- オフィスインタビュー
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「何かを生み出す場が1番かっこいい」。働く姿を”商品” として見せるジブンハウスのオフィス
“家はスマホで買う時代” というキャッチコピーを掲げ、住宅業界に新しい風を送り続けている、株式会社ジブンハウス。
暮らしをリアルにイメージできる高精細VRを中心に、住宅の買い方を今の時代に合った形にアップデートしました。
業界をリードするジブンハウスとは、一体どんな会社なのか?建築のプロフェッショナルが自分たちでデザインしたというオフィスを取材し、その内側に迫りました。
株式会社ジブンハウス 取締役、デザイン事業部長
オレゴン州ポートランドの大学にて建築デザインを修学し、卒業後、米国内設計事務所にてインターンを経て帰国。
1989年、横浜に商業施設・住宅・ホテル等の設計デザイン会社設立。
株式会社ジブンハウスの立ち上げにデザイナーとして参加。
現在に至る。
大学卒業後、2016年2月にジブンハウスに入社。
フランチャイズチェーン事業、VR制作事業の立ち上げに参加。
会社全般のプロモーションを担当している。
目次
「家はスマホで買う時代」。業界の常識を変えたジブンハウスの事業とは?
ジブンハウスの2本柱、「高精細VR」と「セルフ見積もり」
Seiya
まずはジブンハウスさんの事業内容を教えてください!
小野さん
弊社は、住宅販売のFC・VC事業(※)をメインに展開しています。工務店さんや住宅会社さんにジブンハウスのチェーンに加盟していただいて、弊社の名前と商品を使って営業をしていくという形です。現在、店舗数は115、北海道から沖縄まで全国に展開しております。
ジブンハウスは、「スマホで買えるぐらい、楽しく簡単に家作りができるようにしよう」というコンセプトで立ち上がった会社です。”家はスマホで買う時代” という言葉をキャッチコピーとして使っています。
※FC:フランチャイズ、VC:ボランタリーチェーン
Seiya
“家はスマホで買う時代” というフレーズ、とても印象的です。
小野さん
このキャッチフレーズですが、最初は賛否両論があって笑われることもありました。「スマホで家なんか買えるわけない」と。でも、現在、ジブンハウスの家は300棟以上建っていて、ほとんどの方が我々の想定していたとおりスマホを使って家を購入されています。
Seiya
スマホで家を買うというのは確かにハードルが高いイメージがあります。それに対してどんな取り組みをされていますか?
小野さん
ジブンハウスでは、展示場に足を運ばなくてもスマホで家選びができるように、暮らしをリアルにイメージしてもらえる「高精細VR」を作っています。
Seiya
ホームページからVRを体験させていただきましたが、ホントにリアルですよね!楽しくて隅々まで見てしまいました……!
▲暮らしをリアルにイメージできる高精細VR。ジブンハウスさんのホームページで体験できます。
滝本さん
僕らは家を設計するより、生活シナリオをデザインする考え方で仕事をしています。「この空間で何をするだろうか?」と、具体的にイメージしながらオタク的に作りこんでいます。
小野さん
またVRの他に、「セルフ見積もり」という仕組みも作りました。セルフ見積もりを使えば、お客さまは自分自身で家の価格をチェックすることができます。
住宅の金額はブラックボックスな部分が多々ありますが、費用がわからないとどうしても購入の判断ができませんよね。そこをクリアにしようと、この仕組みを構築したんです。セルフ見積もりによって、店頭に行かなくてもいつでもスマホで金額がわかるようになりました。
▲家のテイストやオプションを選ぶと、画面上で見積もりができる
Seiya
なるほど。暮らしのイメージはVRを、金額はセルフ見積もりを使って、どちらも購入前にスマホで確認できるんですね。
小野さん
今は何を買うにしてもスマホで情報収集をして、その段階で購入の意思決定をしますよね。私たちはそこがやっぱり大事だと思っていて、家の購入にも取り入れたんです。
スマホを使って、「買う側に主導権があるモノの買い方を」
Seiya
ジブンハウスさんの1番の強みは何でしょうか?
滝本さん
我々の強みは、とにかくこのスマートフォンで全ての情報が見れるところですね。
滝本さん
スマホで全て確認できることで、自分の情報を一切出すことなく、そして有識者に相談する必要もなく、デザインが整った状態の家を自分で選ぶことができますよね。
その、「自分で能動的に選ぶ」というところがポイントです。こちらから押し付けるモノの売り方ではなく、買う側に主導権があるモノの買い方、それが大切だと思っています。
Seiya
自分で選んだほうが、そのあとの満足度にも繋がりそうですね。
滝本さん
そうです。勧められて納得させられると、自分が主たるものではないわけですよね。ジブンハウスの場合は、お客さまが主たる決定権者になります。
小野さん
また、スマホで情報が見れることで、住宅ができるまでの打ち合わせ回数が減りました。ジブンハウスの場合、平均3〜5回ぐらいの打ち合わせで契約になりますね。
滝本さん
過去には打ち合わせ1回だけで契約したこともありました。お客さまが来店されて、すぐに「これ買います」って(笑)
Seiya
家の購入をたった一回で……!
小野さん
どのくらいの時間かはわかりませんが、ご来店前にVRでしっかり検討されていたのだと思います。
打ち合わせが少ないと、工務店さまはコストを抑えられます。お客さまも貴重な休みが潰れなくて済むので、双方にとってメリットがあります。
楽天市場で家が買える時代?
Seiya
住宅販売のFC・VCの他には、どんな事業を展開されているのでしょうか?
小野さん
VR・CGの製作、建物と土地のマッチングサービス『AiR』、バーチャル住宅展示場の『MY HOME MARKET』を展開しています。
MY HOME MARKETは、VRやセルフ見積もりの仕組みを他メーカーさんでも使ってもらえるように、日本ユニシスさんと共同で作ったプラットフォームです。”スマホで家を買う” をもっと業界のスタンダードにしていきたいという思いがあって、この事業を始めました。
▲MY HOME MARKETの楽天市場店
小野さん
実は10月16日に、MY HOME MARKETは楽天と提携をしました。家が楽天市場で買えるようになったんです。ちなみに送料無料です(笑)。楽天ポイントも付きますよ。
Seiya
楽天市場で家が買えるなんて……!
業界をリードするジブンハウスの内側
社内の雰囲気は「大学のラボみたい」
Seiya
社内はどんな雰囲気ですか?
滝本さん
大学のラボのような雰囲気です。プロジェクト毎にテーブルが分かれているのですが、「そっち何やってんの?」「その話、俺にも教えて!」というやりとりが、テーブルをまたいで頻繁にあります(笑)。
Seiya
垣根がない職場なんですね。
滝本さん
そうですね。仕事は全部横軸で繋がっているわけなので、縦で分かれるのはよくない。ゆるい情報共有が常にあるような感じですね。
アイデアの源泉、「サンクスフライデー」
Seiya
そういえば、月に一回ピザパーティーがあるという噂を聞きました。
滝本さん
「サンクスフライデー」のことですね。
Seiya
サンクスフライデー……それはどんなものなのでしょうか?
滝本さん
サンクスフライデーは、毎月最終金曜日に行なっているミーティングです。毎回テーマを1つ決めて、みんなでディスカッションしています。
ピザなどを食べつつ、ビールやワインを片手に話し合っているんですけど、時間は1時間半ときっちり決めてやっています。れっきとした会社の仕事の一つです。ただの飲み会ではないですよ(笑)
▲実際のサンクスフライデーの様子
Seiya
ピザパーティーではなかったんですね(笑)。サンクスフライデーはどんな目的で開かれているのでしょうか?
滝本さん
「今何に困っているの?」「今面白いものは何?」というところから、新しいものが生まれることが多いんですよね。そういう視点でアイデアやビジネスを考える場がサンクスフライデーです。実際、このサンクスフライデーから商品が生まれているんですよ。
Seiya
ビジネスを生み出す場になっているんですね!
ジブンハウスのオフィス見学。「何かを生み出している場所が一番かっこいい」
Seiya
こちらのオフィスは、滝本さんがデザインされたとお聞きしました。テーマやこだわりについて教えてください!
滝本さん
私たちは、働く場所、つまり、”何かを生み出している場所” が一番かっこいいと思っていて。
我々がどのように考えて家やサービスが生まれていくのか、その働いている現場が面白い。そして、働いている姿そのものが商品であると考えています。だから、働く姿が来客者から見えるようになっています。
Seiya
オフィスを移転されて1年が経ったと思うのですが、移転する前と後で変わったことはありますか?
滝本さん
オフィスを出入りする人が圧倒的に増えました。前のオフィスは手狭で、お客さまを呼ぶのは少し気が引けましたが、今のオフィスには相手からどんどん来てくれます。オフィスで打ち合わせができるようになったことで、仕事がまとまる時間が短くなりましたね。
あと、移転してから本格的にブランディングの部署が立ち上がって。このオフィスに移転したことがきっかけで、それまでなかったデザイン事業部という部署もできました。
Seiya
移転によって新しい部署が生まれたんですね。それではオフィスを見させてください!
AIコンシェルジュがお出迎えしてくれるエントランス
Seiya
エントランスにとても珍しいものがありますよね?
小野さん
はい、AIコンシェルジュですね。
▲エントランスではAIコンシェルジュがお出迎え
小野さん
基本的にはAIが喋るんですけど、裏に生身の人間が入ってマイクを通して話すこともできます。ちなみに顔は自分たちで作りました。いろんな国の人のパーツを集めて、どこの国の人かわからないようにデザインしたんです。
▲国籍不明のAIコンシェルジュNAOMIさん
Seiya
面白い!
エントランスのデザインですが、苔の壁や木の素材から和の印象を受けました。
▲苔が印象的なエントランスの壁
滝本さん
エントランスのパーテーションや壁は、仕切るためのものではありません。無国籍な庭を歩いて、木戸を開けると中庭がある。そして縁側から家の中を見れる。そんなイメージで設計しました。
▲執務エリアへは木戸を開けて入る。
セミオープンな執務エリア
Seiya
木の格子で囲まれた、あの円形のスペースは何をする場所なのでしょう?
▲入ってすぐのところに、何やら気になる円形のエリアが。
小野さん
これが弊社のメインである高精細VRの確認を行うスペースですね。
▲ジブンハウスの代名詞である高精細VRのチェックをする場所
滝本さん
お客さまと打ち合わせを行う2Fのミーティングルームへ行くときは、このVRエリアや社員の働く執務エリアを必ず通るように動線を設計しました。
▲2Fに行くときは、必ず社員さんの働く姿が目に入るようになっている
Seiya
先ほどおっしゃっていた、「新しいモノが生まれる場所を見せる」というのは、こういった動線なんですね。
執務エリアはセミオープンな空間ですね。
小野さん
適度に遮りつつも空間を繋げる。滝本はそこを意識してデザインしました。声が周りにすぐ届くように設計されています。
▲適度に遮られたオフィス。フリーアドレス制なので好きなところで作業可能
さまざまな人や情報が集まる、2Fのミーティングルーム
Seiya
2Fのミーティングルームに置いてある家具がどれも個性的で素敵ですね。
滝本さん
ここに置いてある家具は僕らでデザインしたもので、購入もできます。
Seiya
確かによく見ると値札が付いていますね。
▲ジブンハウスでデザインされた家具
Seiya
あと、この部屋にはアートがたくさん飾られている印象です。
▲部屋のいたるところに飾られているアート作品
滝本さん
いろんなアーティストさんの作品が並んでいます。サンクスフライデーなどに来ていただいて、我々のコンセプトに賛同した方が置いてくださっているんです。
Seiya
社員さんやお客さまだけでなく、いろんな人が出入りされているんですね。
小野さん
我々はこの場所に、「たくさんの人や情報が集まる場所にしたい」という思いを込めています。人が集まると、話をする中で新しいものが生まれることもあるので、これからもっと交流が増えればいいなと思っています。
次なるプラットフォームを探し続ける
Seiya
最後に、これからのビジョンやサービス展開について教えていただけますか?
滝本さん
当面の目標は、ジブンハウスのチェーンに加盟してくれる仲間をもっと増やしていくこと。我々の思いや考えを拡散するインターフェースが必要ですから。
Seiya
海外への展開も強化されていくのでしょうか?
滝本さん
そうですね。実は先月、サンフランシスコの展示会に参加して、弊社のVRを発表してきました。現地の反応がよくて、今も複数の国の人たちと連絡を取り合っています。
ちなみに海外では、「JBN Studio」という名前で展開しています。
Seiya
今後の事業内容についてはいかがでしょう?
滝本さん
我々のビジネスモデルはプラットフォームです。住宅のVC・FC事業をはじめ、複数のプラットフォームを展開しながら、今は”次のプラットフォーム” を探しているところです。
家自体もある意味プラットフォームですよね。家を購入していざ住み始めてから、いろんなサービスが必要になってくる。だから我々は、住んでもらった後からが重要だと考えています。
家を建てるという「コト」から、その家に住んで人生をエンジョイする。我々はそこに何を提供できるのかというところにフォーカスしていこうと思っています。
Seiya
住宅だけでなく、人生全体に寄り添うサービスを提供するんですね。
滝本さん
そうです。そしてこれからは、住宅に軸足を置きながらも、ドラえもんのポケットみたいな企業になりたいと思っていて。何かキーワードを我々に投げると、それについて全部わかるというような存在です。
例えば、「いい快眠の方法ないかな?」と聞くと、睡眠のメカニズムや、快眠に必要な建築、寝具の知識をお答えするようなイメージですね。実は今、実際にそういうプロジェクトにも取り組んでいるところです。
「テクノロジーはホントに楽しくてね。いろんな課題を解決してくれる」と語る滝本さん。今、ジブンハウスの社内では、「LOVE & TECHNOLOGY」(通称ラブテック)という言葉が流行っているんだとか。
エントランスのAIコンシェルジュをはじめ、新しいテクノロジーを積極的に取り入れて自分たちで試しているオフィスを見て、その姿勢がうかがえました。
これから先、ジブンハウスが最新テクノロジーを使いながら、どんな新しいサービスを生み出していくのか、さらに楽しみになったオフィス取材でした。