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オフィスの敷金礼金とは?勘定科目など敷金について詳しく確認しよう
オフィスを借りる時には、毎月かかる家賃などとは別に借り始める時にだけ必要になる費用があります。これは、「敷金」や「礼金」などです。これらはいったいどのような意味のある費用なのでしょうか。
地域によっては敷金について違った言い方をすることがあったり、借りる前に作っておく契約書で「償却」や「敷引き」が決められていたりすることがあります。「敷金」は個人的に住居を借りるときにもよく聞く身近なものですが、オフィスを借りようとするときにはそれとは少し異なる部分もあります。
ここでは、オフィスを借りる場合の「敷金」について詳しく確認していきましょう。
目次
敷金とは?保証金とどう違う?
まずは前提として、敷金とはどのようなお金なのかを確認してみましょう。あわせて、同じように賃貸物件を探しているときによく聞く保証金とはどういうものなのかも見ていきましょう。
敷金とはどんなお金か
敷金は、賃貸オフィスを借り始めるときにだけ支払う必要のあるお金です。当該物件のオーナーに安心してその物件を貸してもらうために、最初にある程度のお金を支払います。この敷金の金額を決める方法は、賃料を元にして「賃料〇ヶ月分」とするのが一般的です。
賃貸している間に支払いが滞ってしまったときや、借りているオフィスを汚してしまったり、備品を壊してしまったりした場合にそのお金が使われます。借りていたオフィスから出ることになったときに修繕箇所があるような場合には、そのお金を使ってオーナーが修繕を行います。
個人が住居として賃貸物件を借りる場合の敷金は、家賃の1、2ヶ月分程度が多いです。しかし、オフィスとして借りる場合の敷金は賃料の6~12ヶ月分くらいと、相場がかなり違います。敷金自体の使い道は、個人が借りる住居でもオフィスでも変わらず「何かがあった時に使うもの」です。オフィスとして借りる場合の敷金が高いのは、退去する際にかかる原状回復工事の費用が住居の場合よりも高額になることが多いからです。
個人用住居の場合には、同じ設備で同じレイアウトのまま使えるため、それほど原状回復の費用は高くなりません。これがオフィスの場合になると、それぞれの会社ごとにレイアウトを変更することになります。そのため、万が一賃料を払わずに借主がいなくなってしまったときの被害を軽減するために、高額の設定にしているのです。
敷金と保証金はほとんど同じ扱いのお金
オフィスを借りる場合、敷金の代わりに「保証金」が必要になることがあります。敷金と保証金はほとんど同じものを意味する言葉で、保証金は関西地方やそれよりも西のエリアで使われています。
保証金もやはり賃料が滞納された場合の補填や原状回復をするための費用として預けておくお金です。それぞれの違いはその金額の決め方で、敷金は賃料〇ヶ月分という決め方をしますが、保証金の場合にはオフィスの坪数や面積などにあわせて坪単価などで金額を決めます。敷金は賃料を元に決めているため、賃料が改定されれば敷金も改定されるものですが、保証金の場合には賃料が改定されても金額が変わらないという点に違いがあるのです。
敷金礼金なし。そのデメリットは?
賃貸物件の中には、「敷金礼金なし!」と書かれているものを見ることがあります。誰でも支出はなるべく減らしたいものです。「敷金礼金なし」で、かかるお金が少なくなるのであれば良さそうですが、それによってなにかデメリットはないのでしょうか。
敷金なしのデメリット
敷金がかからない、という物件のデメリットについて考えてみましょう。敷金というものは「賃料を滞納された場合の補填や備品を壊されてしまったときの修繕費用、退去時の原状回復にかかる費用として備えておくお金」です。
退去時にかかる原状回復の費用はすべて支払わなくてはならないので、その点でいえば、先に支払っておくか後で支払うかだけの違いです。「敷金なし」の場合は、オーナー側が何かあったときの費用を先に貰っておかないということになるので、賃料の不払いなどがあると直接ダメージを受けてしまうことになります。
代わりに別の名目で回収していることが多い
通常、そのようなリスクをオーナーが背負うはずもなく、「敷金なし」と謳っていても実際には別の名目でその費用を回収していることが多いです。敷金のない物件には、代わりに「クリーニング代」や「清掃費」といった費用を付加されている場合がよくあります。「敷金なし」という謳い文句にのせられて、かえって高い物件に手を出してしまわないように注意することが大事ですね。
礼金なしのデメリット
「礼金」についても見ていきましょう。礼金とは「不動産オーナーに対する、物件を貸し出してくれることへの謝礼」です。これは敷金とは違い、そのままオーナーのものとなるお金で、それが不要な場合のデメリットは特にありません。
とはいえ、いくら費用が少なくなるからといっても、「敷金なし」、「礼金なし」の物件ばかりを狙うのはおすすめできません。そもそもそのような物件はそれほど多くないため、オフィス探しに時間がかかり、逆に好条件の物件を逃してしまうこともあるかもしれません。それよりも「駅から近いかどうか」や「オフィスとして快適に使えそうか」といった点を軸にして物件を選んだほうが良いでしょう。
敷金は返金してもらえるお金?
敷金については「賃料の不払いや備品を壊したときなど、なにかあったときのために預けておくためのお金」だと確認しました。ということは、賃料の不払いもなく、物件をきれいに使っていたときにはそのお金を返してもらうことができるのでしょうか。
敷金は返金してもらうことができる
答えは、「返金してもらうことができる」です。敷金は、何かあったときのために備えておくお金であり、不動産オーナーに預けてあるだけなので、そのオフィスから退去する場合にそれが使われていなければ返してもらうことができます。
原状回復などでかかった費用を差し引き
退去するときに返してもらえる金額は、敷金として預けたお金のすべてではありません。汚してしまったところをきれいにしたり、壊してしまった部分を直したりする「原状回復費用」を差し引いて、残った金額が戻ってきます。
今のオフィスから新しいオフィスに移転を考えるとき、今のオフィスを退去する際に戻ってくるであろう敷金を新しいオフィスへの移転費用に充てられたら、と考える人もいるかもしれません。
個人の住居として賃貸していた場合、敷金の残りを返金してもらえるのは退去するときであることが多いです。しかし、オフィスとして賃貸していた物件については、敷金の返金が退去日よりも後になってしまいます。実際にいつ返ってくるのかは契約によって違うため、始めにかわした契約書を確認しましょう。退去から「1ヶ月以内に返金」や「6ヶ月以内に返金」など、返金の時期についても記載されているはずです。
オフィスを移転する際、移転前には既に新しいオフィスの契約を取り交わしているはずです。敷金の戻りを期待して、それを移転資金にすることを考えても無理な場合が多いので注意しましょう。
敷金に消費税はかからない?
敷金を支払うときには、消費税がかかるのかどうかも確認しましょう。
敷金は元々「何かあったときのために預けておくお金」です。何かを消費したわけでもなく、預けているだけのお金である敷金に消費税はかかりません。
敷金の返金が思ったより少ないのはなぜ?
敷金は不動産オーナーに預けているだけで、原状回復費用などを差し引いた残りの額は戻ってくるはずです。その返金を今後のあてにしている人もいるでしょう。
しかし、きれいに使っていたはずなのに思っていたよりも返金額が少ないことがあります。それはどのような場合なのか確認していきましょう。
契約時に敷金の償却(敷引き)を決めていた
まずは契約時に「敷金の償却」が決められていた、というケースがあります。賃料の滞納もなくきれいにオフィスを使っていた場合であっても、敷金の償却が決まっている場合にはその償却分の返金がありません。
解約時にどのような状態であっても無条件に差し引かれるのが償却です。関西地方では、これを「敷引き」と呼びます。「敷金の中で戻ってこない金額」として契約時に確認しておいてください。
オフィスの賃貸においては、この償却(敷引き)がよくあります。これは、オフィスを契約したときの名目が「敷金」か「保証金」かによってその相場が変わります。
「敷金」であったなら、その相場は賃料の1ヶ月~2ヶ月分ほどです。「保証金」の場合はその金額の10~20%くらいが相場になります。
原状回復費用が高額になった
思っていたよりも原状回復費用が高額になったために、敷金の返金額が少なかったというケースもあります。オフィスの場合には、契約した後にテナント側で内装を工事したり、電話工事などをしたりするため、それを元の状態に戻すための費用がかかります。住居の場合よりも原状回復にかかる経費が多い場合がほとんどなので、返金額も相応に少なくなるのです。
敷金診断士に相談するという手も
原状回復費用は、経年劣化したものについてはかかりません。また今の価値に対しての回復費用なので、何年も使われているものについては購入当時よりも価値が下がっているため原状回復費用として認められる金額も少なくなります。
不動産オーナーの中には、この「原状回復費用」をどこまで請求できるものなのか知らない人もいます。ですから、知らず知らずのうちに原状回復費用として多く請求されていることも少なくありません。
敷金として預けた金額から原状回復費用などを差し引いた金額が戻ってくるのは法律上でも保証されていることなので、敷金の返金額に納得できない場合には敷金診断士に相談すると良いでしょう。
敷金診断士とは、賃貸における敷金や保証金のトラブルを解決するために相談できる人です。様々な問題を解決するためのアドバイスをくれたり、借主が退居するときには実際に立ち会って適正な原状回復費用を査定してくれたりします。
第三者である敷金診断士に診断をしてもらうことで、トラブルを回避しつつ納得した金額を受け取ることができるでしょう。
敷金の勘定科目とは?敷金の仕訳の仕方
オフィスとして物件を借りた場合、仕訳・会計処理をする必要があります。
仕訳・会計処理とは、第三者が後から見たときにその会社のお金の流れが見えるようにしておく処理のことです。その処理をしておくことで、会社で使われたお金や会社に入ったお金がどのようなものだったのかが分かります。敷金はどのように仕訳・会計処理をすれば良いのかを確認していきましょう。
契約書の内容で仕訳の仕方が異なる
敷金は、契約時に決められた内容によって会計処理の方法が変わってきます。そのため、会社の経理担当者がどのように処理すべきか迷ってしまうことが多いのです。
敷金とは「家賃の滞納や原状回復に必要な費用に充てるための保証金」です。保証のために預けているものなので、基本的にはお金を使って資金がなくなったのとは少し事情が異なります。さらに、敷金の償却が決定していて、元々その金額が戻ってこないことが分かっている場合にも会計処理の方法が変わってきます。
基本的には「敷金」か「差入保証金」
敷金や保証金を仕訳・会計処理するときは、基本的に「敷金」か「差入保証金」のどちらかの勘定科目で仕訳します。どちらで仕訳しても構いませんが、一度勘定科目の書き方を決めたら違う言葉では表さないように気を付けてください。同じ内容について書いてあるのに勘定科目が異なっていると分かりにくく、誤解を与える可能性があります。
決算書で報告する場合には、敷金や保証金は賃借対照表の中の「資産の部」、「投資その他の資産」にあたります。これは、資金を使ってお金がなくなったわけではなく、戻ってくる予定がある資産だからです。
実際にオフィスを借りる契約をして、敷金の支払いをしたタイミングで会計処理を行います。以下は、500,000円の敷金を支払った場合の会計処理の書き方です。
(借方) (金額) (貸方) (金額)
敷金 500,000円 現金 500,000円
退去時に返却されなかった場合
原状回復費用に使われてしまい、退去するときに返却されなかった部分の書き方についても確認していきましょう。その場合には、「修繕費」か「雑損失」という勘定科目を使って必要経費として計上します。これもどちらの勘定科目で記入するか決めておきましょう。
借りていたオフィスから退去する際、預けた敷金500,000円から200,000円分を修繕工事の費用として充てられた場合の例を見ていきましょう。敷金500,000円ー修繕工事費用200,000円で、残った金額300,000円について普通預金に振り込んでもらった場合の会計処理の書き方は以下のとおりです。
(借方) (金額) (貸方) (金額)
普通預金 300,000円 敷金 500,000円
修繕費 200,000円
元々一部償却が決まっていた場合
契約するときに、最初から敷金の一部を償却することが決まっていた場合についても見ていきましょう。元々すべて戻ってくることはないと決まっているため、その分の金額については費用として計上する必要があります。
敷金の償却分について会計処理をする場合には、「長期前払費用」や「権利金」の勘定科目を使って計上しましょう。これは退去するときではなく、契約して敷金を支払った段階で計上しておきます。
以下、800,000円の敷金を支払った際、300,000円分については返金されないことが決まっていた場合の会計処理の書き方です。
(借方) (金額) (貸方) (金額)
敷金 500,000円 現金 800,000円
長期前払費用 300,000円
敷金を英語で言うと?
最後に、敷金を英語で表現する場合についても少しだけ触れておきます。敷金を英語でいいたいときには複数の伝え方があり、「a deposit」、「security deposit」、「caution money」などと表現します。英語で「敷金を入れる」といいたいときには「give a deposit」といいましょう。
まとめ
敷金は後から戻ってくるお金ではありますが、全額が戻ってくるわけではありません。そのため、オフィスを借りたときの仕訳処理において、少し分かりにくい部分があります。
オフィスを移転する際、敷金が戻ってくることをあてにして次のオフィスを借りようとしても、敷金の返金時期が遅くなるのであてにはできません。これから借りるオフィスを探す際には、これらをしっかり頭に入れておきましょう。