取材先
LINEヤフー株式会社
https://www.lycorp.co.jp/ja/ 公式サイト
はたらくひとにとってのIBASHO=オフィスに
込められた想いを載せる情報メディア
「行かなければ」から「行きたい」へ。LINEヤフーが挑んだ、出社意欲を高めるオフィスづくり
2023年、LINE、ヤフーなどのグループ会社5社が合併して誕生したLINEヤフー株式会社。
合併の翌年、同社は週3日のオフィス出社を基本とする方針を打ち出し、方針に見合ったキャパシティを確保するために赤坂オフィスへの移転を決めました。
しかし、コロナ禍を経てリモートワークが定着した社員からは、変化に対する戸惑いの声もあったといいます。
そこで移転プロジェクトでは、物理的な場所の確保に留まらない、「出社してよかった」と感じられるオフィス環境の構築を決意。キーワードやコンセプトの考案から社員を巻き込み、議論を重ねて空間を作り上げました。
「オフィスの存在意義」をどう設定し、どのような工夫を凝らしたのか、プロジェクトリードの坂⼝ 卓さん、デザインリードの佐藤晋平さん、「Dining/Cafe」を担当した長谷川由紀さんと石下美保さんに聞きました。
目次
■坂口 卓さん
人事総務CBU 総務ユニットリード

建設会社で企業のオフィス構築におけるプロジェクトマネジメントに従事し、その後、ゲーム会社で海外オフィスの立ち上げを担当。2013年に旧ヤフーへ入社し、ヤフーの歴代オフィスやPayPay設立時のオフィス構築を手がける。
赤坂オフィス開発では、プロジェクト全体の責任者として進行管理およびプロジェクトマネジメントを担った。
現在は総務部門の責任者を務める。
■佐藤 晋平さん
デザインCBU VXDユニット VXマネジメントディビジョン

隈研吾建築都市設計事務所で国内外の建築設計に従事した後、2016年に旧LINEへ入社。空間デザインを通じた企業ブランディングに携わり、新宿ミライナオフィスや四谷オフィスなどの歴代オフィス設計のほか、各種サービスのイベント会場デザインを手がける。
赤坂オフィス開発では、デザイン責任者として設計およびデザインを担当した。
■⻑⾕川 由紀さん
2006年ヤフー入社。ソーシャルネット・メディア系サービス企画業務を経て2015年よりカフェテリア運営業務に従事。現在は紀尾井町・赤坂オフィスのカフェテリアを担当し、サービス連携やイベント企画など運営全般を担当している。 人事総務CBU 人事労務企画ユニットグッドコンディションサポートディビジョン所属。
■⽯下 美保さん
2003年ヤフー入社。サービス企画業務を経て2014年よりカフェテリア運営業務に従事。現在は赤坂オフィスのカフェテリアを担当し、レイアウト決めから運⽤設計まで構築業務全般を担当する。 人事総務CBU 人事労務企画ユニットグッドコンディションサポートディビジョン所属。

まずは、貴社の事業内容についてご紹介いただけますか。
当社は、LINE株式会社やヤフー株式会社などのグループ会社による再編を経て、2023年10月に誕生したテックカンパニーです。
検索・ポータル、eコマース、メッセンジャー、広告といった多岐にわたる事業を通じて、ユーザーの日常に驚きや感動を届ける幅広いサービスを提供しています。
お2人は、それぞれ旧ヤフー、旧LINE時代からオフィスづくりに携わってこられたそうですね。
新卒で入社した建設会社でオフィスのプロジェクトマネジメントに従事した後、2013年に旧ヤフーへ転職しました。以降、歴代オフィスの立ち上げや構築を手がけています。
設計事務所勤務を経て2016年に旧LINEへ入社し、発足したばかりの空間デザインチームに配属されました。その後は、LINEの歴代オフィスやイベント会場のデザインに携わり、現在も同じような形でオフィスづくりに携わっています。
今回の移転は、LINEヤフーとして初の大規模移転プロジェクトだったそうですね。
そうですね。初めて旧ヤフーと旧LINEが一体的に働く場所なので、それぞれの方針や特徴を「LINEヤフーらしさ」として昇華させ、誰もが心地よく働けるオフィスにしたいと考えました。
どちらの企業も、フラットな組織風土や、社員と経営の距離が比較的近い点など、共通する部分も多くあります。おかげで、それぞれの文化やオフィスの設計方針などを融合しやすく、スムーズにプロジェクトを進行できたと感じています。
赤坂オフィスを立ち上げることになった経緯を教えていただけますか。

週3日出社を基本としたハイブリッドワークへのシフトが決まり、物理的スペースの不足が明らかになったのがきっかけです。旧ヤフーと旧LINEのいずれも、コロナ禍の際にオフィス規模を大きく縮小していたため、既存の本社施設のみでは圧倒的にキャパシティが不足していました。
予算面を踏まえつつ、都内で十分な床面積を確保できる物件を急ピッチで探したところ、要件を満たしたのが赤坂トラストタワーだったのです。
週3日の出社方針に対して、社員の皆さんの反応はいかがでしたか。
フルリモートに近い働き方に慣れている社員にとって、出社は少し面倒ですよね。「会社の方針だから」とスムーズに受け入れる社員もいる一方 、なかにはネガティブな反応もありました。
出社にシフトした背景には、社員に高いパフォーマンスを発揮し、組織を超えた共創を生み出してほしいという狙いがあります。出社に対するマイナスの感情を払拭し、よりよい仕事ができる環境を作りたいと思いました。
在宅よりも成果が出るオフィスなら、進んで出社したくなりますよね。どのように「出社したくなるオフィス」を構築していったのでしょう。
実際にオフィスを使うのは現場の社員ですから、できるだけ多くの社員の声を吸い上げることが大切です。まずは、全部署横断の「オフィス分科会」を立ち上げ、プロジェクトチームだけでなく「全員で作るオフィス」という機運を高めました。
分科会では、どのようなことを話し合ったのですか。
ハイブリッドワークという新たな働き方における新オフィスで起こってほしい行動や理想の姿について、思い思いに言葉を出してもらい、オフィスコンセプトを決めることからスタートしました。
それが、LINEヤフーのコーポレートロゴにも採⽤されたコンセプト「Stay Closer, Go Further」と、「Talk」、「Boost」、「Easy」という3つのキーワードです。
出社することで快適に仕事ができ、会話がはずみ、仕事が前に進む。さらには、オフィスで生まれた人と人とのつながりが新たな価値を生み出していく。オフィスの存在意義が定まったことで、空間の特徴や必要な機能が描
きやすくなりました。
「新入社員」など具体的なペルソナを設定して1日のはたらき方をイメージし、「必要な場所」「必要な物」を考える時間もつくりました。分科会に参加してくれたメンバーは、新しいオフィスに対する思いや期待が私たち以上に強く、非常に有意義な時間でしたね。
「オフィスが完成したら、細かい部分までフィードバックしてほしい」という声が上がったほどでした。
では、実際にオフィスをご紹介いただきます。まずは、「LINEヤフーらしさ」を体現したエントランスからですね。落ち着いた雰囲気ですが、キャラクターがとても良いアクセントになっています。

キャラクターは、最もわかりやすい「LINEヤフーらしさ」ですね。どれも、このエントランスに置くために一から製作したものなんですよ。サイズ感はもちろん、ポーズや素材にもこだわりました。
これは、エントランスだけでなくオフィス全体のデザインにいえることですが、LINEヤフーのロゴにも採⽤されている「62度」という角度をオフィスの随所に取り入れています。
床の色の境界線、照明器具の角度、ベンチの角度などを見ながら、「これもそうかな?」「ここは違うね」といった会話の糸⼝にもなっているようです。
各フロアでは、期待される役割ごとにエリアを整理し、集中するエリア、ミーティングのためのエリア、コミュニケーションを誘発する共⽤エリアを設けました。仕事の性質や、自分のコンディションにあわせて、はたらく場所を選ぶことができます。
フロアはL字型の構造になっており、執務室と共⽤部の間の動線を「CONNECT STREET」と名付けて共⽤スペースにしました。「会議室をとるほどではないけど、ちょっと意見交換をしたい」というときや、気分を変えて仕事をしたいときなどに使っている方が多いですね。
動線上に人が集まることで偶発的なコミュニケーションが生まれ、新しい取り組みや改善につながることも期待しています。


「CONNECT HUB」は、少人数のミーティングからプロジェクトのキックオフまで、多様な使い方ができるオープンスペースです。会議室にはない開放感があり、会話が弾むと好評です。

執務スペースは、半分がデュアルモニターなのですね。
在宅時代、自分の好みで執務スペースをカスタマイズしていた方にも喜んでもらっています。椅子も、社員アンケートで一番人気だったエルゴヒューマンにするなど、「在宅の環境と比べて遜色ない」状態をめざしています。
デスクの半分は昇降デスクで、天板の位置を調整することで正しい姿勢を維持できます。

こちらは、一人で作業に没頭したい人のための「STUDY ROOM」です。


「STUDY ROOM」に隣接しているのが、リフレッシュスペース「POOL LOUNGE」です。

「POOL LOUNGE」は靴を脱いでくつろげる場所。難しい仕事が続いて疲れたときや、考えがまとまらなくなったときは、能動的に休養をとることが大切です。自宅のお気に入りの場所に身を投げ出すような感覚で、体と心をゆっくり休めてほしいと思ってつくりました。
実は、以前のオフィスにもリラックススペースを設けていたのですが、周囲の視線を遮るものがなく、あまり利⽤されなかったんです。今回は人目を気にせずくつろげるよう、周囲の壁を高くしています。
共創を後押ししたり、集中と対話を切り替えたりするための設備としては、「THEATER ROOM」もあります。
映像の確認作業やプレゼンテーションの練習、チームビルディングなどに使われるほか、ゲームを楽しむサークルの活動にも利⽤されています。

「健康経営優良法人」に10年連続で認定されているだけに、社員の健康への気配りもすばらしいですね。
「WELLNESS CORNER」には、歩幅を意識できるウォーキングスペースやランニングマシンなどを配置しました。
仕事の合間に体を動かす人のほか、マシンで歩きながら朝のミーティングをしている人もよく見かけます。



当社では、グッドコンディションサポートディビジョンという部署が社員の健康支援を担当しています。また、障がいをお持ちの方が多く活躍するLINEヤフービジネスサポート株式会社という特例子会社もあり、そちらのメンバーが運営するマッサージルームや、産休・育休を経て復職した女性社員が搾乳するための「MOTHER’S ROOM」なども整っているんですよ。
「MOTHER’S ROOM」には搾乳した母乳を保存するための冷蔵庫もあり、とても好評です。

ちなみに、13階と21階にある「Dining/Cafe」は、グッドコンディションサポートディビジョンに所属する長谷川さんと石下さんがレイアウト決めから運⽤設計、イベント企画までを担当してくれました。
ここからは、長谷川さんと石下さんにご案内いただきます。13階は、量り売りのビュッフェや軽食が中心なんですね。


LINEミニアプリによるモバイルオーダーで、ハンバーガー・サンドイッチ・サラダボウルなどをカスタマイズ注文できます。オープン前の試食会での意見を参考に、通年提供のベーシックなメニューと、季節限定メニューをラインナップしました。
完成の通知が来たら棚からピックアップするシステムなので、忙しくて並ぶ暇がない方にも好評です。


サークル活動との連携によるコミュニケーション促進を目的として、レゴができるデスクや、囲碁将棋のマス目が入ったテーブル席、卓球台といった遊び心のある設備も導入しました。カーテンで仕切れる個室スペースでは、社員同士の懇親会も開催されています。
コミュニケーションの場としても機能しているのですね。




21階は、また雰囲気が異なりますね。
こちらは、定食や蕎麦、うどん、カレーなどのメニューが中心です。
ちなみに、毎日うどんを打っている紀尾井町オフィスに倣って、こちらでは毎日お蕎麦を打っているんですよ。
お蕎麦の産地も定期的に変えているので、「味わいの違う打ちたての蕎麦が味わえる」と喜ばれています。


これも紀尾井町オフィスに倣って、朝食も提供しています。提供開始時間は午前8時30分から。少し早く出社して、Diningで仕事をしながら朝食をとる社員の姿もよく見かけます。
一人暮らしの社員や、忙しい社員のなかには朝食を抜いてしまう人も多いので、1日に必要な野菜の2分の1量を摂れる具だくさんスープなど、栄養バランスを意識した食事を提供することで皆さんの健康をサポートしていきたいですね。
ご案内ありがとうございました。最後に、坂⼝さんと佐藤さんのお2人に現状と展望をお聞きします。2026年5月の全フロアオープン後、社員の皆さんの反応はいかがですか。
定性的な評価ではありますが、おおむね好評なフィードバックをもらっています。なかには、所属部門の出社指定がある曜日以外に出社していたり、他のオフィスからわざわざ赤坂オフィスに来て仕事をしていたりする社員も。
出社を後押しできる環境をめざしてきたので、素直にうれしいですね。
赤坂オフィスの今後の展望をお聞かせください。
オープンしてまだ間もないので、まずは実際にどう使われているのか、しばらくデータを取っていきたいと考えています。どういうときに、どのくらいの時間Diningを利⽤しているのか、どこでどんな過ごし方をしている社員が多いのか。実態を見ながら、必要な改善を続けていきます。
また、オフィスにはたくさんの機能を⽤意していますが、存在を知らなければ使ってもらえません。社内広報とも連携しながら、「こんな場所があります」「こんな使い方ができます」と継続的に発信していくことも大切だと思っています。
設計した側が使い方を決め切ってしまうのではなく、社員自身がいろいろな場所を発見し、自分なりに使ってくれたらうれしいですね。社員のアイデアによって、これから赤坂オフィスがどう育っていくのか。私たち自身も楽しみにしています。