- オフィスインタビュー
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グローバルスタンダードを勧める外資系企業での働き方や組織のリアル。App Annie Japan のオフィス
グローバルカンパニーと聞いて、どのようなイメージを抱きますか?「外資系の日本法人には裁量があまりないのでは」と思っている方もいるのではないでしょうか。
アメリカ・サンフランシスコに本社を置くApp Annieは、モバイル市場データと分析プラットフォームを企業に提供しているグローバルカンパニーです。会社規模拡大に合わせてグローバルスタンダード化が進む一方、各国地域の立場や国の商習慣を考慮してもらえる環境にあるという。
日本法人代表の向井さん、芳田さんにお話をうかがいました。
App Annie Japan 株式会社 代表取締役
国内IT企業を経て、世界最大手の企業情報企業である米Dun And Bradstreet、世界最大手のITリサーチ・コンサルティング企業である米Gartnerにてセールス職として様々な業種を横断的に担当し、経営者レベルとのビジネスを推進。2014年にApp Annieに参画後、日本の新規ビジネスから既存クライアントビジネスまで広く担当し、2019年1月から現職。
App Annie Japan 株式会社 Senior App Market Consultant
米国の大学を卒業後、日本最大手のIT企業である楽天株式会社に入社。2015年にApp Annie に参画後、金融、製造、小売など幅広い業界を担当し、顧客の課題の発掘、製品価値の提供に取り組む。日本およびアジア地域のSales Development の組織全体をリード。
目次
新事業・サービスの根幹となる「データ」を提供
卯岡
App Annieさんの事業内容についてお聞かせください。
向井さん
“データプロバイダー”、つまりデータ提供を行うビジネスが弊社の事業です。扱っているデータは、世界中のモバイル市場のデータです。どの国で、どのアプリが、どの程度ダウンロードされているのか、いくら課金されているのか。また、ユーザーの性別などを知ることができるんです。現在、世界中の著名な企業を中心に1,000社以上ご契約頂いています。
卯岡
さまざまなアプリの使用状況がデータでわかるということですね。
向井さん
そうです。ただ、契約してできることはデータの閲覧だけです。加入しただけでは、企業側に変化は起きません。データを基にして施策を打つなど、ビジネスに活かしていただいて、初めて価値が生まれるサービスなんです。
卯岡
では、契約企業はアプリを出している会社がメインなのですか?
向井さん
それがそうでもないんです。ここ2年では、アプリを主軸のビジネスとしていない製造業や金融業といった業界などの契約が増えています。
たとえば自動車産業では、ライドシェアなど、所有しない価値観が広がりを見せていますよね。これまでのように、「いい車を作れば売上が伸びていく」時代ではないわけです。そこで、「メイン事業である自動車製造のビジネスが更に発展していくために、ハードだけでなくソフトの側面で顧客に新しい価値を提供すべきではないか」が潜在課題になっています。
卯岡
そこで、「まずはデータを見てみよう」ということですか?
向井さん
……となるケースはそれほど多くありません。モバイルは生活に密着しているがゆえに、各々主観で語ってしまうケースが多いんですよ。
周囲が「今、こういうのが流行していますよ」と言っても、そこには証拠がありませんよね。そして、結局、権力のある部長の「俺は知らない」で話が終わってしまうことも珍しくないんです。こちらも、「流行していない」「知られていない」証拠はありません。
卯岡
なるほど。その証拠がデータなんですね。
向井さん
新規、既存問わず、ビジネスの議論のベースとして、ファクトは必要ですからね。ただ、先ほども申し上げたように、データを得るところで満足していては、実際のビジネスには何の変化も起こりません。「たくさんデータが見られるんだね、便利だね」で終わってしまうと、何もやっていないのと同じですからね。
卯岡
意味があるはずのコストが、無意味なものになってしまうんですね。
向井さん
はい。でも、本来の目的を見失って解約となってしまうのは、弊社・ユーザー企業双方にとってもったいないことです。そこで、弊社ではカスタマーサクセスマネージャーが伴走し、データを主体的に活用してビジネス上の意思決定や施策が行えるよう、App Annie の活用をサポートしています。
文系メンバーが中心。アプリのプロとして他業界と関わる
卯岡
データを扱う仕事ということで、社員の方は理系が多いのでしょうか。
向井さん
いえ、僕も含め、文系人間の方が多いですね。セールス組織だということもあり、営業職に就いていた人間が多いです。所属部署ごとの人数では、カスタマーサクセスマネージャーの割合が多いですね。
卯岡
さまざまな業界に関して、データの活用法を提案するのは、非常に難しいのではないかと思いますが……。
向井さん
そうですね。ただ、各業務に関してはユーザー企業がプロですが、アプリの世界では私たちがプロです。そのため、アプリの土俵上で話すよう心がけています。業界関係なく、モバイルでの悩みは、たいてい収益化(マネタイズ)、マーケティングであることが多いんです。そのため、顧客のペインがどういうところにあるのかを探り、それに合わせた提案をしています。
卯岡
営業のメンバーが中心になると、オフィスで仕事をする機会が少ない人が多いのでしょうか。
向井さん
多様性のある働き方をしている組織ですね。時期にもよりますが、抱えている仕事によっては、1週間出社しない社員がいることもあります。
芳田さん
デスクに置いてある郵送物が翌月も置かれたままという状況もありますね。
卯岡
社内コミュニケーションで、何か工夫はされていますか?
向井さん
カレンダーで予定を共有しているので、誰がどのような仕事を抱えているのか可視化されています。他部署のメンバーとも定期的にコミュニケーションを取りながら、協力体制のもと業務を行っています。
芳田さん
コミュニケーションは、チャットツールやWeb 会議ツールなどテクノロジーがメインですが、自部署・他部署問わず、直接コミュニケーションすることを意識しています。
卯岡
App Annieさんはグローバルカンパニーですが、オフィスに関する自由度はどの程度あるのでしょうか。
向井さん
ブランドカラーである濃紺を基調としたデザインにするなど、あらかじめ決まっていることもあります。家具は、予算の中でこだわったものを選びました。
芳田さん
スナックやドリンクを用意したり、福利厚生を整えたりと、環境面に関しては自由度がありますね。
働きやすさを作るひとつが、定期的に行っているチームビルディングのアクティビティです。前回は湯河原にトレーニングを兼ねたアクティビティに行きました。私が企画して行った「プレゼンカラオケ」が盛況でした。
卯岡
どういったものなんですか?
芳田さん
くじで引いたテーマに対し、ランダムに出てくる4枚の画像に合わせてプレゼンを行うんです。
向井さん
無茶ぶりも多くて。僕がやることになったお題は「人にダイエットを勧める」だったんですが、何を表しているのかもわからない関数のグラフなんかが出てきまして(笑)。柔軟性が鍛えられましたね。
芳田さん
私は「相手に料理がおいしくなかったことをさりげなく伝える」がテーマでした。それなのに、渋滞や総理の画像が出てきました(笑)。
卯岡
どうお話されたのかが気になります……!楽しみながら思考の柔軟性が鍛えられそうですね。
芳田さん
ふだん深くコミュニケーションを取る機会がない別チーム同士にとっても、いい機会でした。おもしろい時間でしたね。何でも新しいことをやってみようという雰囲気が、弊社の特徴だと思います。
向井さん
グローバルカンパニーは、「本社の言うことのみを実現する営業拠点」とイメージされることが多いと思います。ただ、弊社では全社内で日本の売上比率が極めて高いこともあり、イニシアチブを持ってグローバルに提案しやすい状況があるんです。
芳田さん
「こうやっていきたい」という話が、経営層まで届きやすい環境なんです。
向井さん
グローバルカンパニーのあるあるですが、マーケットの4Pといわれる「Product, Place, Price, Promotion」のうち、ProductとPriceは基本的に本社の意思決定に従う必要があります。日本でできることは、PlaceとPromotionを工夫してビジネスを最大化することですね。
居心地のいいスペースを設けたApp Annie日本法人オフィス見学ツアー
グローバルカンパニーであるApp Annie。働きやすい環境を整えている日本法人オフィスを見学させていただきました。
ブランドカラーの濃紺が印象的な「エントランス」
エントランスの壁面は、ブランドカラーである濃紺に。ロゴマークの宝石は、2019年9月のリブランディングを実施した際に誕生したものです。
向井さん
宝石は、ゲームで集めるとレベルアップできるものですよね。そこから、「企業の成長を願う」という意味を込めてロゴマークにしました。
卯岡
ゲームですか。
向井さん
弊社は、まずゲーム業界の方にサービスを使ってもらうことで、成長を続けてきた経緯があるんです。そのため、このマークには製品立ち上げ時から継続利用してくださった企業への賛辞も込められています。
執務スペースの奥に設けた「ソファスペース」
執務スペースの奥にあるソファスペース。スナックやドリンクもこちらに置かれています。床面もこのスペースだけ変え、執務スペースとは少し異なる雰囲気に。
芳田さん
個人的に気に入っているスペースです。
▲執務スペースの全景。右奥に見えるのがソファスペース
2019年9月のブランドの刷新を経て、さらなる拡大を目指す
2019年9月にロゴマークも新たにし、ブランドを刷新したApp Annie。さらなる拡大のため、採用にも力を入れているのだといいます。
「創業時と比べ、会社の規模も拡大しています。それに伴い、サービスもオフィスデザインも、グローバルスタンダードという考え方が重要視されてきました。そのため、会社の決定事項をまずは受け入れて、前を向いて動ける人がフィットすると思っています」と向井さんが語ってくれました。
とはいえ、「各地域のオフィスにも裁量があり、グローバルに積極的に提案していける環境です」と語る芳田さん。創意工夫をして心地いいオフィスを整えているように、円滑な社内コミュニケーションや情報共有など、仕事を進める上での心地よさも重視している企業です。