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Xtra株式会社
CEOが留守がちだった省スペース前オフィスから、内装にこだわったカフェ風オフィスに。Xtraの新オフィス
「裁量権のある仕事をしたい」「住む場所に捉われず、自由に仕事をしたい」。仕事に対する価値観が多様化するなか、リモートワークやフリーランスなど、働き方の選択肢も広がりを見せています。
今回訪れたXtra株式会社は、メイン事業のひとつとしてクラウドソーシング事業を展開しています。Xtraがもつ「キャリアをもっと自由に」の価値観は、オフィスにどのように表れているのでしょうか。創業者でありFounder & CEOの山田さん、CROの池澤さんにお話を伺いました。
2020年02月19日
text by 卯岡 若菜
photo by 原 哲也
この記事を読むのに必要な時間は約 17 分です。
山田 尚貴さん (やまだ・なおき)
Founder & CEO
2009年2月9日に、クラウドソーシングサービスConyacを主事業とする、Xtra株式会社(旧・株式会社エニドア)を創業。
池澤 廣和さん (いけざわ・ひろかず)
CRO
アート、デザイン、Web系の仕事に従事したのち、2016年1月に入社。マーケティングからカスタマーサクセスまで幅広く担当。
はじまりは翻訳事業。今は世界の垣根を飛び越えたクラウドソーシング事業にも発展

Xtraでは、どのような事業をされているのでしょうか。
大きく分けて、クラウドソーシング事業とAI翻訳事業を展開しています。
クラウドソーシング事業のサービスは、さまざまな仕事内容に対応している「conyac」と翻訳に特化した「スピード翻訳」。AI翻訳事業のサービスは、「Qlingo」とインバウンドに特化した「boundy」のそれぞれ2種類ですね。「Qlingo」では親会社が開発している翻訳エンジンを、「boundy」ではリクルートコミュニケーションズ社が開発した翻訳エンジンを使用しています。
クラウドソーシング事業にも翻訳があるんですね。
もともとconyacも翻訳が多めだったんです。そもそも、バイリンガルフリーランサー限定で始めたのが最初だったんですよね。
サービス提供のきっかけは、僕自身が感じた翻訳の需要が背景にあります。アメリカ留学後、社内で翻訳を頼まれることが多くて。翻訳の依頼を身近な人だけではなく、世界中にお願いできたら助かると思ってもらえるんじゃないかと考えたんです。
あえてインバウンドに特化したAI翻訳サービスを作ったのはなぜですか?
インバウンドだからこそ必要とされる翻訳精度があるからですね。たとえば、ホテルや旅館宿泊サービスのサイトに使われる「何畳」といった部屋に関する用語や、日本料理名で出てくる「アジフライ定食」や「八寸」、地名などは、通常のAI翻訳ではなかなか正しく翻訳されないんですよ。
「八寸」、日本人の私にもわからないです……。
料理名なんですよ(笑)。
Google翻訳で「八寸」を調べるとサイズ表記しか出てこないんですが、今「boundy」で試してみると……。おっ、料理名としてもきちんと出てきました。自画自賛ですが、すごいね。

良かった良かった(笑)。
勉強になりました(笑)。バイリンガルフリーランサーをターゲットとしていたり、翻訳事業を手掛けていらっしゃったりするということで、社員にも外国の方が多いんでしょうか。
今は日本人の比率が多くなりましたね。元は外国人比率が高かったです。7割外国人のときもありましたよ。
エンジニアに外国人が多かった時期もあったんですよね。
外国人社員がいることで、何か雰囲気が変わることはありますか?
特にないですね。日本語が堪能な人が多くて、やり取りをしているSlack上でも日本語を使っていますし。
働き方に対する工夫などはいかがですか?
フレックスタイム制度など、それぞれの暮らしに合わせた働き方ができるようにしています。11~15時をコアタイムとしているので、6時出社15時退社がいたり、11時出社がいたり、さまざまですね。
リモートワークを推奨しているので、リモートワーカーも多いですよ。
リモートワークを推奨しているのはなぜですか?
クラウドソーシング利用者は家で仕事をしている人が多いので、ユーザーの気持ちを理解するためにも実際にやってみた方がいいと考えているからですね。
ニューヨークに行ってリモートワークをやってみた人もいましたよ。リモートで働きやすいかどうかは職種にもよりますが、場所を選ばない仕事だと採用をしやすくなる利点もあります。
リモートワーク社員が増えると、コミュニケーションに課題を感じることもあるのではと思うのですが……。
コミュニケーションは基本的にSlackで行っていますね。あとは、趣味嗜好に合わせてサークル活動が行われています。強制ではなくて自由なので、盛り上がらずになくなってしまったサークルもあるんですが……(笑)。
最近は、ボルダリング同好会ができました。社の近くにジムがあり行ってみたところ、盛り上がりまして。ひとまず第2回の開催が決まりました。

▲ボルダリングでの様子。「同じ目的に向かって一緒に取り組めるのが楽しかったです」(池澤さん)
一緒に挑戦したり楽しめたりする時間が過ごせるのは素敵ですね!
譲れないこだわりは、「新耐震対応」「エリア」。Xtraのオフィス
Xtraさんが今回オフィスを移転した理由は何ですか?
キャパシティの問題ですね。前オフィスは今の3分の1くらいの広さしかなくて、そこに50人くらいいたんですよ。
「いたんですよ」と言いながら、山田は全然社にいなかったんですが(笑)。

そう、久々に出社したらお客さんと勘違いされたことがあるんですよ(笑)。
今回のオフィスは、某有名カフェチェーンをコンセプトにしています。「カフェみたいなオフィスだったら山田さんがオフィスに来るんじゃないか」という思惑もあったそうで。
「そうで」?
忙しい時期だったこともあり、池澤に移転の報告も相談もせず、僕メインでプロジェクトを進めたんです。
えっ!
事実です(笑)。移転が必要だという話は前からしてはいましたが……。
ちなみに、オフィスの移転はもう何度目かだったのでしょうか? だから勝手がわかっていて支障がなかった、とか?
確かに初めてではなかったですね。創業時のオフィスは間借りで、ペルシャ絨毯屋さんの隅っこでした。猫の額もない、猫の手の半分くらいのサイズで。そして、本業よりも絨毯を売る手伝いをしている比率の方が多くなってしまって(笑)。
非常に濃いエピソードですね。

その後、初めてオフィスを構えたところで、東日本大震災後の余震によるハプニングを経験しました。移転祝いでもらったお酒が割れてしまい、階下にまで漏れるという……。
うわあ。
だから、とにかくオフィスにこだわっているのは新耐震なんです。地震に耐性のない外国人メンバーがいることもありますしね。
あとは神田エリアですね。投資家さんからは渋谷に移転してこないのかと言われることもあったんですが、新耐震にこだわると、賃料的にも神田がベストだなと。東京の中心地で、アクセスもいいですからね。
なるほど。確かに耐震は重要なポイントですね。今回のオフィスは内装にもこだわっていらっしゃいますが、それは以前からですか?
いえ、前は仕切りだけあればいい程度でしたね。会議室の防音性が良くないと不評を買ったこともありました。
今のオフィスの評判はいかがでしょうか。
好評の層とそれほど興味のない層とに二極化していますね。そもそも、オフィスの内装を重要視していない人もいたので。
では、そんなオフィスを早速拝見させてください!
西海岸風カフェがコンセプト!Xtraのオフィス見学ツアー
「西海岸風カフェ」をコンセプトにしたXtraのオフィス。コミュニケーションが取りやすく、海外出身の社員も過ごしやすい場を目指したのだそうです。
デザイナーが書いた黒板の扉が印象的な「エントランス」


▲サービス名やバリューがさりげなく書かれている
入ったところにある扉、とてもおしゃれですね!
デザイナーにバリューなどを書いてもらいました。何かの機会に書き換えてもいいかなと思っています。
エントランスの角にあるこちらの看板は……?

僕がDIYしたものですね。移転当初、3Dプリンターで立体的な看板を創ろうと思って、プリンターのあるコワーキングスペースに行ってみたんです。そうしたら、出力に3日かかる大きさだと言われ断念しまして。
3Dプリンターの横にレーザーカッターがあったので、計画を変更しました。板を買ってきてカットして、操作性のあるLEDライトを入れて作ったんです。がんばったのに、誰も褒めてくれないんですけど(笑)。
社内イベントやラジオの公開収録の場にもなる「オープンスペース」


広々としたオープンスペースは、期末の「お疲れ様会」や、ボードゲーム好きメンバーが開催する「カタン会」の会場に使用することも。また、インターネット上で音声を配信できる「Podcast(ポッドキャスト)」で配信中の「神田FM」の公開収録を行ったこともあるのだそうです。
また、不定期で朝食のパンを食べながら決められたテーマについて話す座談会「朝会」も行われているのだとか。

バックに世界地図が描かれているんですね。
これはデザイン時にお願いして描いてもらったものですね。大きなソファは、「仕事の話をしない空間が欲しい」とお願いして設置したものです。
毎週火曜日に配信している「神田FM」の公開収録の場としても活用しました。
ちなみに、「神田FM」ではどういったお話をされるんですか?
時事ネタとか、カフェの話とか、「犬を飼いたい」とか……。
基本、ゆるい放送です(笑)。
ゲスト、随時募集しています(笑)。

▲「お疲れ様会」の一幕。「真面目な場にするつもりが、来てみたらJOKERがいました(笑)」(中央:山田さん)
コワーキングスペースのように、あえて壁を向いた「執務スペース」

執務スペース、レイアウトが変わっていますね。
座席が壁を向くようにしているのはあえてです。コワーキングスペースのドロップインのような雰囲気で働けるだろうというのが狙いですね。
リモートを推奨していることもあり、フリーアドレスにしようと思ったんですが、自分のモニターがあるため、今はまだ固定席がある状態ですね。フリーアドレスを浸透させたい思いはあるんですが……。
営業職が固定席のことが多いですね。エンジニアの方は、席関係なく働いている姿が見られます。

営業は電話応対が多い都合上、電話の近くで働く方が利便性が高いため、席が固定しがちといった特徴があるためですね。
中央のテーブルは何のために設置しているのですか?
これは、ちょっとしたやり取り用ですね。ちょっとパソコンを置いて軽い打ち合わせや相談ができると便利だなと思いまして。
働き方もキャリアも、もっと自由に。新しい時代の「働く」を創造する

「働き方改革」や「働き方の多様性」など、従来の価値観、考え方に捉われない働き方が増えている昨今。「やり方によっては、みんなが業務委託で働いている会社があってもいいでしょう。離職率や転職回数の多さも問題ではなくて、在籍した期間にどれほどのパフォーマンスを発揮したのかが重要だと思っています」と池澤さんが語ってくれました。
広々としたオープンスペースや、フリーアドレス化を進めたい執務スペースには、自分の働きやすさを考えられる余地があります。「今後は、ビジネスパートナーが世界中に点在していくかもしれない。そのパートナーも、社員・業務委託、さまざまな形があり得ると思う」と語るXtraのおふたり。コアビジネスをやりながらも、新しいものがあれば広げていく。固定観念に捉われないあり方が伝わる取材でした。