- オフィスインタビュー
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オフィス移転・採用に共通するのは「今注力すべきことに注力するため」の合理的判断の尊重。WeWorkに移転したクラビスの新オフィス
オフィスの内装にこだわりたい。どうせやるならこだわり抜きたいけれども、今はオフィス作りに時間を割けない。
そうした想いから、コミュニティ型ワークスペース「WeWork」に新オフィスを構えた株式会社クラビス。オフィスについてのお話を聴くなかで見えてきたのは、「合理的」「自由度の高さ」「経営者と従業員との関係性」へのこだわりです。
WeWork内の会議室の一室で、代表取締役の菅藤さんにお話を伺いました。
株式会社クラビス代表取締役・CEO。株式会社マネーフォワード執行役員。
ソフトウェア開発会社にて、プロジェクトマネジメントや東南アジアでの開発拠点の設立を担当。のちに現マクロミルに入社し、経営・事業企画に従事。2012年、株式会社クラビスを設立。2017年11月より、マネーフォワードグループに参画。
目次
AI技術×オペレーターでレシート・領収書情報を手軽に仕訳データに変換
卯岡
クラビスさんはどのような事業を行われているのでしょうか。
菅藤さん
「STREAMED」というクラウド記帳サービスを提供しています。会計に関する業務を効率化できるサービスですね。
卯岡
個人事業主のひとりとして、個人的にも気になります。一応クラウドサービスを利用してはいるのですが、その入力すら面倒で……。
菅藤さん
わかります(笑)。ただ、クラウドサービスを利用されているだけいいと思いますよ。例えば、町のラーメン屋さんや歯医者さんといった個人クリニックなどでは、未だにノートの現金出納帳で管理されているところも多いんです。パソコンを置いてすらいないところもまだまだあります。
卯岡
紙管理だと、確定申告書類を作るのも手間がかかりますよね。
菅藤さん
そうですね。ちなみに、卯岡さんはこまめに記帳できていますか?
卯岡
正直、毎年「ちゃんとやろう!」と思いながら、結局ほぼ1年近くレシートを溜めてしまいがちです……。
菅藤さん
実は、そうした方は個人だけではないんです。月次決算は義務ではないので、企業でも年に1回ようやく管理しているところも多いんですよ。結局、面倒くさいからなんですよね。だから気乗りせず、ついずるずるまとめてしまうことになる。
卯岡
こまめにやっておけば楽だったのに、とは思うんですが、なかなか……。
菅藤さん
これ、別に日本だけの課題ではないんです。アジアやアメリカ、ヨーロッパでも経理・会計の管理に苦労しているのは同じなんですよ。
「STREAMED」は、そんな経理・会計の負担を減らせるサービスです。スマホでレシートを撮影したり、スキャンしたりするだけで、仕訳データを作れます。
卯岡
家計管理でもレシートを撮影するだけというサービスがありますが、正直「本当に正しい分け方をしてくれるんだろうか」と心配になってしまうんです。結局確認する必要があるのなら、最初から手入力しようと思ってしまうんですが。
菅藤さん
おっしゃるとおり、文字を画像から読み取る技術の精度は、まだ完璧とはいえません。家計簿程度であれば多少の読み取りミスが大問題になることはありませんが、会社の会計としては心配が残るでしょう。
そこで「STREAMED」では、ベトナムや中国で100人程度の人員を雇っていて、AIでの読み取りに人力のオペレーターをかけあわせてデータ化しているんです。
卯岡
え、でも、ベトナムや中国の方が、日本語のレシートや領収書を見て正しく判断できるものなんですか?
菅藤さん
そこは個々の能力に合わせて仕事内容を分けることで解決しています。数字の入力やチェックを行う人、日本語のチェックが行える人など、分業しているんです。ありとあらゆる会計にまつわるものをデータ化できますよ。
WeWorkへの移転・採用に共通するのは「“今のベスト”を追う姿勢」を大切にする価値観
卯岡
クラビスさんがWeWorkにオフィスを構えたのはいつですか?
菅藤さん
2019年4月ですね。その前は、四谷の賃貸オフィスにいました。
卯岡
移転の理由は何でしょうか。
菅藤さん
直接的な理由は従業員の増員ですね。前オフィスは10数名が上限で、今は20名ほどいますので。ただ、これまでも2年周期くらいで移転をしてきました。
別にとにかく規模を大きくしたいという気持ちはないんです。それよりも、優秀な少数精鋭チームでいたいので。そして、今いるメンバーに快適な環境を用意したいと思っています。
卯岡
そこで、今回はWeWorkを選んだのですね。いわゆるふつうのオフィスビルに入らなかったのはなぜなのでしょうか。
菅藤さん
今回重んじたのがスピードだったからですね。最初は自社オフィスを作るつもりだったんです。ただ、やるからにはこだわりたかった。内装を考えるの、もともととても好きなんですよ。予算も確保できそうだったんですが、「今、僕がオフィスづくりにそこまで避ける時間は果たしてあるのか?」と思いまして。
卯岡
なるほど。
菅藤さん
少ない人数で経営しているため、弊社にはバックオフィス専任スタッフが現状いないんです。そのため、オフィス担当を設けられない。すると、僕が時間を割かなければならなくなるわけですが、現在僕は頻繁に海外出張に行っていて、どう考えても新オフィスのためのミーティングを入れる余裕がないんですよね。
卯岡
こだわりたい気持ちが強いと、なおさら時間をかけたくなりますね。
菅藤さん
そうなんです。その点、WeWorkは洗練された空間が最初から用意されていて、最短で翌週から入居できるのが魅力でした。ただ、合理的な判断だったと思っています。オフィスについて考える時間をとにかくなくしたくて、即決しましたね。
卯岡
早期解決したかったんですね。
菅藤さん
はい。結局、前オフィスの契約期間が半年程度残っていたにも関わらず、移転に踏み切りました。半年間は費用を二重に払うことになったんですが、それでも「もう、今すぐ動こう」と思ったんです。
卯岡
社員の方の反応はいかがですか?
菅藤さん
いいですね。WeWorkへはパソコンさえあれば引っ越しが完了するので、大満足です。エンジニアは、夕方になると共有スペースで1杯飲みながら打ち合わせをしていて、楽しそうだなと思っています。
お酒の他、WeWorkが週1で出してくれる朝ごはんなど、WeWorkが提供してくれるサービスを活用させてもらっています。海外出張の際に各国のWeWorkを利用できるのもいいですね。
卯岡
最初に「少数精鋭」といった話がありましたが、今後採用に力を入れようといったことはあるのでしょうか。
菅藤さん
売上を増やすために人を増やそうという考え方はありません。より良いサービスを作るために良い人を取りたいという感覚です。
卯岡
どういった人がフィットするでしょうか。
菅藤さん
事業に共感してくれて、あとは意思がある人がいいですね。自分で何かを切り開いたり、やりたいことが明確にあったりする人がいいです。同じところにずっといる終身雇用より、クラビスに入ることで新しい体験を積み、成長できる人が合うのではないかと思っています。スキルではなく、意義に共感してくれる人がいい。
卯岡
スキル重視ではないんですね。
菅藤さん
会社自体、僕はプロジェクト的な側面があってもいいと思っているんです。クラビスは、会計の効率化という課題を解決するためにある会社で、社員はこの課題を解決したいと集まった仲間たちだと思っています。だから、今のスキルが足りなくても、クラビスがやっていることに共感してくれているのであれば、入社後に伸ばしてもらえればOK。
だから、面接にはこだわっています。能力がたとえあっても、クラビスのカルチャーに合わなければ結局長くは続けられないものだと思っているので。
卯岡
なるほど……。
菅藤さん
ちなみに、人が循環した方がハッピーだとも思っています。チャンスを与えられない環境に居続けるのは不幸なので、仕事がないなら活躍できる場所に転職した方がいい。今いるメンバーも、クラビスに囲い込むつもりはなく、個人の人生の最大化を考えてほしいと思っていて、面談でもそうした話をすることがありますね。
卯岡
具体的にどういった話でしょうか。
菅藤さん
面談でやりたいことを聞いて、そこに辿り着くにはどうしたらいいのかを一緒に考えるんです。「じゃあ、うちでの仕事は割り切ってやってもらって、夢を叶えるためにこうしたスキルを身に着けていった方がいいかもしれないね」とアドバイスをしたこともあります。
卯岡
親身ですね……!
菅藤さん
経営側としては、優秀な人には長く働いてほしいので、社員が夢を追わずにいてほしいという考えもあるでしょう。ただ、経営側が社員の人生の選択肢を狭めるのはフェアじゃないと思っています。
しょっちゅう海外出張に行っているとお話しましたが、強い思いがある人は積極的に連れて行っています。日本でしか営業をやったことのなかったメンバーをシリコンバレーに連れて行ったこともありますね。
信じていた価値観以外の世界を見ると、その人のキャリアへの意識が変わる可能性もあります。何かに目覚めて「他社や海外に行きたい!」となるかもしれませんが、それも社員の人生にとってプラスであればいい。何よりもまず「個人の人生」を大切に生きてほしいという想いがあるんですよね。そして、クラビスは留まりたいと思ってもらえる会社であり続けなくてはいけないなとも思います。
卯岡
「この会社ではこの課題解決を行っているから、意義に共感した人が来てくれたらいい」、合理的な考え方ですね。
菅藤さん
WeWorkを選んだのも、究極の合理主義だと思っています。
卯岡
面談で転職を含めた相談やアドバイスをするなど、興味深いお話でした。では、そんな合理的判断で入ったWeWorkのオフィス、早速見学させてください!
合理的判断でWeWorkを選んだ、クラビスの新オフィス
オフィス移転にかける時間を、今は節約したい。その想いで入居したWeWork。執務スペースと共有スペースを見学させていただきました。
ガラス張りが安心感をもたらす「執務スペース」
WeWorkのオフィスエリアに構えられた、クラビスの新オフィス。廊下に面した壁はすべてガラス張りです。
卯岡
くもりガラスではなく、中が丸見えのガラス張りなんですね。
菅藤さん
入居当初は気になりましたが、あっという間に気にならなくなりましたよ。本屋さんで過ごすときの安心感に近いですね。
卯岡
見知らぬ人がいるけれど、ひとりでもあるみたいな感覚でしょうか。
菅藤さん
そうです。逆に集中力が高まる気がしますね。それに、一般的には20人程度の規模の賃貸オフィスだと、コンクリートの塊のなかで視野が限定されてしまいがちですが、WeWorkならガラス張りで空間が広いため、視野が拡大している気がします。
いつか自社オフィスに移転するときがきたら、何とかしてこの解放感を取り入れたオフィスを作りたいですね。
気分に合わせて移動可能な「共有スペース」
気分に応じて自由に使える共有スペース。バーカウンターや飲み放題のコーヒーマシーン、ソファ席など、移動できる場所がたくさんありました。
卯岡
初めてWeWorkに来たのですが、本当におしゃれですね。
菅藤さん
移動できる自由がみんなに与えられているのがいいですね。別フロアにも共有スペースがあるので、自由度が高いです。嫌なことがあっても逃げられます(笑)。
WeWorkオフィスは「究極の持たない経営」
「今、集中すべきことに集中したい」という想いから、スピーディーに移転が済むWeWorkにオフィスを構えたクラビス。「今後、また外にオフィスを構えるかもしれないし、WeWork内で拡張するかもしれない。そのあたりはまだ未知数です」と菅藤さんは語ります。
印象的だったのは、「究極の持たない経営だと思った。結果、会社も社員もフレキシブルにやりたいことに向かえる会社になったと思っています」という言葉です。「個人の人生を最大化してほしいので、社員だからといって会社に囲い込むつもりはない」、そんな価値観を持つクラビス。これからどのような変化を見せていくのか、楽しみです。