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ハイブリッドワークの「次」を見据えるオフィス戦略とは

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ハイブリッドワークが多くの企業に浸透した今、「出社率の低迷」「チームの一体感の希薄化」「若手社員の成長停滞」といった新たな課題が浮き彫りになっています。

働き方の柔軟性や生産性向上というメリットは実現されている一方で、「なぜオフィスに行く必要があるのか」という根本的な問いに対する明確な答えを持てずにいる企業が多いのが現実です。重要なのは、単なる出社率向上ではなく、「オフィスでなければ実現できない価値とは何か」を根本から見直すことです。

本記事では、オフィスを「働く場所」から「目的を持って集まる場所」へと再定義するための具体的な戦略とアプローチをご紹介します。

1. オフィスは「働く場所」から「目的を持って集まる場所」へ

かつてのオフィスは、全従業員が毎日出社することを前提に設計されていました。しかし、ハイブリッドワークが浸透し、どこでも働けるようになった現代において、オフィスの役割にも変化が求められています。

オフィスは行かなければならない「働く場所」ではなく、従業員が自ら行きたくなる「目的を持って集まる場所」へと変化する必要があります。そのためには、オフィスが提供する価値を根本から見直し、そこでしか得られない魅力的で意味のある体験を創出することが不可欠です。

次世代オフィスが担う3つの役割

では、次世代のオフィスはどのような役割を担うべきなのでしょうか。 これからのオフィスは、単なる執務スペースではなく、企業の成長と従業員の働きがいを支える戦略的な拠点となり、主に以下の3つの重要な役割を担います。

役割1:イノベーションを加速させる「共創の場」

自宅やカフェでは難しい、偶発的な出会いや活発な議論から新しいアイデアを生み出す拠点としての役割。

イノベーションは企業の競争力を左右する重要な要素です。個人が集中して行う作業はリモートでも可能ですが、画期的なアイデアの多くは、偶発的な出会いや何気ない雑談から生まれます。だからこそ今、オフィスは人々が集まることで化学反応を促す共創の場としての価値が再定義されています。

例えば、カフェスペースや共用エリアを動線の交差点に配置することで、異なる部署の従業員が自然に出会える環境を作り出すことができます。また、ホワイトボードや可動式家具を豊富に配置したフレキシブルな空間は、チームの目的や人数に応じて最適な環境を構築でき、アイデアの可視化と発展を促進します。

役割2:企業文化を醸成し、エンゲージメントを高める「求心力の場」

従業員が同じ空間を共有することで、企業が大切にする理念や価値観を肌で感じ、組織への帰属意識を高める役割。

特に、働く場所が分散するハイブリッドワーク環境下では、オフィスは、企業の思想や価値観を五感で感じられる体験の場として機能する必要があります。これは単に企業ロゴを掲示することではなく、空間デザインやインテリア、さらには働き方そのものを通じて企業文化を表現することを意味します。

企業のビジョンを体現したデザインは従業員に誇りと一体感を与え、社内イベントや交流会の開催を通じて組織のエンゲージメントを高めます。特に、新入社員が企業文化に触れ、円滑な人間関係を築く上で、対面のコミュニケーションの場となるオフィスの存在は不可欠です。

役割3:心身の健康と生産性を支える「ウェルビーイングの拠点」

従業員一人ひとりが心身ともに健康で、いきいきと働ける環境を提供することも、次世代オフィスの重要な役割。

快適で健康的な環境は、従業員の満足度を高め、ひいては企業全体の生産性向上に直結します。具体的には、自然光を最大限に活用した空間設計や、リフレッシュスペース、身体的負担を軽減し最適な作業姿勢をサポートする家具の導入などといった物理的な環境整備に加え、その日の業務内容や気分に合わせて最適な場所を選べるABWの採用も極めて効果的です。

これらの取り組みは、従業員満足度の向上だけでなく、企業ブランドの向上と採用競争力の強化にも直結します。

2. 未来を拓くオフィス戦略の具体策

次世代オフィスの役割を理解したうえで、それを実現するための具体的な戦略の検討が必要です。ここでは、実際に多くの企業で効果を上げている3つのアプローチをご紹介します。

戦略1:ABWの進化

ABWは個人の生産性向上から始まりましたが、近年ではチームや組織全体のパフォーマンスを高めるための概念へと進化しています。これは、単に個人の働きやすさを追求するだけでなく、チームのコラボレーションやコミュニケーションを円滑にすることが、企業の成長に不可欠であるという認識が広まったためです。

例えば、執務エリアの近くに気軽にミーティングができるファミレス席のようなオープンスペースを配置したり、プロジェクトの相談がしやすいソファエリアを設けるなど、チームの協働パターンを想定した多様な空間を用意することで、より効果的なコラボレーションが実現できます。

そして、これらの空間は固定的なものではなく、プロジェクトの進捗やチーム編成の変更に合わせ、迅速かつ柔軟にレイアウトを再構成できる「可変性」も、これからのオフィスには不可欠な要素です。

戦略2:テクノロジーの活用

データドリブンなオフィス運営を実現するために、IoTセンサーや予約システムを活用した利用状況の可視化も重要です。どのエリアがいつ、どの程度利用されているかを定量的に把握することで、空間の最適化と継続的な改善が可能になります。

さらに、ハイブリッドワークの環境下では、リアルとバーチャルを繋ぐ高度な会議システムの導入も不可欠です。オフィス参加者とリモート参加者間で対等なコミュニケーションをとれる環境を整備することで、質の高い対話が実現できます。

戦略3:ソフト面(運用・仕掛け)の強化

ハード面の整備だけでは、真の意味での目的地としてのオフィスは実現できません。出社を促すのではなく、集まるきっかけを自然に作り出すソフト面の取り組みが重要です。

例えば、定期的なランチ会や社内外の勉強会、部門横断型のワークショップなど、学習と交流を兼ねたイベントの開催が効果的です。また、プロジェクトのマイルストーン達成時には、関係者がオフィスに集まってお祝いするなど、ポジティブな体験と結びついた出社機会を創出することも重要です。

3. 自社に最適なオフィス戦略を描くための成功の鍵

これまでに述べた戦略を自社で実践するために、以下の4つのステップを順次実行することをおすすめします。

1. WHY(目的の明確化)

まずは、何のためにオフィスを変えるのかという目的を、具体的な経営課題と結びつけて明確化しましょう。単に働き方を改善したいという漠然とした理由ではなく、「イノベーション創出力の向上」「従業員エンゲージメントの向上」「採用競争力の強化」など、測定可能な目標を設定しましょう。

2. INVOLVE(従業員の巻き込み)

オフィス戦略は経営層だけで決定するのではなく、実際に利用する従業員の声を積極的に吸い上げることが成功の鍵となります。ワークショップやアンケート、インタビューなどを通じて、現在の課題と理想の働き方を把握し、戦略に反映させることが重要です。

3. DATA-DRIVEN(データに基づく判断)

感覚や経験則ではなく、客観的なデータに基づいて計画を立て、改善を重ねましょう。利用状況の定量分析、従業員満足度調査、生産性指標の測定などを定期的に実施し、戦略の効果を継続的に検証することも忘れずに。

4. AGILE(継続的な進化)

オフィス戦略に「完成」はありません。組織の成長、業務内容の変化、テクノロジーの進歩に応じて、柔軟に空間と運用を進化させ続ける姿勢が大切です。小さな実験を重ね、効果的な取り組みを拡大するアプローチを採用しましょう。

4. まとめ

ハイブリッドワークが浸透した現代において、オフィスは単なる「働く場所」から「目的を持って集まる場所」へと進化しています。この変化に適応し、従業員にとって魅力的な目的地としてのオフィスを創り上げることは、企業の重要な経営戦略の一つとなりました。

変化を恐れず、従業員と共にオフィスを創り上げることで、これからの時代を勝ち抜く組織を構築していくことが可能になります。まずは自社の現状を正確に把握し、明確な目的意識を持って、一歩ずつ理想のオフィス戦略を実現していきましょう。