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オフィスインタビュー
vol.313 USEN WORK WELL(U-NEXT HOLDINGS)

AI時代を勝ち抜く「組織と人」をつくる。判断力と自律性を育むU-NEXT HOLDINGSのオフィス

高齢者人口がピークを迎え、労働人口の約20%減が予想される2040年。深刻な人材不足による競争力低下が間近に迫る中、労働力の代替となるAIの活用、そしてAIのアウトプットを正しくジャッジできる人材の獲得と育成は企業の喫緊の課題です。

こうした時代の流れをいち早く察知したU-NEXT HOLDINGSは、2018年の本社移転時にオフィスの価値を再定義。「Productivity」「Meet up」「Engagement」の3要素を満たすことで、組織と人材の未来を育む装置へとオフィスを昇華させています。

今回は、当時、執行役員 コーポレート統括部長として本社オフィスの移転、および地方拠点のリノベーションを手がけ、現在はICTやAIといった先端技術を活用して働く人と企業の「Well-Being」を支援する、U-NEXT HOLDINGS傘下である株式会社USEN WORK WELL代表取締役社長の住谷 猛さんに、人と組織を育てるオフィス戦略を伺いました。

住谷 猛
インタビュー
住谷 猛
株式会社USEN WORK WELL代表取締役社長

1999年株式会社大阪有線放送社(現U-NEXT HOLDINGS)入社。
人事・営業領域の責任者を歴任し、情報セキュリティ責任者としてDXや生成AI活用を推進するなど経営基盤の高度化に携わる。2024年4月より愛知県豊田市CDO補佐官として地方DXに参画。2024年9月、株式会社USEN WORK WELL代表取締役社長に就任。

経営統合を機に事業会社の本社を1ヵ所に集約し、「ワンカンパニー」を体現

IBASHO.ライター :

動画配信サービスや店舗DXなどグループ内で幅広い事業を展開されていますが、改めて御社の沿革と事業の変遷をお聞かせください。

住谷さん :

若い方は「U-NEXT」の印象が強いかもしれませんが、当社グループのルーツは1961年に創業した大阪有線放送社(後の株式会社USEN)にさかのぼります。

当時、飲食店や小売店などでは従業員がレコードを選び、手作業でBGMを流すのが一般的でした。

創業者の宇野元忠は、従業員の手間を省くソリューションとして、同軸ケーブルを用いた店舗向けBGM「有線音楽放送」を開始。当時としては画期的なサブスクリプション型ビジネスは、瞬く間に全国の店舗向けインフラとして普及しました。

本社のエントランスに飾られているアナログレコードや、オフィス内に流れる音楽は、当社のDNAを象徴するものですね。

住谷さん :

近年は、店舗運営におけるさまざまな課題をテクノロジーで支える「店舗DX」へとソリューションの幅を広げ、店舗の開業・運営に必要なインフラやサービスをワンストップで提供しています。

2017年には、株式会社USENの映像配信事業が独立してできた株式会社U-NEXTと経営統合し、現在のホールディングス体制に移行しました。

ライター :

では、2018年の本社の移転は、経営統合がきっかけだったのでしょうか。

住谷さん :

そうですね。経営統合に伴い、大きく2つのことを実現したいと考えて移転しました。

1つは、青山や外苑前の周辺に点在していた事業会社の本社を集約し、共通のゴールに向かう仲間として目線を揃えることです。1ヵ所に集まることによるシナジー効果にも期待していました。

住谷さん :

もう1つは、従業員のキャリアの自律を促し、グループ内でのキャリアチェンジを活発化させることです。

たくさんの企業の中から当社を選んでくれたメンバーには長く活躍してほしいと思っていますが、仕事をするうちにやりたいことが変わり、転職を考える人は少なくありません。

しかし、外部への転職には、社風のミスマッチや年収ダウン、キャリアの停滞といったリスクがあります。また、当社としても、優秀な人材を失いたくないのが本音です。

そこで当社では、ホールディングスも事業会社も含めて「ワンカンパニー」であるとの考えのもと、ホールディングスで人材を一括採用し、多様な事業を活かしたグループ内でのキャリアチェンジを歓迎してきました。ワンカンパニーは、従業員の満足度を高めるとともに、当社の持続的な成長に不可欠な思想なのです。

代表の宇野からも、「ワンカンパニーを体現する環境が必要だ」とのメッセージがあり、移転を機に新たな環境づくりに取り組むことになりました。

ライター :

移転プロジェクトは、住谷さんが牽引されたのですね。

住谷さん :

経営統合と時を同じくして、人事・総務・法務・広報、そしてコーポレートブランディングやサステナビリティの部署を管掌する執行役員に就任しました。一言でいうと、お金に関すること以外すべてのバックオフィス業務を見る役割です。

オフィス移転もその一環として担当することになったのですが、後から思えばこの担当領域の広さが奏功したと思います。オフィスという箱をつくるだけなら別ですが、先にお話ししたような目的に沿った移転を達成するには、オフィスではたらく「人」とその「はたらき方」に深く関わる人事、総務、IT部門と連携してセキュリティとコンプライアンスを両立させる法務など、あらゆる部門の意見を総合的に検討しなければなりません。

一般的には、このヒアリングと調整にかなりの時間がかかります。その点、当社では、私がほぼすべてのバックオフィス業務を担当していたため、はたらく人にとって最善の環境をスムーズにデザインすることができました。

3つの要素を意識することで、存在意義のあるオフィスに

ライター :

テレワークの浸透でオフィスを縮小する企業もありますが、リアルなオフィスの存在意義をどのように捉えていますか。

住谷さん :

日本はいま、深刻な人手不足に直面していますよね。今後、さらに少子高齢化が進み、2040年には労働人口がさらに約20%減るともいわれています。企業間の人材獲得競争は、今以上に激化するでしょう。競争に勝ち、優秀な人材を確保するには、「人が集まりたくなる会社」を作らなければなりません。

では、人が集まりたくなる会社とはどんな会社でしょうか。

就活中の新卒者を対象とした調査では、給与ややりがいとともに、福利厚生の充実を重視して志望先を決める人が多いようです。福利厚生の充実は、社員を大切にする気持ちの表れだと感じるからでしょう。

福利厚生とは、はたらく環境全般です。社員の心身の健康や、満足度向上、生産性向上につながるオフィスもそのひとつ。オフィスを充実させることは、人が集まる会社を作ることであり、未来の人材への投資でもあると思います。

ライター :

人が集まる、充実したオフィスをつくるには、どんな点を意識すれば良いのでしょう。

住谷さん :

リアルでオフィスをつくるなら、3つの要素を満たすべきだと考えています。

1つ目は、「Productivity」。家やコワーキングスペースよりも、オフィスが最も生産性があがる場であるということです。

2つ目は、「Meet up」。そこに行くと仲間がいて、チームがある。コミュニケーションが生まれ、イノベーションにつながる。他者とのかかわりによって自己実現できる。そういう出会いの場としての役割を持っているということです。

3つ目は、「Engagement」。そのオフィスで働くことによって、会社への愛着が高まり、帰属意識が上がる環境であることです。

ライター :

3つの要素を満たすオフィスをつくったことで、採用面で具体的な成果はありましたか。

住谷さん :

結論から言うと、旧オフィスに比べて採用応募数は7倍、内定承諾率は1.6倍に増加しました。

オフィスは企業にとって大きな投資ですが、その成果は「社員のモチベーションが向上した」「コミュニケーションが活性化して、みんな生き生きはたらいている」といった定性的な話に終始しがちです。

しかし私は、企業として得た収益を投資する以上、定量的な投資対効果を示すべきだと考えていました。本社移転の成果が数値として表れたことで、あるべきオフィスとして提唱していた定義が裏付けられたと感じています。

一方で、定性的な評価から得られる気づきが多くあるのもまた事実です。

本社とのギャップを埋めるため、本社の移転後に主要な支社のリノベーションも主導したのですが、どの支社の社員たちも「新しい本社、すごいですね」と目を輝かせて言ってくれたんです。東京に立派な本社があることを、離れた場所ではたらく社員たちがこれほど誇りに思ってくれるとは思いもしませんでした。「Engagement」の波及効果を感じましたね。

ライター :

移転時にめざしていたシナジー効果や、グループ内でのキャリアチェンジの活性化についてはいかがですか。

住谷さん :

本社移転後は月に1回、オフィス内のラウンジスペースを活かして、社員同士のボーダレスな交流を目的とした社内イベント「HAPPY HOUR」を開催するようになりました。18時〜20時まで、アルコールを含むドリンクと料理が無料で楽しめるとあって、多くの社員が参加してにぎわいます。

その場でグループ内の企業の取り組みを知って連携につながったり、久々に会った同期の話に刺激を受けてキャリアチェンジを希望したりする例も少なくありません。

主体性を生み、未来の人材を育てるオフィス

ライター :

では、3要素を盛り込んだオフィスについて、くわしく教えてください!

住谷さん :

まず、既成概念にとらわれない働き方ができるよう、オフィスそのものも枠にはまらない設計にしようと考えました。

チームや部署ごとにデスクを向いあわせて「島」とよばれるまとまりを作り、全体を見渡せる位置に上長が座る昔ながらの島型レイアウトを撤廃。多様な座席バリエーションをつくり、テーブルには高低差を出して、オフィスらしくないオフィスを目指しています。

住谷さん :

また、座席のバリエーションは、部署や事業会社の枠を超えた完全フリーアドレス、さらには働く場所と時間さえも自由に選択するABW(Activity Based Working)を機能させるのにも一役買っています。

というのも、従来の席配置のままでフリーアドレスを導入したり、ABWを提唱したりしても、形骸化することが多いからです。どこに座っても代わり映えがしないなら、あえていつもと違う場所に座る理由がないですよね。

「今日はアイデアをまとめたいから、窓の外が見える席にひとりで座ろう」「チームで課題を検討できるように、ボックス席にしよう」というように、今日のはたらき方にあった座席を探せる余地をつくっておくと、自然と好きな席を選んで座るようになり、やがてはたらく場所や時間、キャリアそのものを自律的に考えられるようになります。

ライター :

人を育てるオフィスでもあるのですね。

住谷さん :

そうですね。自律的に考え、判断する力は、AIが台頭する時代を生きるうえでも不可欠です。

私は今、ICTやAIといった先端技術を活用して働く人と企業の「Well-Being」を支援する株式会社USEN WORK WELLで代表を務めていますが、セミナーなどでよく「AIが仕事をするようになったら、人間には何が残るんですか」と聞かれるんですよ。私はいつも、「人間が担うのは、最終的なジャッジメントです」と答えています。

AIが出したアウトプットの正否を見極め、使用の可否を判断して、使い方を決めていく。AIに使われるのではなく使いこなすには、判断し、行動できなければなりません。

オフィスの座席は小さなことですが、一つひとつの小さな選択が自律性と判断力の向上につながり、組織の未来を支える人材が育っていけばいいなと思っています。

オフィスも、時代や環境に応じて適切に変化することが大切

ライター :

本日はありがとうございました。最後に、オフィスの今後の展望をお聞かせください。

住谷さん :

オフィスは、サグラダ・ファミリアのように、容易には完成しないものだと思っています。

一般的に、オフィスは「移転が完了した段階」で完成品となり、次の移転が迫るまで手を入れないことが多いですよね。しかし、オフィスははたらく環境であり、成長のステージであり、新しく入社する人を迎え入れるための装置でもあります。時代や経営環境、はたらき方のトレンドといった外部要因の影響を少なからず受ける以上、適切に手を加えて変化させていくべきでしょう。

直近では、店舗運営に関わる商材の導入イメージを体感できるショールームのリノベーションを予定しています。今後も、はたらく人の「いま」に寄り添うオフィスとして、進化し続けていきたいですね。

ショールーム「hotels Meguro」
ショールーム「DINING&BAR U」
ショールーム「beauty&cafe yoU」

「オフィスはサグラダ・ファミリアのように、容易には完成しない」と住谷さんが語る通り、U-NEXT HOLDINGSのオフィスは今も進化し続けています。当時、採用応募数7倍・内定承諾率1.6倍に向上したという数字が証明するように、オフィスへの投資は確かな競争力として結実しました。人が集まり、自律的に考え、判断できる人材が育つ場所。AI時代を勝ち抜く「組織と人」をつくる舞台として、このオフィスがこれからどんな未来を生み出していくのか、非常に楽しみです。

取材先

USEN WORK WELL(U-NEXT HOLDINGS)

https://usenworkwell.jp/ 公式サイト

(https://unext-hd.co.jp/)

(https://unext-hd.co.jp/)

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