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雑談からイノベーションが生まれる? コミュニケーションが活性化するオフィス空間5選
働き方が多様化する中で、オフィスの役割も大きく変わりつつあります。オフィスはかつての「従業員たちがただ集まって仕事をする場」ではなく、創造性を育み、偶発的なコミュニケーションからイノベーションを生み出す「特別な空間」としての役割を担うようになっています。
本記事では、これまでIBASHO.で取材を行った先進的な企業のオフィス事例を5つ紹介していきます。各社の工夫やアイデアを参考に、これからの時代に求められるオフィスづくりのトレンドを探っていきましょう。
目次
オフィスづくりの新常識。チームの繋がりを育む空間戦略
近年のオフィスづくりのトレンドは、個人が集中して作業に取り組めることだけでなく「チームで集まること」にも価値を置く設計へとシフトしている傾向にあります。例えば、固定席を設けずにチームで自由に席を選べる「グループアドレス」の導入や、いつでも気軽に集まって話し合える「コラボレーションスペース」の拡充などがあげられます。コミュニケーションの自然発生を促し、部門を越えた対話が生まれるような仕掛けが、今のオフィスデザインには求められているのです。
このようなトレンドが台頭してきた背景には、オンライン会議ツールやチャットツールなど「容易に情報伝達ができる」ツールの普及があります。互いの場所や時間を選ばず、必要な情報を簡単に伝え合える環境が整備された一方で、非言語コミュニケーションや対面だからこそ生まれる偶発的な雑談や出会いが不足しがちになりました。そのような状況下を経て、人と人とが物理的に集う機会こそ、新しいアイデアやイノベーションの源泉となることが再認識されるようになったのです。
このような流れを受け、企業は、従業員がオフィスに来る目的を再定義し、オフィスを「わざわざ行きたくなる場所」へと生まれ変わらせることの重要性を考えるようになっていきました。
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雑談からイノベーションを生む!先進企業のオフィス空間5選
IBASHO.では、これまでに様々な先進的なアイデアを取り入れているオフィス空間を数多く取材してきました。今回はその中から、コミュニケーションの活性化に成功している5社の取り組みを紹介していきます。
1. Sansan株式会社:戦略的な空間設計で生み出された「出会いの場」

名刺管理を中心とした営業DXを支援するSansan株式会社のオフィスでは、「出会いが生まれる」空間を重視した設計が特徴的です。社員同士が偶然顔を合わせ、自然と会話が始まるような仕掛けが随所に散りばめられており、単に仕事の効率性を高める空間を提供するだけではなく、出会い・コミュニケーションが生まれる場としてのオフィスを追求しています。
例えば、28階の「Park(公園)」は誰もが気軽に座って話せる場所で、コミュニケーションが生まれる起点として空間全体を設計されています。また、28階からは中階段ですべてのフロアに行けるようにすることで、異なる部署の社員がすれ違う機会を増やすなど社員が偶発的に交流できる機会を創出しています。
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2. BASE株式会社:フレキシブルに使えるフリースペース

ネットショップ作成サービスを提供するBASE株式会社のオフィスは、「コミュニケーション」と「作業」という2つの側面を両立できるよう設計されています。執務室は端から端までが見通せる作りになっており、情報セキュリティの管理体制を重視した上で、より多くのコミュニケーションの機会を持つことができるように設計されています。
例えば、バーカウンターはコミュニケーションのきっかけの場として活用されています。また、全社定例や社内懇親会での利用、休憩スペース、ミーティングスペースなど多用途に使える「ALL BASE」というコミュニケーションスペースでは、社内だけでなく外部ゲストの方とのコミュニケーションも促進。チームや会社全体のゴール達成に向け、従業員一人ひとりが最適な働き方やオフィスの使い方を選択できる環境整備に取り組まれています。
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3. TIS株式会社:フロアによって雰囲気の異なるコラボレーションエリア


銀行や製造業向けのシステム開発を行っているTIS株式会社は、グループ会社間のコミュニケーション活性化を目指し、豊洲拠点を開設。レストランやカフェなど憩いの場となる空間を整備したり、執務エリアの通路横には通りかかった人と目線の高さが合うハイテーブル席を設けることで話かけやすい設計にするといった仕掛けが散りばめられています。
各フロアにはコンセプトの違うコラボレーションエリアが設けられており、31階のコラボレーションエリアは黄色を基調として気づきやアイディアを具現化する場を想定。また、キックオフや社内イベントなどに使用される30階のコラボレーションエリアは赤を基調としており、スタジアムのような場所にすることで、アイディアを広く発信できる場となっています。
時間と場所を自由に選択できるABWを導入し自由に働き方を選べる同社だからこそ、ハード面、ソフト面の双方からコミュニケーション施策を実施して、出社したくなる環境を提供しています。
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4. 株式会社リクルート:偶発的な出会いを生み、創造性を育むオフィス

人材領域をはじめとしたさまざまな事業を展開している株式会社リクルートの本社オフィスは、「CO-ENのような場所」がコンセプトです。「CO-EN」とは、2021年の会社統合時に新たに定められた人材マネジメントポリシーの一つで、「公園」と「Co-Encounter」という2つの意味を持たせているそう。働く場所にオフィスを選ぶなら「集まる場所として良き場所でありたい」という想いから、リアルコミュニケーションを担保する場としてオフィスを整備されています。
例えば、食を通じて従業員がつながるこだわりのダイニングは自然と人が集まるような設計になっており、その意図通り、グループ利用が圧倒的に多いとのこと。「パーゴラ」と呼ばれるコミュニケーションスペースはカーテンでゆるく仕切れる作りになっており、壁を作らないことで利用のしやすい空間を演出しています。さらに、セミナールームの手前にはラウンジが設けられ、セミナー前後のコミュニケーションを促進できる場となっています。利用状況は満足度調査でデータを収集し、内容によってオフィスの改善を行うなど従業員が働きやすい場の追求をしています。
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5. 日東電工株式会社:イノベーション実現の場としてのオフィス


日東電工株式会社は、「出会う」「もてなす」「話し合う」「やってみる」「こもる」「協働する」「魅せる」という7つの新しい働き方をコンセプトに、イノベーションセンター「inovas(イノヴァス)」を設計されています。その名の通り、イノベーション創出のための拠点である「inovas」の設計において、特に重要視された点は「コミュニケーション」です。「inovas」では仕切りや壁をなくし広々としたワンフロアにすることで、様々な部署のメンバーが偶発的に出会い、そこから自然なコミュニケーションが生まれる環境を整備しています。
イノベーションスペースである「Garden(ガーデン)」にはオープンスペースの随所に、いつでも、どこでも話し合えるニッチスペースが設けられています。短時間利用やリラックス目的などさまざまな椅子があることで、ちょっと立ち止まって腰を掛けて考えてみよう、話をしてみよう、ということがストレスなくできる空間になっています。
研究開発ゾーンのオフィスはフリーアドレスで、デスクをあえてランダムに配置しています。入り組んだような形にすることで歩くうちに前から来た人と「出会う」という仕掛けは、そこで生まれる偶発的なコミュニケーションを狙いとしています。実験室も仕切りがなく、隣で実験しているメンバーと気軽にコミュニケーションがとれ、偶発的な発見やコラボレーションが生まれやすい環境となっています。
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偶然の出会いを設計することで、オフィスはイノベーションが生まれる場所へ
リモートワークが普及した今だからこそ、オフィスに行かなければ得られない「雑談」や「偶発的な出会い」の価値が見直され、その重要性は高まりを見せています。従業員たちが自然発生的に集い、対話し、創造性を発揮できるようなオフィス空間は、組織全体の活性化と持続的な成長を促してくれるでしょう。
「働く場所」から「つながる場」へ。オフィスのあり方が変化する今、企業に革新をもたらす鍵は、「空間のデザイン」にあるのかもしれません。