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- オフィスインタビュー
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ハイブリッドワーク時代に自律と交流を重視。ゼロボードのオフィス戦略
2021年設立のクライメートテック、株式会社ゼロボード。「世界をクリアに変えていく」をミッションに、温室効果ガス排出量の算定・可視化をはじめとしたサステナビリティ経営の支援事業を展開しています。
人員増加に伴い、シェアオフィスから自社拠点を設立。社員向けにアンケートを実施し、「オフィスに愛着を持ってほしい」という想いを反映させました。
ハイブリッド勤務を基本とする同社では、「出社したくなる場所」であることを重視。社員同士の交流を促す仕掛けや、見通しの良い開放的な空間づくりにこだわっています。今回はそんな想いが詰まったオフィスを見学させていただきました。
アパレル業界を経て、DMMグループに入社。営業事務から動画コンテンツ広報に転向。その後、ハードテックのスタートアップで広報として従事。退職後、フリーランス広報として活動する中、設立前から広報を支援してきたゼロボードに、2024年7月正式に広報マネージャとしてジョイン。2025年2月、広報・マーケティング部を発足し現職に就任。
2007年に損害保険会社へ入社し、企業営業部門で12年間にわたり営業事務・営業サポート業務に従事。2019年よりスタートアップに転職し、事務業務を担当。2021年9月、ゼロボード設立時に入社。当初はバックオフィス全般および営業事務を担当し、現在は経理業務と秘書業務を中心に担当している。社員一人ひとりが快適に業務を進められる環境づくりを意識し、日々の業務に取り組んでいる。
目次
初の自社拠点。社員の声を反映した愛着を持てるオフィス
御社の紹介と自己紹介をお願いします。

弊社の中核事業は、温室効果ガス(GHG)排出量の算定・可視化を実現するクラウドサービスの提供です。業界に先駆けてリリースした「Zeroboard」は、国内外合わせて15,000社を超える企業にご利用いただいています。
現在は、サステナビリティ法定開示を見据えたESGデータ収集・分析クラウドサービス「Zeroboard ESG」、サプライヤーのESG取り組み状況を可視化する「Dataseed SAQ」など、複数のサービスで構成される「Zeroboard Sustainability Platform」を展開。支援領域を脱炭素からサステナビリティ全般へと拡大しています。SaaSの提供だけでなく、カスタマーサクセスやコンサルタントによる伴走支援も行っています。
私と村林は初期メンバーで、私は広報・PR担当および広報・マーケティング部部長として働いています。
創業時は人数も少なく、私は営業と開発以外の業務全般に従事し、現在は経理と社長秘書として働いています。オフィス移転はコーポレート業務の一環として担当しました。
御社のオフィス遍歴と、移転の背景について教えていただけますか?
創業当初は品川のシェアオフィスを利用していました。人数が増えてきたタイミングで、「いつでも誰でも気軽に出社できる環境」を整えたいと考えたんです。
シェアオフィスは会員登録が必要だったり、単発利用には費用がかかったりと、少し出社のハードルがありました。
他社も利用する共有スペースでは、自由に交流やイベントを行うことに制約がありました。そこで、社員同士が自然に交流できる場を作るため、自社拠点を持つことでコミュニケーションの向上を目指しました。
何より重視したのは、「みんなのオフィス」という意識を持ってもらうことです。そのため、オフィス選びの段階から社員にアンケートを実施。希望のエリアや取り入れてほしい要素を募りました。渋谷か田町・浜松町か、といった具体的な選択肢も提示し、全社員で新オフィスを作り上げていきました。
社員参加型で進められたんですね。移転時は何名ほど在籍されていたのでしょうか。
移転時点で約100名でした。みんなにとって「ここが自分たちの場所だ」と思えるオフィスにしたかったので、そこは特にこだわりました。

御社の働き方ついて教えてください。
基本は出社とリモートのハイブリッド形式です。コアタイムなしのフルフレックス制で、日々の出社/在宅の選択や、何時から何時まで働くかといった就業時間の設定は、基本的に個人の裁量に任せられています。業務の状況やライフスタイルに合わせて、最も効率的かつ快適な働き方を選択できるようになっています。
チームによっては決まった曜日に出社する場合もありますが、関東圏以外に住む社員はフルリモートワークをしています。社員の自律性を尊重しつつ、柔軟で多様な働き方ができる環境です。
かなり柔軟ですね。その中で、オフィスはどんな役割を?
オフィスは単なる執務スペースではなく、コミュニケーションを促進する場としての役割を担っています。オフラインで顔を合わせ、つながりを深めるための交流の場と位置づけています。全エリア、フリーアドレスなので、普段接点がない人とも自然に交流できる環境になっています。結果として、組織全体の業務の活性化にもつながっています。

具体的には、どんな取り組みを?
新入社員の入社時にはランチ会が開催されます。また、毎月恒例の懇親会には誰でも参加でき、リラックスした雰囲気で自由にコミュニケーションをとることができるように人事部メンバーが工夫しています。半期に一回の全社会(All Hands)では、地方在住者も含めて全員がオフラインで交流する機会が設けられています。
有志メンバーで会社の風土や文化を醸成し改善する「カルテラ」という活動も始まりました。「カルチャー+テラ(スペイン語で”地球”)」の造語で、地球規模での課題解決の礎を築くというイメージで名付けられました。
業務に直結するようなことも含めて改善案をボトムアップで提案し、部署の垣根を超えて集まることで、多角的な視点でアイデアを出し合えています。
素敵な取り組みですね!運用面の課題にもしっかりと焦点を当てていらっしゃるのですね。
ありがとうございます。当時の会社のミッションが「見通しの良い世界をつくる」だったこともあり、オフィスコンセプトも「見通しのよいオフィス、空間、出社したくなるオフィス」を掲げました。
ビル自体もDBJグリーンビルディング認証を取得していて、環境・社会への配慮という点でもコンセプトとマッチしていました。
細部までこだわられたんですね。それではオフィスを拝見させてください!
「環境への想い」に満ちたゼロボードのオフィスツアー
自分たちらしさだけでなく、事業内容を連想させる内装にこだわったというゼロボード。「誠実さ」と「環境・緑」の要素が随所に散りばめられています。こだわりが詰まったオフィスを、エントランスから順に案内していただきました。
事業への想いを体現する、緑豊かなエントランス

ガラスの曲線と、植物が印象的で素敵な空間ですね…!とても広く感じます!
ありがとうございます。お客様や採用面接にこられる方からも「明るく開放的」という声をいただいています。

曲線美が際立つ、見通しの良い会議室

こちらはガラス張りの会議室です。光と視線を遮らず、開放感と空間の広がりを維持しながらも、しっかりと場を仕切ることを目指しました。そのため、角のないR曲線のガラスにこだわりました。
コンセプトである「見通しの良いオフィス」も表現しています。



状況に応じて、カーテンで仕切ることもできます。ほんの少しだけ透ける素材なので、圧迫感がなく重宝しています。
モニターに何が表示されているかまではわからない、でも誰かがいることはわかる、程よい透け感も素晴らしいです。高級感もある素材で、カフェスペース側にいる方にとってもストレスなく、おしゃれな空間が保たれていますね。

イベント開催も想定した、多機能オープンスペース

こちらのオープンスペースは、イベント開催を前提に設計しました。もちろん気軽に利用できる場所ですが、ステージやスクリーンを設置し、大人数が集まりやすい空間となるよう工夫しています。移転後すぐの全社会(All Hands)はこのスペースで行い、いすを並べて約70名で開催しました。過去にはドラマの撮影にも協力させていただきました。

ドラマ撮影にも…!この数センチの小上がりがあることで、オープンスペースに多機能感がプラスされますね。


自由な働き方を活用し、帰省先で勤務する社員もいます。また、外国籍の社員も増えました。こちらのカウンターには社員のみなさんが地元や旅先で買ってきたお土産が所狭しと並ぶこともあります(※撮影のため一時的に撤去)。様々な地域の食文化に触れられるので、出社の楽しみが増えたという声もあります。
お土産文化は社員同士の交流にもつながりますね!
また、福利厚生として設置しているコーヒーマシンでは、サステナブルなコーヒーを選定し提供しています。日々の小さなところにも、環境への想いを込めています。

グリーン以外にも、木材を使用した什器を取り入れています。こういったリラックススペースがあることで、「会社が働きやすさへの配慮をしてくれている」とポジティブな反応もありました。

様々なスタイルでの交流や気軽な打ち合わせができるよう、ファミレス席を設置しました。
街灯のようなライトが、穏やかな雰囲気を演出していますね。


集中力と居心地の良さを両立した執務室

執務室に入るためのセキュリティシステムは顔認証で解錠されます。マスクをしたままでも、両手が塞がっていてもロック解除できるので、非常に便利です。
確かに、1日に何度も通るからこそ、そういった細かなことでかなりストレス軽減につながりますね。

こちらが執務室です。単なる机と椅子を並べるのではなく、「出社したくなるような空間」を目指しました。完全フリーアドレスで、座席の種類も複数用意し、好みに合わせて選べるようにしています。
分け隔てなく好きな席を利用できるというのは、まさにコンセプトに沿った設計ですね。

執務室はどの席に座っても集中しやすいよう、目線が合わない設計にしています。ただ、執務室中央の大きなテーブルは唯一社員同士が向き合ってしまうため、目線が合わない程度の高さの観葉植物(フェイクグリーン)を置くことで、集中力が維持できるよう工夫しました。
なるほど。真正面に人がいて、かつモニターがない場合は頻繁に目が合ってしまいそうですもんね。そういった配慮も素晴らしいです!



リモート勤務の社員が多く、遠方や海外との商談もあるため、オンライン会議も盛んに行われます。そこで、電話ブースを10台配置しました。また、電話ブースは2種類あり、広さや色味も異なります。
ここでも、好みに合わせてブースを選択できるとは…!しかも空間に余裕があるので、体格の大きい方にとっても居心地が良さそうですね。
運用から見えた課題
実際に運用を始めると、設計段階では見えなかった課題も見えてきました。
課題というと…?
まず、空間の用途についてです。当初、リラックススペースに一定の面積を割きましたが、実際にはカジュアルな打ち合わせに使えるようなファミレス席の需要が非常に高いことがわかりました。
あともう一点、出社率による空間の雰囲気に関する課題があります。在宅勤務者が多く、出社者が少ない日には、広々としたラウンジスペースなどが無機質に感じられることがあります。特に人が少ない時でも空間に温かみや活気を感じられるよう、照明の調整やグリーンの配置など、社員があまりいない時でも無機質感が出ない工夫をさらに施す必要があると認識しています。
こうした課題に対しては、社員の意見も取り入れながら、できるものから順次取り組んでいきたいと考えています。
なるほど。そうした改善を経て、オフィスがさらに進化していく時が楽しみです。
全員がつながる拠点として。ゼロボードが描く、オフィスの未来
では、最後にオフィスに込める思いや働く人へのメッセージをお聞かせください。
人事部の想いも込めてお話しすると、このオフィスは会社と社員が共に成長するための重要な活動拠点だと思います。社員のみなさんが多様な働き方をする中で最高のパフォーマンスを発揮できる環境づくりにこれからも取り組んでいきたいと思います。
この場所を最大限に活用し、積極的に交流しながら新しい挑戦をし続けていけることを期待しています。リモートメンバーも含めた全社員を有機的につなぐ拠点として、愛着を持てるオフィスを全社員で築き上げたいですね。

ゼロボードのオフィスは、社員の働きやすさを第一に考えた、開放的で温かみのある空間でした。快適でデザイン性の高いワークプレイスは人材獲得にも貢献し、部門を超えた交流を促す場として、新しいアイデアやコラボレーションが生まれるハブの役割も担っているといいます。
ゼロボードして、今後の取り組みについてこのように語ってくださいました。
「今後は、オフィスをより活気ある場所にしていくため、展示の工夫などを通じて、会社の理念や雰囲気が伝わる空間づくりを進めていきたいと思っています。また、ハイブリッドワークをさらに快適にするために、在宅の社員と出社している社員がスムーズに連携できるよう、会議室やブースの環境も改善していく予定です。最適な環境の追求として、休憩時はよりリラックス、業務中は集中しやすい環境づくりに努め、社員の最高のパフォーマンス発揮を継続的に追及していきたいと考えています。」
今回のオフィス取材を通じて、社員一人ひとりの柔軟な働き方を深く尊重しながらも、リアルで顔を合わせる場の価値を大切にする姿勢が、オフィスの随所に息づいていることを強く実感しました。企業文化と空間設計が見事に融合した、これからの時代にふさわしいワークプレイスのあり方を見せていただきました。