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vol.305 兼松株式会社

創業135周年を迎えた総合商社「兼松」グループ一体経営を加速する大阪オフィス再集約

兼松株式会社

創業135年を迎えた総合商社 兼松株式会社が、大阪支社の移転プロジェクトを遂行。もともと本社があった場所が再開発されたことをきっかけに、分散していたグループ各社を再び集約したといいます。この移転プロジェクトを担当した総務課の梶内さんに、オフィスのコンセプトや座席配置、移転後の変化についてお話を伺いました。

梶内 尚史
インタビュー
梶内 尚史
兼松株式会社 総務部 総務課長/大阪総務課長

総合化学メーカー、専門商社の新規事業担当を経験後、2008年兼松株式会社入社。バイオガスビジネス事業、化学品事業等に携わった後、ジャカルタに駐在。帰国後、総務に異動し、本社移転、大阪支社移転及び大阪地区グループ企業集約移転を担当する。“Don’t think, Feel.考える前に社員の温度を感じる”をモットーに、社員が出社したくなるオフィス、イノベーションを生み出すオフィスの構築に日々奮闘中。

伝統を重んじ、未来へ。経営の根幹にある兼松の「創業の精神」

西川(IBASHO.ライター) :

はじめに、御社の会社概要と事業内容からお聞かせいただけますか。

梶内さん :

私たち兼松は、創業135周年を迎えた商社で、いわゆる「ラーメンからロケットまで」と言われる通り、幅広い事業を展開しています。主な事業セグメントは、ICTソリューション、電子・デバイス、食料(食品/畜産/食糧)、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空で、東京本社、大阪支社を含む国内5箇所に拠点を構えています。

西川 :

その中で梶内さんは総務のご担当ということですね。

兼松株式会社
梶内さん :

はい。もともと営業職だったのですが、2018年、総務部に異動となり、最初のプロジェクトが本社の移転でした。その後、組織変更を行い、そこから日常的な総務・庶務業務はグループ会社である兼松シェアリンク㈱に委託していますので、兼松本体の総務課では、企画やファシリティマネジメント、それに付随する固定資産や社宅・社員寮の管理などを行っています。

西川 :

御社には他にはない珍しい社内行事があると伺いました。それはどういったものでしょうか。

梶内さん :

法要ですね。兼松は昨年、創業135周年を迎えたのですが、創業者の精神を今も大切に引き継いでいます。そのため、2月の創業者の祥月命日には法要を行い、夏には創業者のほか、OB・OGを含む故人を偲ぶ物故者法要も行っています。

グループ一体経営を推進するための再集約

西川 :

では、今回の大阪支社移転の経緯について教えてください。

梶内さん :

この場所はもともと兼松の大阪本社があった場所なのですが、2011年、経営改善の観点から兼松大阪支社とグループ各社は近隣のオフィスビルに分散移転しました。2024年になり、この場所が再開発されたことをきっかけに再集約したという形です。

西川 :

再集約しようとなった理由はどのようなことだったのでしょうか。

梶内さん :

兼松が中期経営計画で掲げるグループ一体経営の推進が最大の理由です。DXやGXという事業を推進するには、各分野に強みを持つグループ会社が一体となり、情報交換を促進する必要があったのです。もともとこの場所は兼松のルーツとも言える場所ですし、再開発のタイミングともうまく重なって、ここに再集約となりました。現在は、兼松を含むグループ14社、約500名の社員がこの場所で働いています。

東京本社と統一感を持たせた大阪支社新オフィス

西川 :

新しいオフィスのフロア構成とコンセプトを教えてください。

兼松株式会社
梶内さん :

フロア構成は、大阪に本社を置く3社と兼松の大阪総務課が16階、その他の10社が15階、兼松エレクトロニクス㈱が17・18階に入っています。今回ご覧いただくのは15階と16階ですが、広さは同じで、人数の少ない16階にラウンジスペースなどを設けています。内装は、今後の採用活動も見据え、来社した学生たちが東京でも大阪でも同じ印象を持てるよう、東京本社の設計を手がけた会社に統一感のあるデザインを依頼しました。

西川 :

座席の配置はどのようになっていますか?

梶内さん :

会社ごとではなく、事業セグメントごとの配置になっています。たとえば、兼松の大阪食品課と兼松食品㈱は同じ食品・食料セグメントのため隣接配置しています。座席の運用は各社の判断に任せており、フリーアドレスのところもあれば、固定席のところもあります。役員室は、一部例外はありますが基本的に設けていません。椅子のグレードで役職を区別しています。

西川 :

コスト負担はどのようにされているのでしょうか。

梶内さん :

グループ会社のファシリティコストを軽減し、移転のハードルを下げるべく、グループ各社の負担は執務エリアのみとしています。会議室やラウンジなどの共用スペースの賃料は兼松本体が全額負担し、会議室は利用量に応じて料金が変動する従量課金制を採用しています。

西川 :

社員の方々の反応はいかがですか。

兼松株式会社
梶内さん :

まだ移転から1年経っていないのですが、会社が違っても徐々に顔と名前が一致するようになってきているようで、最近は異なる会社のメンバー同士が打合せをする様子も見られるようになりました。それが新規事業の創出につながることを期待しています。

西川 :

135周年を記念したイベントもここで行われたそうですね。

梶内さん :

はい。社員とそのご家族、約300名を招待し、オフィスツアーを実施しました。「こんな立派なオフィスで働いていたんだ」というご家族の反応もあり、社員自身も自分の会社により一層誇りを持てる機会となりました。グループ会社も含めた合同イベントでしたから一体感の醸成にも貢献できたと思います。

西川 :

採用活動への効果も大きそうですね。

梶内さん :

そうですね。以前は、スペースの問題もあってインターンシップはすべて東京本社で行っていましたが、移転後は大阪でも行えるようになりました。人事担当者も「東京に配属されても同じような環境です」と説明しやすくなり、学生さん自身も、働く場所をイメージしやすくなったと思います。グループ会社も採用活動にこのオフィス環境を活用しはじめているようですし、採用の強化につながることを期待しています。

共有ラウンジなども備えた16階フロア

西川 :

では、ここからは実際のフロアを見学しながらお話を伺っていきます。まずは16階のエントランスからご説明をお願いします。

兼松株式会社
季節の装飾をあしらったエントランス。拠点による違いをなくすよう東京本社と同じテイストになっている。
梶内さん :

エントランスの奥と右側には、如月、弥生など、和風月名をつけた来客用会議室を8部屋、左側には応接スペースと小さなライブラリースペースを配置しています。ライブラリースペースには、グループ会社の社員や新入社員が兼松グループの歴史や規模をより深く理解するきっかけになることを願い、創業期の写真や資料を展示しています。入り口の扉付近にはキャリーケースを一時的に保管できるバゲッジポートも用意しました。

兼松株式会社
エントランス横の応接スペース。フロア内には来客用の会議室も用意されている。
兼松株式会社
創業期の写真や社史、資料を展示したライブラリースペース。写真は布張りで仕上げた貴重な社史。
兼松株式会社
エントランス入口横には、スーツケースなどの大型荷物を一時的に保管するバゲッジポートも。
西川 :

エントランスの先にあるのがラウンジエリアですね。

兼松株式会社
多目的で使用できる大型テーブル席やソファ席などを設けたラウンジエリア。
梶内さん :

来客用会議室もそうですが、ラウンジエリアは顔認証システムで入退室を管理しています。ここは、業務はもちろん、食事やリラックスなど、自由な使い方が可能で、業務終了後に懇親会を行っているグループ企業、部署もあります。ビルの共用施設として6階にラウンジと、屋上にルーフトップテラスがあるのですが、そこで昼食をとる社員も多いようです。

西川 :

ラウンジを取り囲むように会議室が配されていますが、すべてガラス張りになっていることに驚きました。

兼松株式会社
ラウンジを取り囲むように配置された会議室。役員会議などもこの場所で行っている。
兼松株式会社
梶内さん :

先ほど紹介したエントランスエリアにある来客用会議室はスモークガラスになっているのですが、ラウンジエリアは、組織の透明性を重視する企業文化を空間にも反映し、ガラス張りにしています。見える経営を貫くため、役員会議などもこの会議室で行っています。その他、最大50名収容のセミナールームも併設しています。

兼松株式会社
最大50名収容のセミナールーム。間仕切りで2分割にすることもできる。
西川 :

カフェスペースもとてもかわいい空間ですね。

兼松株式会社
コーヒーマシンや電子レンジも完備。隣には防音用ブースも。
梶内さん :

ありがとうございます。ここには、簡易キッチンとコーヒーマシン、電子レンジを置いて、カウンター席を用意しています。この横には、Web会議用の防音ブースも3室併設しました。この他、16階には兼松の大阪総務課(大阪コンシェルジュ)のデスクがあり、グループ会社全体の郵便・宅配便の集約管理、オフィスの美観管理など、ここで働く兼松・兼松グループ社員の問い合わせを集約し、ワンストップで対応しています。例えば、荷物が届けば各社に到着通知を送信し、各社の担当者が取りに来る仕組みになっています。

グループ10社が入る15階フロア

西川 :

次は15階の執務エリアを拝見します。こちらにはグループ10社、約150人のメンバーがいらっしゃるんですね。

兼松株式会社
グループ10社が入る執務エリアは、パーテーションなしのオープンスペース。
梶内さん :

はい。情報セキュリティ上、間仕切りが必要な会社もありますが、基本はパーテーションなしのオープンスペースです。フロア内には社内用の会議室もあり、各部屋名は中之島や江之子島など、創業者が明治時代に住んでいた縁のある地名にしています。女性用ロッカーや救護室も備え、コートなどを掛けておくハンガーラックは、グループ会社ごとに色分けしてわかりやすいようにしています。

兼松株式会社
中之島や江之子島など、創業者の縁ある地名をつけた社内用会議室。
西川 :

コロナ禍を経て浸透したリモートワークを縮小し、再びオフィスでの勤務を推進する企業の動きが加速していますが、御社でも出社を推奨されているのでしょうか。

梶内さん :

グループ各社で制度は異なりますが、兼松本体には在宅勤務制度があり、週1〜2日の在宅勤務が可能です。ただ、基本方針は出社であり、在宅勤務者はそれほど多くありません。だからこそ、オフィスが働きやすい場所であることが重要なのです。

一体経営が結実させる未来への飛躍

西川 :

そんなオフィスに込める思いと今後の展望をお聞かせください。

兼松株式会社
梶内さん :

今の若い社員は、学生時代からカフェなどで勉強してきた世代です。そうした人たちが「このオフィスで働きたい」と思える場所を構築し、その環境を維持していくことが大切だと私たちは考えています。グループ一体経営を推進し、新しい事業を創出していくための場としてこのオフィスがしっかりと機能するよう、私自身も“Don’t think, Feel. ”の精神でこれからも改善を重ねていきたいと思っています。

西川 :

梶内さんありがとうございました。

移転からおよそ1年。「フロア内で異なる会社のメンバー同士が打合せをする様子が見られるようになった」と梶内さんも言う通り、グループ一体経営の推進という目的に対し、物理的な集約がリアルな協働を生み始めています。この協働こそが、将来的なイノベーション創出へと繋がる確固たる基盤であり、再集約による事業成果は今後本格的に顕在化していくものと期待されます。この新しい舞台から生まれるグループシナジーの進化が、今から非常に楽しみです。

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