人事と総務の連携が鍵。全社を巻き込む「働き方改革プロジェクト」の失敗しない進め方
近年一気に加速した「働き方改革」。その取り組みにおいて、「理想と現実のギャップ」に苦しんでいませんか?多くの企業で、「せっかく制度を導入したのに、なぜか使われない」「一部の部署では成果が出ても、全社的な広がりがない」といった課題が顕在化しています。
その根本原因は、制度を担う人事部門と環境を整える総務部門の連携不足、そして全社を巻き込むための戦略の欠如にあります。
本記事では、この課題を解決し、働き方改革を成功に導くための具体的なステップを解説します。
目次
1. なぜ総務と人事の連携が必要不可欠なのか?
働き方改革を成功させるためには、ソフト(制度設計)とハード(環境整備)の両面がバランスよく機能することが不可欠です。
人事の役割とは
人事部は、主に「人」に関する制度と仕組み、そして企業文化の変革を担当し、働き方改革のソフト面を担います。具体的には、柔軟な勤務制度設計、評価制度の改定、福利厚生などを整備し、従業員が意欲的に働ける仕組みを作ります。
総務の役割とは
総務部は、主に「モノ」や「インフラ」に関する環境整備を担当し、働き方改革のハード面を担います。執務スペースの最適化、オフィス環境の快適性維持、インフラや備品の管理などを担当し、従業員が効率的に働ける物理的・技術的な基盤を提供します。
人事・総務の連携不足による失敗事例
働きやすい職場づくりに欠かせない総務と人事ですが、連携不足は社内で様々な機能不全を引き起こす原因となります。
失敗例1.リモートワークを導入しても制度が機能しない
人事がリモートワーク制度を導入しても、通信環境の補助やセキュリティ対策において総務やIT部門との連携がうまくいっていないと、サーバーダウンやシステムトラブルが頻発するなど、業務遂行に支障をきたします。遠隔で安心して仕事をすることができないことから、せっかくの制度の利用率が伸びず、形骸化してしまいます。
失敗例2.フリーアドレス導入で生産性が低下
フリーアドレスを導入しオフィス環境を変えても、新しい働き方に適した評価制度や組織体制を整備する人事と連携できていなければ、従業員にとっては有益な施策にはなりません。連携不足により、従業員間のコミュニケーションが低下したり、業務工数が増えたりしてしまい、組織全体の生産性低下というマイナス効果を生んでしまいます。
両部門がしっかりと連携しながら施策を進めていくことで、働き方改革は単なる労働環境の整備にとどまらず、新たな企業文化として社内に定着・浸透していくでしょう。
2. 失敗しない働き方改革プロジェクトの進め方

ここからは、「制度の形骸化」という失敗を避け、プロジェクトを成功に導くための5つのステップを解説していきます。
Step 1:目的・ビジョンの設定
経営層を巻き込み、「生産性向上」「人材定着」「イノベーション創出」など、具体的な目的を明確化します。単なる残業削減ではなく会社としてのビジョンを設定し、「何のために改革するのか?」を全従業員に浸透させることが、成功の出発点です。
Step 2:プロジェクトチーム組成
総務・人事部に加え、IT部門、経営企画、そして「現場のリアル」を知る各部門の代表者を含めた多職能チームを結成します。部門横断で課題を吸い上げ、机上論で終わらない施策を設計することが、全社的な協力を得る鍵です。
Step 3:徹底的な現状分析と課題の特定
従業員へのアンケート調査やヒアリング、勤怠記録や業務工数などのデータを分析し、理想と現実のギャップを数値化・可視化します。自社の課題を客観的に把握することが、効果的な施策立案の土台となります。
Step 4:施策の立案とスモールスタート
オフィス改善やデジタルツール導入などのハード面の施策と、新制度の設計や研修計画の策定などソフト面の施策を策定していきます。いきなり全社で導入するのではなく、試験導入を行い効果測定を経て改善することで、全社展開へとスムーズに移行できます。
Step 5:効果測定とPDCAサイクル
走り出した施策に対しては、それぞれKPIを設定し、定量的・定性的な効果測定を行います。労働時間削減率のほか、エンゲージメントスコアや離職率は、プロジェクトの効果測定に有益な指標となるためおすすめです。成果を共有し、成功・失敗要因を次の施策に活かすPDCAサイクルを回し、改善を重ねましょう。
3. 働き方改革を「自分ごと」に。全社を巻き込むコミュニケーション戦略

働き方改革を一部の部署の施策で終わらせず、すべての従業員にとって「自分ごと」とするためには、戦略的なコミュニケーションが不可欠です。以下のような施策を参考に、自社に適した形で社内コミュニケーション活性化する戦略を考えてみましょう。
各現場に「プロジェクト推進役」を置く
各部署から働き方改革に前向きな従業員を任命し、現場目線での意見交換や、成功事例の水平展開の推進役を担わせます。これにより、現場のリアリティを持った声が施策に反映されます。
双方向コミュニケーションの実現
施策導入後も、アンケートやワークショップを定期的に実施し、現場の声や課題を継続的に収集しすることで、これにより、現場の意見を制度や環境の改善に反映させることができ、全社的な参画意識を高めます。
社内SNSやポータルサイトを整備し、制度利用に関する疑問や要望、成功事例などを誰もが気軽に共有できる環境を作ります。
成功体験の可視化と表彰
業務の効率化や有給取得率向上に貢献したチームや個人の取り組みを取り上げ、そのプロセスと成果を全社に広げます。社内表彰制度で評価するのもいいでしょう。成功事例は、他の従業員への具体的な行動指針となります。
参加型ワークショップの開催
一方的な研修ではなく、部署や世代を超えた従業員が集まり、「より良い働き方」について議論するワークショップを定期的に開催し、従業員が主体的に参加する機会を創出します。
まとめ|「制度導入」で終わらせない!人事×総務の戦略で働き方改革の成果を最大化
働き方改革は、一度きりのプロジェクトではなく、企業が社会や事業環境の変化に応じて競争力を高め、進化していくための継続的な取り組みです。
単に新しい制度を導入する「点」の施策で終わらせるのではなく、制度設計を担う人事と環境を整備する総務が、戦略的な協奏関係を築くことが重要です。この二部門が、ソフトとハードの両輪を連動させ、現場の声を取り込みながら施策を磨き上げることで、初めて改革は全社的な「文化」として深く根付いていきます。
本記事を参考に自社に適した「より良い働き方」を再考し、人事・総務から全社を巻き込んだ「失敗しない」プロジェクト遂行を目指していきましょう。
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