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総務の本質は「人への想い」。攻めと守りで描く、トリドールホールディングスのオフィス観とは

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トリドールホールディングス

「食の感動で、この星を満たせ。」をスローガンに掲げ、讃岐うどん専門店「丸亀製麺」をはじめとする多彩な食のブランドを世界に展開する株式会社トリドールホールディングス。2019年の渋谷オフィス移転から約6年、コロナ禍を乗り越えて全員出社を実現する過程で常に前向きにオフィス課題と向き合い続け、誰もがハピネスを感じられる環境を目指すトリドールホールディングスの総務部。従業員一人ひとりの人生に寄り添う環境づくりの舞台裏には、どんな秘訣があるのでしょうか。総務部の中村さんと小泉さんにお話を伺いました。

中村 将人
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中村 将人
株式会社トリドールホールディングス 総務部 次長 兼 法務コンプライアンス部(取材当時)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/管理業務主任者

法科大学院修了後、法律事務所に入所しパラリーガルやオフィスマネージャーを経験。2016年に株式会社トリドール(現、株式会社トリドールホールディングス)に入社。総務部および法務部にて、株主総会や取締役会事務局、契約書審査などの法務関連業務に従事する傍ら、宅地建物取引士の知識を活かしオフィス拡張・移転を担当。「攻める総務」を標榜し、業務改善に注力し現在に至る。趣味は硬式テニスで、インストラクターとして8年の指導経験を有するも、現在はテニスから遠ざかっている。好きな言葉は、「文武両道」、「凡事徹底」。

小泉 由美
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小泉 由美
株式会社トリドールホールディングス ハピネス・ヒューマンサポート本部 総務部

教育業界において仕入れ・購買業務に従事しながら総務部にて教材の資産管理業務を担当。2020年に株式会社トリドールホールディングスへ入社し、2023年より総務部へ異動。現在はオフィスファシリティ業務を中心に、従業員の業務効率向上と快適な職場づくりに貢献しています。

島型固定席からABWへ。2019年の移転とともに働き方を一変させたオフィス改革のその後

源(workrary.ライター) :

まずは自己紹介をお願いします。

中村さん :

弊社は丸亀製麺をはじめとした飲食店を展開しており、31の国と地域で2,000以上の店舗を運営しています。私たちホールディングスはその事業展開を支える役割を担っています。私は総務部と法務コンプライアンス部に所属し、オフィスの改善・管理や各種サービス提供の企画運営を担当しています。

小泉さん :

私も総務部として同様の業務を行いつつ、最近では人員増加に伴う座席数の確保やレイアウト変更、エントランスの季節装飾なども担当しています。

小泉さんが担当するエントランスの季節の装飾

ABWの導入によるコミュニケーション活性化。「お気に入りの席」ができるのは自然なこと

源 :

本当に素敵なオフィスで、驚きを隠せません。こちらのオフィスでの働き方の特徴を教えてください。

中村さん :

コロナ禍を経て、現在は原則出社のスタイルに戻りました。いまでは約350人がこのオフィスに出社していますね。2019年の移転のタイミングでABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)を採用し、その日の業務内容に応じて働く場所を自由に選べるのが大きな特徴です。

小泉さん :

移転前のオフィスでは島型の固定席だったため、他部署との交流には心理的なハードルがありましたが、現在のオフィスでは、偶発的交流や気軽な会話が日常的に生まれるようになっています。

源 :

移転時の狙い通り、いまでもコミュニケーションが活性化されているんですね!ABWは、固定席化されてしまうなど運用管理がかなり難しいと聞きます。現在はどのような運用をされていますか。

中村さん :

固定席化については完全に否定はしていないですね。ひとによって集中しやすい環境は異なりますし、「お気に入りの席」ができるのも自然なことです。ただ、クリーンデスクポリシーとして退社時には私物の完全撤去を徹底してもらっています。

源 :

そうなんですね!2022年のIBASHO.(workrary.姉妹サイト)での取材時には、ABWを導入するにあたってペーパーレス化や私物の管理面が大変だったというお話もありました。

中村さん :

紙類については、ペーパーストックレスの方針を取っています。印刷は許可していますが、紙資料の保管方法や保管要否の判断を部署や各人で日常的に行ってもらい、総務部では外部倉庫の案内や機密文書の溶解ボックス提供などのサポートをしています。

小泉さん :

私物管理については、引き続き全員に専用ロッカーを用意しています。「物をなくすことが正解」ではなく、簡略化できる部分は徹底し、必要な物は適切に運用する。そのバランスを大切にしています。

生産性を高めつつ、長時間過快適に過ごせることを重視したオフィスづくり

源 :

IBASHO.では「オフィスじゃないオフィス」というキーワードもありましたが、オフィスづくりで大切にされていることはなんですか。

中村さん :

「オフィスは長時間過ごす空間」という考え方を大切にしています。週5日、1日約8時間をここで過ごすわけですから、仕事の生産性を高めるための場所であることはもちろん、長時間快適に過ごせる環境であることが重要だと考えています。

そのために、息抜きをできるカフェスペースやシエスタルーム(昼寝部屋)を設けました。シエスタルームでは15分間の仮眠で頭をリフレッシュし、生産性向上を図っています。

源 :

すごく羨ましいスペースのひとつです!ご移転から6年経たれますが、いまでも利用される方は多いのでしょうか。

中村さん :

そうですね。稼働率はとても高いです。

シエスタルーム
源 :

利用の管理はどのようにされているのでしょうか?

中村さん :

入口にマグネットがあるので、使うベッドのイラストの上に重ねてもらうというアナログな手法を取っています。会議室のようにデジタルで管理することもできるのですが、このほうが気軽に利用してもらえますしね。あと、利用時は勤怠の打刻もしてもらっているため、業務に支障が出ない運用になっています。

小泉さん :

ほかにも、気分転換にオフィス内を自由に散歩できるよう周遊可能な通路を多数設計しています。通路沿いにはソファやベンチを配置し、公園のような癒しの空間として活用できるほか、「会議室を予約するほどではないけれど、ちょっと込み入った相談をしたい」という時にも気軽に利用できます。

源 :

働く一人ひとりのコンディションや人生に寄り添ったアイデアに溢れているのですね。本当に素敵です。

会議室エリアの周遊可能な通路。ベンチも設置。

分け隔てなく働ける環境。グループの枠を超えた交流がもたらす価値

源 :

こちらのオフィスにはグループ会社も入居されていますが、交流や各社のスペース確保など何か特別な工夫はありますか?

中村さん :

グループ会社間での区別や制限は一切設けておらず、どの会社の役員も従業員も自由に席を選べます。作業中に隣に役員が座って、自然に雑談が始まる。そんな光景が私たちの日常です。

小泉さん :

新商品の試食会といったイベントもオフィス内のカフェスペースやキッチンで開催されていて、グループ会社の枠を超えた交流が自然に生まれています。食に携わる企業ということもあり食べることが大好きな方が多く、年齢や性別、役職を問わず多くの方が参加しています。「会議で試食会に行けなかった!」と残念がる声もあるほどです(笑)

社食エリアと業務エリアにも壁がなく、美味しい食事の匂いが良く伝わる空間。
中村さん :

そうした何気ない時間の共有が、従業員間・グループ会社間の距離を縮めていると感じます。特別な仕組みというより、分け隔てなく働ける環境を整えることを重視していますね。

毎月10〜20名の従業員増。急成長にも柔軟に対応するオフィス運用とは

源 :

IBASHO.取材のタイミングから、オフィスで変化したことはありますか。

小泉さん :

ありがたいことに、毎月10〜20人の中途入社があり、取材当時から約100名増員となりました。そのため執務スペース拡充に追われる日々です。

源 :

社員数が増加することによる席数・スペースの不足にお困りの声はたしかによく聞きます!御社ではどのような工夫をされてきたのでしょうか。

小泉さん :

まずは、ビッグテーブルの増設ですね。以前はゆったりとしたソファ席だったところを20人掛けのビッグテーブルにし、全体的な雰囲気を保ちながら利用可能な席数を確保しています。

ビッグテーブルは、なんと社内の建築チームによる造作。
小泉さん :

次に、ハイカウンター席にはバッグフックを設置しました。ハイカウンターだとどうしても隣の座席に荷物を置かれてしまったりして、もったいないなと。バッグフックは荷物をかけてもらうだけではなく、隣の席との境界線にもなっています。

バッグフックの設置されたカウンター席
中村さん :

長時間の作業ができるスペースを増やすという目的で、元々電源がなかったカフェスペースに工事をしてコンセントの数を増やしたりもしましたね。

災害対策や社会貢献など、多方面で改善・進化

源 :

とてもおしゃれな自販機ですね!こちらも前回の取材時以降に設置されたのでしょうか?

中村さん :

そうですね。こちらは、「シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー協定(S-SAP)」の一環として設置された自販機なんです。渋谷区の福祉作業所で働く障がい者が描いた文字・模様をもとにした「シブヤフォント」のデザインです。この自販機で購入すると、売上の一部が福祉作業所などへ還元されます。ただの自販機なら導入しなかったのですが、地域社会への貢献ができるということで設置しています。

「シブヤフォント」の自動販売機
源 :

ほかにも新たに導入されたものはありますか?

中村さん :

災害対策強化のためポータブル電源を導入しまして、20個ほどあるのですが、普段使いもしています。また、無線機を10台設置し、災害時のオフィス内での通信手段を確保しています。

災害対策用ポータブル電源。電動アシスト自転車のバッテリーを応用し、普段は電源のない場所での作業にも活用。
2部屋繋げて160名収容できるセミナールームは、災害時に防災本部として機能。
小泉さん :

防災備蓄品の管理もシステム化しており、数を把握するだけでなく非常食の消費期限が残り半年になるとアラートが出るような仕組みになっています。

源 :

この3年の間に多くの変化があったんですね!

「家より出社が“楽しい”」という声も。従業員の反響と意見の取り入れ方

源 :

従業員のみなさんからはどのような反響がありますか?

中村さん :

移転後は本当に多くの好意的な声をもらいました。以前のオフィスと比べてコミュニケーション量が増えたのはもちろんですが、執務室には壁がないので常に誰かしらが動いているのが見え、それによって活気が生まれて会社全体の雰囲気が劇的に明るくなりました。採用面接でオフィス見学をしていただくことも多いのですが、候補者の方々の反応も非常に良く、採用活動にもプラスの影響を実感しています。

半透明で圧迫感のないガラス板の仕切り。完全には仕切られていなくとも、集中しやすいという。
小泉さん :

印象的だったのは、ある従業員から「家で仕事をするより会社で仕事をする方が”楽しい”。オフィスもきれいだし、社食も美味しいし」という声をもらったことです。私たちが目指していた「出社したくなる環境づくり」の想いが届いたと実感でき、本当に嬉しかったですね。

健康的な社食やカフェメニューが低価格で提供されている。
源 :

それは嬉しい反響ですね!2022年のIBASHO.取材時には「攻める総務」というキーワードをいただきましたが、現在はいかがでしょうか。

中村さん :

もちろん、その姿勢は今も変わりません。一方で、全員出社となった今、基本的な機能や座席数の確保など優先度の高い「守り」の業務も大幅に増えました。まずは緊急度の高い「守り」の課題を確実に解決し、働く環境の基盤を整える。その上で「攻める総務」として、さらなる環境改善を続けていく。この優先順位を常に意識して対応しています。

源 :

ご意見や改善要望はどのように集めているのでしょうか?

中村さん :

総務部としては5名だけなので、350名全員の細かな困りごとまで把握しきれないのが実情です。そのため、日頃から積極的に声をかけて意見や要望を聞くよう心がけているほか、年に一度の全社アンケートも実施しています。

源 :

実際に従業員の声を反映された例はありますか?

中村さん :

そうですね。モニターの貸し出し時間について、以前はメールルームの運用時間の都合上18時には返却してもらっていたのですが、18時以降も利用したいという要望をいただき、返却方法や管理体制を見直すことで延長を実現しました。

小泉さん :

あとは、従業員なのか来訪者なのかを区別するネックストラップも導入しました。先ほどもお話したように毎月新しい方が入社されるので、「社内のひとかお客様かがわからず声のかけ方を迷ってしまう」といった声があったんです。サービス業を営む会社として、オフィスにいらした方へのおもてなしの姿勢は大切ですしね。

中村さん :

どんな小さな声でも、まずは「実現可能かどうか」「やるべきかどうか」を必ず検討するようにしています。

次の目標は「健康になるオフィス」。体格差への対応から心の安全地帯づくりまで

源 :

常に課題と向き合い、解決し続けているお二人ですが、今後さらに取り組みたい施策や課題はありますか?

中村さん :

2019年の移転時に掲げた「コミュニケーションの活性化」や「出社したくなるオフィス」という目標は、達成できてきたと感じています。次のステップとして考えているのが「健康になるオフィス」です。出社することで心身ともに健康になれるような環境づくりを目指しています。

小泉さん :

長時間のデスクワークでも疲れにくくするため、腰痛対策グッズや姿勢サポート用品の貸し出しなども「健康施策」の一環だと考えています。また、さまざまな体格の方がいらっしゃるので、新しい家具を選ぶ際は高さ調整などができるものを意識して選定するようにしています。

中村さん :

理想は「通勤でのストレスがあっても、オフィスに着いた瞬間に元気になれる」そんな場所にすることです。ここで働くみんなにとって、オフィスが心の安全地帯になればと思っています。まだ検討段階のアイデアも多いですが、今の環境を活かしながら、できることから順次取り組んでいきたいですね。

源 :

「出社することで健康になる」という発想が素晴らしいですね。すでに充実した社食制度もある中で、さらにその上を目指されるとは、改めて本当に従業員一人ひとりに寄り添う姿勢を感じます。

「出社してくれてありがとう」。総務の本質は環境整備だけではなく、働く人への想い

源 :

それでは最後に、従業員の皆さんへのメッセージをお願いします。

中村さん :

オフィス運用は制度やルールだけでは成り立ちません。一人ひとりの理解と協力があってこそです。クリーンデスクポリシーやペーパーストックレスについても、単に「ルールだから守る」のではなく、その目的を理解して積極的に協力してくださるみなさんの意識の高さに、いつも感謝しています。今後もお取引先様やご家族に自慢していただけるオフィスであり続け、働く人が健康でハピネスを感じられる環境を作っていきたいと思います。

小泉さん :

総務の仕事は多岐にわたる中で、本当に改善”すべき”かどうかの判断が常に求められ、難しさを感じることもあります。でも何より、どんなに遠方にお住まいの方でも毎日出社してくださるからこそ、私たち総務の仕事が意味を持つのだと思っています。そして、みなさんが出社してくださるからこそ、これほど活気のあるオフィスになっている。その事実に心から感謝しています。これからも総務として、より働きやすい環境づくりに努めていきます。

「食には国境がない」からこそ、地球規模で事業展開を目指す壮大なスローガン

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取材先:

株式会社トリドールホールディングス

https://www.toridoll.com/ 公式サイト