- オフィスインタビュー
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最先端技術を扱いながらも、古き良きものを大切に。ネイチャー&フューチャーを体現したウフルのオフィス
会社のあり方を体現したオフィスを作るためには、既存のオフィスの作り方に縛られないことも、時に必要なのかもしれません。
「ネイチャー&フューチャー」をコンセプトに掲げる株式会社ウフルのオフィスは、地下鉄日比谷線「神谷町」駅より徒歩約4分。コンセプトを具現化するためにデザインを依頼したのは、オフィスデザイン専門の会社ではなく、イベントプロデュースを手がける会社だったのだとか。
ホテルラウンジのようなオープンスペースで出迎えてくれたのは、人事総務担当の中山さん、髙木さんのおふたり。さっそくお話をお伺いしました。
大手通信会社や上場会社での営業・人事・経営企画経験を経て、海外での経営に参画。
同時に異文化におけるオフィス改装の難しさを経験。株式会社ウフルでは管理部門の企画業務全般を担当。
大学卒業後、外資系航空会社で客室乗務員としての勤務を経て、全くの未経験であるIT業界へ転職。ウフルに入社し、未経験ながら人事に配属。オフィス移転プロジェクト参画や営業部門との兼務など幅広い分野で経験を積み、現在は労務管理から社内コミュニケーションまで人事総務の業務全般を担当。
目次
事業内容は多種多様。今注目されているのはスタジアムを便利にするIoT
卯岡
ウフルさんのホームページには、多くの事業内容が紹介されていました。主な事業は何ですか?
中山さん
2016年頃から本格的にIoTサービス事業を展開していますが、ベースとなるのはクラウド事業ですね。マルチクラウドを主体として各種クラウド製品の導入、開発支援を行っています。
髙木さん
その他、映画のプロモーションや、IoTサービスの導入支援、コミュニティ運営なども手掛けています。IoT事業では、エビの陸上養殖支援システムの開発やスタジアム向けのソリューション提供などで、さまざまな企業と協業しているんです。
卯岡
エビの養殖とスタジアム…畑違いですね。
髙木さん
あまりにも幅広いので、取引先担当者の方が最初に関わった社員がどのプロジェクトに携わっているかによって、当社に抱くイメージは大きく異なっているのではないかと思います。
今、特に注目されているのはスタジアムのIoTです。2019年7月に実施したスタジアムでの実証実験は、テレビでもご紹介いただきました。また他のメディアからも取材のご依頼をいただいており、期待が高まっています。
卯岡
どのようなIoTなんですか?
中山さん
主にふたつの機能があります。ひとつ目は、スポーツ観戦における楽しさ・エンゲージメントの見える化です。配置されたセンサーにより、ゲームの盛り上がりを音の大きさなどで判別して可視化する機能です。
卯岡
盛り上がっていないと判断されるとどうなるんですか?
中山さん
電光掲示板に盛り上がり度数が表示されます。「もっと声を出していこう」といった表示を出して観客の盛り上がりを後押ししたり、運営側がデータを分析・活用したりもできますね。
髙木さん
もうひとつは、「スマホで選んだグルメやグッズを座席まで届けてくれる」という新たなスタジアム体験を提供するIoTソリューションです。スマホでオーダーすると、売り子さんに注文が届いて自分の席まで持ってきてもらえるので、席にいながらにして購入できるんですよ。
卯岡
これはIoTがよくわからない方にもイメージしやすいサービスですね。便利そう…!
▲執務スペースには、スタジアムの椅子が置かれている
▲椅子に繋がれているQRコードを読み取り、注文。席を立たずに飲食物の購入が可能だ
髙木さん
サッカーのように試合構成が前後半に分かれているスポーツは、休憩時間に一斉にお客さんが買いに押し寄せるんですよね。店側も大変ですし、お客さんも欲しいときに買いに行きづらかったり、長蛇の列に並ばなければならなかったりしているのが現状です。このIoTを使えば、そうした無駄がなくなるんですよ。
中山さん
評判は上々で、今後さらに提携するスタジアムが増えていく見込みです。
卯岡
事業内容が多岐に渡っているのはなぜですか?
髙木さん
やってみたい仕事に手を伸ばした結果広がっていったものもあれば、付き合いのある会社さんから「こんなことできますか?」と尋ねられるうちに広がっていったものもありますね。
卯岡
では、オフィス移転の理由は、事業の拡大によるキャパシティの問題でしょうか?
髙木さん
そうした理由もなくはないんですが、もともと入っていたオフィスビルが再開発のため取り壊されることになってしまったのが直接的な理由です。
卯岡
立ち退かなければならなかったんですね。
髙木さん
はい。前オフィスは今のオフィスと目と鼻の先、徒歩40秒程度のところにあったんです。同じ神谷町エリアで移転先を探していたら、ちょうどここが空きまして、非常に近い移転となりました。ギリギリまで前オフィスで働いていたので、最後の最後の荷物は自分たちの手でも運んだんですよ(笑)
中山さん
引っ越し費用は少し抑えられたんじゃないかと思います(笑)
卯岡
今のオフィスは非常におしゃれですが、前のオフィスから内装にもこだわられていたんでしょうか。
髙木さん
いえ、居抜きだったので、いわゆるふつうのオフィスです。スペースもギリギリで、たこ部屋状態でした。椅子と机は不揃いで、面積が狭いから席と席との間隔も狭くて。
中山さん
フロアもやむを得ず2フロアに分かれていたため、不便でしたね。移転してワンフロアになったので、とても楽になりました。
卯岡
では、さっそくオフィスを見学させてください!
コンセプトは「ネイチャー&フューチャー」。ウフルのオフィス、見学ツアー
ウフルのオフィスのコンセプトは、「ネイチャー&フューチャー」。「最先端の技術」を扱う事業内容と、「サスティナブルなものを愛している」経営陣の想いが理由です。最先端と、古き良き自然との融合・共存にこだわって作られました。
個性を前面に出すため、デザインを依頼したのは、何とイベント企画会社。一方、施工はオフィスを多く手掛ける施工会社が行ったため、オフィスづくりのプロの常識とデザイン性との折り合いが難しかったのだといいます。
さて、そんなデザインにこだわったオフィス。さっそくご紹介していきましょう。
「ここ、会社!?」訪れる人が戸惑う真っ白なエントランス
エントランスは、特徴的な真っ白な空間。まばゆいほどの「白」です。
髙木さん
ぎょっとされることの多いエントランスです(笑)
卯岡
白一色なのが、かえって強いインパクトがありますよね。壁も床も、会社ロゴも真っ白。
髙木さん
ロゴの色はギリギリまで悩みに悩んだので、施工会社のリミットに間に合わなかったんです。結局、アクリルを裁断してくれる会社に頼み、できあがってきたパーツを社員たちで水平器を使って貼り付けました。
卯岡
全然違和感ないですね…! なぜ真っ白にしたんですか?
髙木さん
違和感がある空間にしたかったんです。エントランスでは、コンセプトのひとつである「フューチャー感」を出したかった。オフィス内に入ったときに目の前が広がる瞬間を演出するためにも、あえてシンプルかつ異質な空間にしようと考えたんです。
卯岡
かなり異質だと思います。来社される方にも驚かれるんじゃないですか?
中山さん
採用応募者の方も、「えっ?」と戸惑われることが多いようですね。人の第一印象って、7~8秒程度で決まるといいます。会社の印象も同じだと思っていまして、この驚きや戸惑いがインパクトを残してくれるんじゃないかと思っています。実際に、入社の決め手がオフィスだった方もいるんです。
卯岡
効果がちゃんと出ているんですね!
髙木さん
ただ、真っ白すぎる空間だと、歩くときに不安を感じさせてしまうこともわかりまして…。対策として、曲がり角に青いベアブリックを置きました。
▲エントランスを左に曲がった角にいるベアブリックには、ただのインテリアではなく目印という役割が
卯岡
あのクマには、そうした役目があったんですね。コズミックな青が、コンセプトにも合っていますね。
中山さん
社員の私物なので、たまたまなんですよ。オフィス内には、小さいサイズのベアもたくさんいるので、後ほどご覧ください(笑)
おしゃれ度抜群!「ネイチャー」溢れるオープンスペース
卯岡
先ほどお話していらっしゃったように、本当にいきなり目の前が開けますよね。広い。そしておしゃれ。ホテルのラウンジのようです。
髙木さん
ソファも、雰囲気に合うものをプロジェクトメンバーで熟考しました。
卯岡
受付の木目カウンターも、ネイチャー感がありますね。
髙木さん
実は、あのロゴも自前で貼り付けたんです。
▲オーダー品のように見えるカウンターは、市販のものにロゴをDIYで貼り付けたもの
中山さん
観葉植物も多く揃えました。
卯岡
あの天井からぶら下がっているグリーンは…?
髙木さん
あれも、もとは本物だったのですが、逆さに宙づりすると管理がなおさら大変で、サスティナブルじゃないね、ということで、今はイミテーショングリーンを利用しています。
卯岡
床のグリーンと絨毯との使い分けも印象的ですね。
髙木さん
このオフィスのテーマである「最先端と古き良き自然の融合」が、このグリーンの床と、天井に表れています。どちらも、執務スペースの中にまで繋がっているんです。
ただ、天井の照明が見た目重視のダウンライトのため、執務スペースに同じものを使うのは照度が足りないと施工会社さんにダメ出しをされてしまう…といった苦労もありました。
卯岡
オープンスペースはかなり広いですが、どういった使い方をされているのでしょうか。
中山さん
ちょっとした打ち合わせや仕事、ランチ、休憩など、さまざまですね。朝礼や懇親会の場所としても活用しています。そろそろハロウィンイベントの企画を立てなければ…と思っているところです。
髙木さん
誰かしらがここでランチをしているので、交流のきっかけの場にもなるんです。仕事の都合でランチがズレこんでしまったときも、周りに気兼ねせずゆっくり食べられると喜ばれています。
▲窓の外にはグリーンも望める。「借景です(笑)」と髙木さん
中山さん
あとは、窓際のソロスペースも人気です。ひとりで外を見ながら食べたい人や、作業をしたい人がよく利用していますよ。オフィスの中で、唯一外に向いて作業ができる場所でもあります。
卯岡
こちらの棚に並んでいるのが、先ほどお話に出てきたベアブリックですね。
中山さん
エントランスにいたベアブリックの持ち主の私物コーナーです。
▲ベアブリックの他、本やフィギュア、レコードなどが飾られている
髙木さん
自宅には置いておけないらしいという噂もあります(笑)
卯岡
でも、あつらえたように雰囲気に合いますね!
卯岡
こちらのベンチも、ナチュラルな雰囲気で印象的ですね。
中山さん
これは紙製のベンチなんです。磁石でくっつけて長くでき、処分するときは燃えるゴミでOKなんですよ。
髙木さん
ただ、新品の間は紙が鋭くて、ちょっと痛かったですね。今では、すっかり紙が柔らかくなって、座り心地も良くなりました。
ランチにも、打ち合わせにも。社員に人気の畳スペース
▲紙製ベンチの向こう側が執務スペース。統一感がある内装だ
執務スペースは、ガラス扉の向こう側。「融合」にこだわったため、両スペースは天井・床が地続きになっています。
▲畳スペース奥の壁は全面ホワイトボード。打ち合わせにも便利
卯岡
わ、畳スペースもあるんですね!
髙木さん
畳を愛する社員が一定数いまして、「靴を脱いで休憩できる場所がほしい」とリクエストされました。当社には外国人メンバーもいるため、日本らしいスペースを作りたいよね、という話が持ち上がっていたのも畳スペースを作った理由です。
中山さん
ここでランチを食べる社員もいます。打ち合わせにも活用されていますね。仕切り部分は段になっていて、畳に座ってテーブルとして使ったり、ベンチシートとして座ったりできるんですよ。
椅子と机を揃え、統一感が生まれた執務スペース
執務スペースは、移転を機に椅子と机を一新。移転後、すでにスペースは大賑わいです。
卯岡
今後、ますます人を増やしていく流れにあるのでしょうか?
中山さん
ええ。業績拡大を目指すと、どうしても人的リソースの拡大も必要ですからね。
髙木さん
デザインにこだわったためにぎゅうぎゅう詰めに感じませんが、ただの白い部屋だったら、すでに人が多すぎると感じられてしまうのではないかと思っています。レイアウト変更も兼ねた拡張も考えていますが、今のオフィスのコンセプトはそのまま引き継ぐつもりです。
卯岡
エンジニアが多い会社なのではないかと思うのですが、基本的には出社スタイルなのでしょうか。
中山さん
現状は、イレギュラー対応のときのみリモートが認められている程度です。ただ、今後はサテライトオフィスなどを作る可能性もゼロではありません。
▲会議室の一室。椅子の座面は無機質な空間にならないよう、あえて鮮やかな黄緑をチョイス
髙木さん
今回、オフィスを移転するにあたり、会議室を3室増やし8室に、その他畳スペースなどミーティングできるスペースを増やしたんです。IT企業なんですが、来社されて打ち合わせすることが多いんですよね。オフィスが担う役割はまだまだ重要だと感じています。
最先端技術を扱いながらも、古き良きものを大切に。会社のあり方が表れたオフィス
エントランスの真っ白な空間の先に広がる、あたたかみのあるおしゃれなオフィス。「デザインを重視した結果、エッジが効きすぎちゃったかもしれません(笑)」と髙木さんは語ってくれましたが、ただ見た目を重視したのではなく、根底には「ネイチャー&フューチャー」という社のあり方が存在していました。
最先端×古き良きものを大切にするウフル。今後の取り組みも気になる企業です。