-
- オフィスインタビュー
-
事業の拡大と働き方の多様化に合わせて進化するサワイグループホールディングスのオフィス
「なによりも健やかな暮らしのために」を企業理念に掲げ、高品質なジェネリック医薬品を安定的にお届けしているサワイグループホールディングス。同社は、急速な事業拡大と働き方の多様化を受け、本社ワークプレイスの改装を行いました。このプロジェクトを牽引したグループ総務部長の髙橋さんと、グループ総務部マネージャーの濵さんに、改装の狙い、空間づくりの工夫、社員の反応などをうかがいました。
1986年新薬メーカーに入社。MR(医薬情報担当者)、営業人材開発部、人事部、CNS営業部を経験し、2024年サワイグループホールディングス株式会社に入社。総務部長としてフリーアドレス化、ペーパーレス化など成果をあげるための環境整備を担当する。
1991年都市銀行入行。支店で個人、法人営業、本店で公共法人業務に従事し、内2年間は中央官庁に出向する。2012年沢井製薬株式会社に入社。営業本部で与信管理業務等に従事し、2024年グループ総務部に異動、働く場の整備をはじめ総務業務全般に携わる。
目次
大阪に本社を構える医薬品メーカー「サワイグループホールディングス」
御社がどのように成長してきたか、地域特性や会社の特徴を踏まえて教えてください。
1929年、沢井薬局として大阪市東成区(現・旭区)で創業しました。その後、薬局から薬品メーカーに転身し、半世紀以上、ずっと大阪に本社を構えております。2021年に持株会社としてサワイグループホールディングスとなり、中核企業である沢井製薬は、高品質なジェネリック薬品を安定的にお届けするという使命を持って事業を展開しています。

今でこそ皆さん当たり前のようにジェネリック医薬品を服用いただいておりますが、ジェネリック医薬品が急成長したのはここ10年くらいで60年前、一般用医薬品メーカーから医療用医薬品メーカーへシフトし、ジェネリック医薬品メーカーと成長する礎を築きました。その当時は、ジェネリック医薬品は全く知られていませんでした。粘り強く啓発活動を行いながら、ジェネリック医薬品のリーディングカンパニーとして業界を牽引すべく、「なによりも患者さんのために」というスローガンの通り、みなさまの健康のためにと、愚直に事業活動を行ってまいりました。
高品質・安定供給に加えて、SAWAI HARMOTECHⓇ(サワイハーモテック)という技術で特許を取得するなど、付加価値をつける研究も進めています。水無しで服用できるOD錠などがその一例なのですが、患者さんが少しでも服用しやすい製剤を届けようと努めているのです。他にも、科学と技術で薬の安全性を高め、患者さんの安心を支えるQuolityHugⓇ(クオリティハグ)という技術ブランドも展開しています。
ジェネリック医薬品は患者さんの負担軽減になりますし、国の医療費削減にも貢献できますから、その役割は今後もますます高まっていくはずです。そんな社会に貢献できる幸せな事業を展開しているということを心に刻み、これからもジェネリック医薬品を広くお届けしていきたいと思っています。
グループとしては、ジェネリック医薬品事業において、2030年までに生産能力を250億錠以上、売上収益を3000億円に引き上げるという中期経営計画を立てています。さらに、新たな成長分野として、新規事業への継続的投資を行っています。PHR(パーソナルヘルスコード)管理アプリ「SaluDi(サルディ)」や減酒治療補助アプリ「HAUDY(ハウディ)」をリリースしたり、東京都と連携して高齢者の健康増進事業を展開するなど、未病予防への取り組みも進めています。
髙橋さんと濵さんは普段、どのような業務に携わっておられるのでしょうか。

私は人事と総務、ブランドコミュニケーション(広報・広告宣伝)を担当しています。部員の意見を聞いた上で仕事を進めていますが、この1年のうち大きい仕事にはワークプレイスの改装があります。社内では賛成や反対の意見など、様々な意見がありましたので、皆さんにご理解をいただき同じ方向に持っていけることに注力しました。
私はグループ総務部に所属し、ワークプレイスマネジメントやリスクマネジメント、資産管理、株主総会の運営のほか、オフィス機器や車両の管理、社内規程の作成、秘書分野の業務、社会貢献・地球環境にまつわる活動まで、多岐にわたる業務を担当しています。中でも、ワークプレイスマネジメントやリスクマネジメントといったマネジメント業務は経営目線で全体最適を考える必要があり、それが長期的、根源的に良いことなのかということを一つひとつ精査し、会社にどう貢献できるのかを重視して日々の業務に取り組んでいます。
フリーアドレス導入で空間を有効活用
昨今、働き方は多様化していますが、フロアの改装に踏み切るなど、働く場所を大切にされているその理由はどういったことなのでしょうか。
売上収益の増加や新たな成長分野への取り組みを今後、より精力的に進めていくためです。ワークプレイスを改装して働きやすい空間にし、社員の皆さんのモチベーションを高めることで生産性も上げることができればと考えています。
生産能力増強のため生産現場では増員が進んでいますし、それに伴い、本社のようなコーポレートゾーンでも今後、人は増えていきます。ただ、働き方が多様化し、在宅勤務の人もいますし、出張や休暇の人もいますから、それならフリーアドレスにして空間を有効活用しようというのが最初のきっかけでした。
固定席に慣れているとやむを得ないことだと思うのですが、自席や袖机がなくなることに不安を感じたり、抵抗感があるという人も多いので、移行期間を設け、完全フリーアドレスは2026年1月から、それまでは3週間ごとにエリアを変えるグループアドレスという形にしているフロアもあります。
業務の内容に合わせて働く場所を選択。サワイグループホールディングスのオフィスツアー
改装された8階・9階のフロアをご案内いただきました。
8階・9階フロアの概要とコンセプト
8階・9階それぞれのフロアに入っている部署や空間のコンセプト、内装・デザインのこだわりなどを教えてください。
8階も9階も空間のコンセプトは変わりませんが、空間の印象を左右するカラーは変えていて、8階は爽やかで明るい印象を与えるグリーン系、9階は落ち着いたトーンのブルー系でまとめています。

8階は信頼性保証部門や学術部門、メディカルコミュニケーション部門などが入っており、9階はグループホールディングスのバックオフィス部門、たとえば財務や法務、経営戦略などの部門が入っています。人数的には8階の方が多くて、9階の方が若干少ないです。
多様なワークスペース
人員の増員に伴ってフリーアドレスにするというのが最初の企画でしたが、午前は1人で集中して作業をするけれど、午後はチームでミーティングなど、1日の中でも働き方は変わります。ですから、業務の内容に合わせて働き方が変えられる多彩な空間を設ける設計にしております。
まずは、1人で使用する空間から順にご紹介します。アームモニターを設置した執務席、1人で集中して作業ができる集中エリア、1人用のウェブブース、1〜2人のウェブ会議に使用できるウェブソファです。




次に、複数人での使用を想定した空間として、2〜4人で作業や対話ができるファミレス席、立って作業ができるハイカウンター席、予約なしで利用できるコラボレーションエリアを用意しています。コラボレーションエリアでは持ち寄りの軽食をとりながらランチミーティングをすることも可能で、研究部門や営業部門など、別のフロアのメンバーが使用することもあります。



会議室
続いて、会議室をご案内いたします。
会議室には「挑戦」や「使命」といった前向きな名前がついていいます。沢井製薬の企業理念の一部から取っており、企業理念をより身近に感じていただけるようにしています。WEB予約も可能です。




コミュニケーションと運用への工夫
組織間で連携を取って生産性を上げていけるようコミュニケーションが取りやすい回遊式になっており、実際、動線が改善して歩きやすくなったという声も上がっています。
また、フリーアドレスを採用している会社では、誰が出社しているのか、どの席で仕事をしているのか、ウェブで共有していることが多いと聞きますが、当社では、入り口付近のマグネットウォールにフロアのレイアウトマップを貼って、出社したら部署ごとに色分けされたマグネットを貼り付け、座った席には名前の旗を立てるようにしています。


マグネットや名前の旗は、費用削減のための工夫だったのですが、あえてアナログにすることで逆に世代や部署を超えたコミュニケーションが活発化して、スムーズに仕事ができているようになったという結果も出ています。執務室も臨機応変に対応しております。例えば「決算前は財務部で集まっていた方が業務がスムーズに進む」など、特別な事情があるときは、「◯月◯日頃まではこのエリアを財務のスペースとするのでご協力ください」と事前にインフォメーションを出しています。
窓際がいいとか端がいいとか、人それぞれ好みがあるので仕方がない面もあるのですが、フリーアドレスになっても同じ席を選んでしまう人が多いので、3日同じ席に座るのはやめましょうという暗黙のオフィスルールを作っています。必ずしも絶対というわけではなく、できればそうしましょうという緩いルールなのですが、意外と皆、いろいろな席に座っていますね。その結果、コミュニケーションが深まったというご意見もいただいています。
会社の進化に合わせてオフィスも進化する
今のところうまく運用できているということですね。
新しい装いのオフィスでの業務は始まっていますが、実はまだ完成ではありません。可変性のある設計になっているので、社員の声を聞きながら、本当に使いやすいように、働く場所が魅力的になるように、今後も改善していきます。在宅勤務やオンライン会議が当たり前になったように、働き方が変わればそれに合うオフィスの形も変わっていくものですから、会社の変化・進化に応じてオフィスもより良い形に変えていきます。
世間では、在宅勤務は当たり前にはなりましたが、在宅勤務を積極的に増やそうという意図はありません。社内のコミュニケーションも必要になりますので、在宅勤務は、育児など特別な事情がある場合を除いて週3日までと社内規定で決まっています。無理に在宅勤務を増やすのではなく、一人ひとりがワークライフバランスを保って働き、出社時にも快適な環境とし、その結果、何よりも生産性を上げてほしいというのが今回の改装の狙いです。
先ほど、フリーアドレスの導入に不安を感じる社員も多かったと伺いましたが、そうした方々には改装についてどのように説明されたのでしょうか。また、改装後の反応はいかがでしたか?
新しいオフィス空間のコンセプトの話を各層の会議で丁寧に説明し、その会議を通して現場のニーズを拾っていきました。フリーアドレス反対の理由は、「グループ全員の管理ができなくなる」ということが多かったのですが、改装後、話を聞いてみると「意外と大丈夫だった」「これまでとは違うコミュニケーションが生まれて良かった」という意見を数多く聞いています。同じ部署の人がフリーアドレスになったといっても遠い場所にいるわけではなく、声を出せば届く同じフロアにいるわけですから、それほど心配する必要はなかったという声が多かったですね。
働く「環境」への真摯な追求が、企業理念の実現と成長の基盤となる
では、最後にオフィスに込める思いと社員の皆さんへのメッセージ、今後の展望を聞かせてください。

今回の改装を切っ掛けにして、社員のコミュニケーションを活性化し、生産性向上を高めることに繋げたいと思います。今後も社員一人ひとりが持てる力を最大限発揮できる「働く場」を追求していきます。
これからも私たち自身も考え、工夫することを続け、社員の創造性や生産性を高める空間を継続して提供していきたいと思っています。
髙橋さん、濵さんありがとうございました。
単なるオフィス改装ではなく、社員の働きやすさと生産性向上を真剣に追求する同社。フリーアドレス導入への丁寧な説明、マグネットウォールのようなアナログな工夫、可変性のある設計という考え方――そのすべてが、社員一人ひとりを大切にする姿勢の表れといえるでしょう。
人々の健康を支える医薬品事業を展開する同社だからこそ、まず社員が健康的に働ける環境を整える、その真摯な取り組みがさらなる成長の基盤となることは間違いなく、「なによりも健やかな暮らしのために」という企業理念を体現しているようにも感じられました。