- オフィスインタビュー
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新しい体験が、次なるクリエイティブを生む。コーポレートカラーの「黒」が特徴的なベストクルーズのオフィス
「クリエイティブな仕事をしたい」と思う人は多いのではないでしょうか。アイディアを生み出す仕事には「生みの苦しみ」が伴いますが、一方でやりがいやおもしろさも感じられるものです。
広告を取り扱う株式会社ベストクルーズの代表取締役髙橋一行さんは、「代理店ではなく、コンサルティングに近い立場で共におもしろいものを作っていきたい」と語ります。その言葉の背景には、髙橋さん自身のユニークな半生がありました。
1979年 千葉生まれ。大学卒業後、ベストクルーズに入社。
社員2名だった小さな会社を売り上げ3倍にまで成長させ、同社代表取締役に就任。
音楽クリエイターとしても活動しており、CMソングや映画音楽などを手がける。
目次
“代理店”じゃない。伴走相手になるからこそ、仕事はもっとおもしろくなる
卯岡
ベストクルーズさんの事業内容についてお聞かせください。
髙橋さん
一言で言うと広告事業ですね。さまざまな仕事を手掛けていまして、企画からまるっとお任せいただくことが多いです。
セールスプロモーションを担っているチーム、さまざまな広告案件を担うクリエイティブチームがあります。
卯岡
それぞれ、どのようなお仕事を手掛けていらっしゃるんでしょうか。
髙橋さん
セールスプロモーションチームは、様々な流通の売り場に商品を売るための店頭販促ツールを納めています。
▲納品した什器が使われている様子
卯岡
例えば、おもちゃ屋さんに置かれているおもちゃの見本が入っているものですね。あれ、おもちゃ屋さんが保有している什器を使っているものとばかり思っていました。
髙橋さん
おもちゃに合わせてメーカーさんに提案するんですよ。プレゼンには試作機も用意していくんです。おもちゃメーカーの商品はまだ世に出せないものばかりなので、移動には気を遣います。社用車がマストな仕事ですね。
卯岡
守秘義務が発生するんですね。クリエイティブチームはいかがですか?
髙橋さん
クリエイティブチームでは、キャリーケースのメーカー「サムソナイト」の仕事や、毎日新聞社さんのお仕事などを手掛けています。
▲サムソナイトの事例
▲[毎日新聞社主催]複合ビルの床面に施された、だまし絵企画。プールのスタート台に立っているような写真が撮れる
メイン業種のひとつは、鉄道と空港での広告事業です。鉄道には広告を出せる自社媒体を持っていまして、空港は羽田空港の指定代理店のひとつ。共にクライアント企業に広告を出す場所、出し方の提案から実際の広告デザインまでを手掛けています。
たとえば空港では、預かり荷物を受け取るバゲージクレームをサーキット場に見立て、レーシングカーが走っているイメージを表現した事例がありますよ。鉄道・空港ともに10年ほどさまざまな広告を手掛けてきました。
▲サーキット場に見立てたバゲージクレーム
どのような場所にどのような広告を出すのかを考えるところが大変であり、おもしろいところです。
卯岡
人の興味を惹くため、クリエイティビティが重要な仕事なんですね。
髙橋さん
まさに、クリエイティビティが弊社の1番の売りだと考えています。クリエイティビティは簡単に何かに取って代われるものではない分、「ベストクルーズにお願いしよう」と思っていただける理由になりますから。
自社媒体を持っていることは、ふだん特に打ち出していないんです。権利は永続的にあるものではありませんから。なのに、権利に溺れると脳みそは動かなくなってしまうんですよね。だからこそ、「自社媒体を持っている」権利自体を会社の売りにはしたくないんです。
卯岡
創造力は一朝一夕には培われないものだと思います。
髙橋さん
「常に創造力を鍛えていかなければ」という危機感がありますね。
僕は「代理店」というキーワードが好きじゃないんですよ。代理するのではなく、一緒におもしろいことをやっていきたい。そもそも、インターネットの発達に伴い、ただ代理するだけの店がいらなくなってきているとも感じています。代理店の強みであった既存の利権が不要になりますから。
一方で、変わらず求められ続けるのはアイディア、つまりクリエイティビティです。クリエイティブは代理ではないと、仕事をしていてつくづく感じているんですよ。僕はクリエイティブは伴走、協奏だと思っています。
卯岡
掛け合わすことで、よりおもしろいものができるということでしょうか。
髙橋さん
それもありますね。あとは、時代背景として、人との関わりが求められている側面があるんじゃないかとも思っているんです。ネットにより利便性が向上し、家にいながらにして人と交流できる時代になりました。
しかし、その一方で、オフ会やフェスなどリアルイベントの人気も上がっていると感じています。「ネットだけでいいや」とはならないわけなんですね。それは、人間関係が希薄になると、深層心理のどこかで寂しさを感じる人が一定数いるという表れじゃないかと思うんです。むしろ、便利になればなるほど、リアルな付き合いも重要視されるんじゃないかと。
卯岡
なるほど。
髙橋さん
仕事にも、リアルな付き合いが求められる部分があると思うんです。お客さんも、取引先という立場の前にひとりの社会人であり、もっと俯瞰して見るとひとりの人間です。ひとりの人間として、「本心では仕事を楽しみたい」「おもしろがりたい」「やりがいを感じたい」と思っている人は多いのではないでしょうか。
卯岡
たとえ生活のための仕事であっても、ですね。
髙橋さん
「生活ができれば仕事はつまらなくてもいいや」と思っている人でも、底の底では楽しみたい気持ちがあるのではと思います。だからこそ、仕事相手として楽しくやりがいのある仕事を提案したいですし、一緒に取り組んでいきたい。伴走者としての関係を目指していきたいですね。
一芸に秀でたメンバーが欲しい。「ドラクエ採用」実施中
卯岡
採用についてはいかがでしょうか。
髙橋さん
必要なときに必要な人が増えていけばいいなと考えています。「ドラクエ採用」「ルイーダの酒場採用」と僕が勝手に呼んでいるんです。
卯岡
どういう採用なのでしょうか。
髙橋さん
RPGゲームのパーティーは、全員魔法使いではダメなんです。『ドラゴンクエスト』に出てくる「ルイーダの酒場」は、必要なスキルを持った仲間を探す場所なのですが、会社もそれは同じだなと。つまり、今いるメンバーが持っていない要素を持っている人を採用したいんです。
今ある部署の部長たちは、当時のメンバーが持っていなかった要素を持っていたから採用した人ですね。各部署の部長には、人事権も含めて仕事を任せています。
僕が採用の判断を行う際は、僕が敵わないなと思う部分がある人かどうかを見ています。言い方によっては偉そうだと思われてしまうかもしれませんが……。
卯岡
人柄部分では、どのような方が多いですか?
髙橋さん
相手の気持ちになって考えられる人が多いですね。 カラーは部署によって異なりますよ。
たとえば専務である僕の実弟が採用したメンバーは、彼がサッカー部出身なこともあり、体育会系のノリの人が多い(笑)。山梨にカブトムシを取りに行こうなんて社内イベントを立てたり参加したりするのは、体育会系メンバーが中心です。そうそう、弊社には現役サッカー選手の社員もいるんですよ。
卯岡
えっ、引退した方ではなくですか?
髙橋さん
はい。とても優秀で、サッカーと両立しながら働いてくれています。何か一芸を持っている人を採用することで、その人を応援したいんですよ。というのも、僕自身が音楽と両立しながらここまでやってきたからでもあるんですが。
卯岡
そうなんですね!
髙橋さん
アーティスト活動をしていまして、「音楽と両立ができないか」と父と共同経営者が始めた弊社に就職し、その後代表になったんです。当時は始発から終電まで仕事をするのが当たり前のような時代。僕は音楽を続けたかったので、父たちの会社はどうなんだろうと労働体系を訊いてみたところ、ホワイトだったのが入社を希望した理由なんです(笑)。
代表ふたりが独立時に得た縁を元に仕事をしていた会社で、規模は大きくなかった。新しい仕事を考えて営業して……とやれる仕事がたくさんあり、楽しかったですね。最終的には財務以外のすべての業務を一通り経験できました。
卯岡
音楽活動も続けられたのですか?
髙橋さん
目論見通り続けられました。そして、仕事での契機が訪れます。多く仕事をいただいていたクライアントに「音楽をやっている」と話していたら、僕の作った曲をCMソングに採用するというチャンスを得たんです。自分の音楽が認められたことが自信に繋がり、比重をきちんと割いて活動を続けられるようになりました。
卯岡
ユニークな経歴ですね……!
髙橋さん
今でも楽曲制作をしてリリースするなど、音楽活動は続けています。だから、仕事に限らず、何かをがんばっている人を応援したいんです。
卯岡
素敵です。
クリエイティビティの源泉「新しい体験」を後押しする“nexperience賞”
髙橋さん
クリエイティビティにもつながるのが、弊社で行っているnexperience賞です。これは、3カ月に1回新しい体験や経験を自己申告で発表し、投票で1位に選ばれた人に賞金が出る社内イベントなんですよ。
卯岡
賞金!
髙橋さん
新しい体験や経験は、自分にも仕事にもプラスになりますから。些細なことでもいいんです。
卯岡
たとえばどのようなものがありましたか?
髙橋さん
「客前でのカラオケ熱唱」「格安スマホ」「スリッパでの帰宅」「親知らず抜歯」などですね。
卯岡
スリッパでの帰宅が気になりますね……(笑)。髙橋さん自身の最近の初体験はなんでしょうか。
髙橋さん
超音波美容ですね。
卯岡
美意識が高い……!
髙橋さん
40歳になり、美容や健康を意識し始めました。小顔になりましたよ。
年齢でいうと、最近、人生についてめちゃくちゃ考えるようになりました。人生がもし80年だとすると、僕はもう折り返し地点にいるんですよね。新しくておもしろいことを考えて生み出していかなければいけないこの業界において、流行最先端の提案は若い人からどんどん発信してほしいと思っています。
卯岡
次の世代にバトンタッチしていくということでしょうか。
髙橋さん
そうなっていかないとおかしいだろうと思いますね。だから、45歳くらいまではがむしゃらに今の仕事をして、そこからは若い人に託していきたいなと。お金があるに越したことはありませんが、お金儲けをメインに仕事をするのは好きではないので。そこからは、これまでに培ってきたノウハウを伝えるなど、別のフィールドで活躍したいです。
解放感を得られる環境を作りたい
卯岡
現在のオフィスについてお聞かせください。
髙橋さん
本当は移転を考えたいんですが、条件面が厳しいので、なかなか合致する物件が見つからないんですよね。
卯岡
どういった条件ですか?
髙橋さん
とにかくマストなのが、駐車場。社用車を置きたいのでできれば2台分がいいんですが、最低でも1台分は必要ですね。先ほどお話したように、移動に公共交通機関やタクシーを使えない事情があるため、どうしても削れない部分なんです。
卯岡
守秘義務ですね。
髙橋さん
業務上必要となるのはスペースもです。什器を扱っているので、保管スペースだけでもバカにならなくて。必要なスペースを確保できて駐車場があり、かつ予算に見合う物件となると、かなり厳しくなってしまうんですよね。なので、現在は今のオフィスでできる工夫をしているところです。
卯岡
スペースの活用に関する工夫ですか?
髙橋さん
はい。たとえば、紙をできるだけ発生させずに資料をデジタル化するといった保管場所の削減や、デスクのレイアウトですね。あとは、フリーアドレスも検討中です。
卯岡
移転するならどのようなオフィスがいいという理想はありますか?
髙橋さん
あくまで理想ですが、スケルトンで天井高があるところがいいですね。解放感がほしい。窮屈な場所だと、アイディアも小さくなってしまいそうな気がするんですよ。広々とした場所で、目いっぱいクリエイティブな仕事をしたい。
こう話していると、「いっそ倉庫でもいいんじゃないの」という話になるんですが(笑)。会議室以外の壁をなくしたいんですよ。
何色にも染まらない黒×スタイリッシュなベストクルーズのオフィス
インタビューにもあったように、守秘義務のある商材を扱っているため、執務スペースの取材が難しいベストクルーズ。コンセプトはコーポレートカラーの「黒」を取り入れた、スタイリッシュなデザインなのだとか。
髙橋さん
「何色にも染まらない」ことから、黒をコーポレートカラーにしています。あとは解放感が少しでも出るようにこだわっていますね。狭いスペースなのですが、できるだけ広く見せたくて。会議室はガラス張りで、ふだんはブラインドを開けていることも多いんです。
卯岡
理想のオフィスでも、壁をできる限りなくしたいとおっしゃられていましたね。
髙橋さん
会議室は会話が聞こえないよう壁を作る必要があるんですが、その制約のなかでも広く見せたいので。おかげさまで好評ですね。
「一芸を磨く」「新たな体験を後押しする」社のあり方が育む新たな創造
自身の半生から仕事との向き合い方、後進へのバトンの渡し方まで、多岐に渡るお話をしてくださった髙橋さん。新しいアイディアを生む源泉は、新しい体験への挑戦を後押しする環境に育まれ続けているのでしょう。
大切にしているミッション「co-nexperience」の「co」は、コラボレーションを指します。コラボレーションにより、さらなる「新しい(new)」「次の(next)」「体験(experience)」を。ベストクルーズがオフィスに「解放感」を求めるのは、自由に創造力を発揮するためのゆとりを欲しているからなのかもしれません。