝わらない可能性があるので……。結果、浸透しましたよ。発音問題も、呼びやすさも考えて選んだため、困らずに済みました。
卯岡
ガラス張りにしたのには、何か理由があるのでしょうか。
Sulimaさん
社員みんなに、景色を楽しんでもらいたかったからです。家賃のほとんどが、この景色が眺められることに対しての料金だと思っているんですよ。
川内さん
すべてが見えてしまうことへの迷いもあったのですが、結果ガラスを採用しました。視界を遮断する壁がないので、どこに誰がいるのか、一目瞭然なんです。
コミュニケーションの取りやすさを重視した「執務スペース」
続いては、社員の皆さんがふだん仕事をされている執務スペースへ。真ん中には、立って使えるテーブルが置かれています。部署ごとに3つの島に分けたグループフリーアドレスを採用しました。
川内さん
フリーアドレスは、前のオフィスでも導入していたのですが、前回は結局同じ席についてしまう人が多く、いまいち機能させられなかったんです。今回は、フリースペースでも作業ができることから、執務スペース内に空席ができる機会が増えました。結果、自由に席に着きやすくなり、執務スペースにも流動性が生まれていると感じています。
卯岡
ハイテーブルでも、ちょっとした打ち合わせや会話ができますね。
川内さん
まさに、ハイテーブルはコミュニケーションのきっかけとなる場として設置しました。
Sulimaさん
デスクの配置にもこだわっています。社長の「まっすぐ並べてしまうと、ファクトリーみたいで嫌だ」という要望から、デザイナーさんが工夫してくださり、少しだけ斜めになっているんです。結果、デザイン性が生まれたと感じています。
卯岡
洗練されている雰囲気ですよね。
川内さん
そうなんです。人が動きやすく、植物も配置しやすいんですよ。
卯岡
その他、こだわったポイントはありますか?
Sulimaさん
ホワイトボードですね。
川内さん
前のオフィスの頃から、ホワイトボードを多用しているんです。
卯岡
AIによる書類のデータ化など、Cogent Labsさんの事業内容を考えると、ギャップを感じます。
川内さん
そうですよね。ただ、リサーチャーたちにとっては、一回手で書いてみることが重要らしいんです。非常に横に長い数式を書いては眺めているので、ホワイトボードも横長です。
Sulimaさん
前のオフィスは一面がホワイトボードになった壁があったんですよ。リサーチャー以外も、何かと壁にアイデアを書いていました。
川内さん
今回は景色を社員に楽しんでもらうことを優先させた結果、空間の仕切りを壁ではなくガラスにしたため、ホワイトボード壁面をあちこちに設けることはできていません。ただ、将来的にはガラスをホワイトボードのように使える仕様にすることも検討しています。
▲執務スペースの一角には、窓の外を眺めながら働けるスペースも
次は「オンタイム」でも円滑なコミュニケーションが取れる工夫・きっかけづくりを
今後の課題として、これまではフリースペースを活用したオフタイムでのコミュニケーション施策が多かったため、「今後は執務スペースを活用した、仕事中のなかでできるコミュニケーション施策を考えたいです」と川内さんが語ってくれました。
2カ所に分かれていた前オフィスでのコミュニケーションに関する課題を解決するため、フリースペースや回遊式など、工夫を凝らしたCogent Labsのオフィス。
現状のオフィスに関して、Sulimaさんは「シンプルさがいい。満足している」と語ります。シンプルだからこそ、用途の幅が広がる。まだまだ新たな活用の可能性があるオフィスでした。