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出社が楽しみになる会社へ。パフォーマンスを最大化する「働き方」と「オフィス」の作り方

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ハイブリッドワークが新たな標準となった今、多くの企業が「出社意欲の低迷」と「チームの一体感の希薄化」という課題に直面しています。
「家でも仕事ができるのに、なぜわざわざ会社に行かなければならないのか?」この従業員の素朴な疑問こそが、既存のオフィスの存在意義に対する最も本質的な問いです。

重要なのは、単なる出社強制ではなく「オフィスでなければならない価値」を明確にし、従業員が自発的に「行きたい」と思える環境を戦略的に構築することです。
本記事では、従業員が出社を楽しみにし、かつパフォーマンスを最大化する働き方とオフィスの作り方を解説します。

1. 現在の働き方と価値観の変化について

株式会社ザイマックス不動産総合研究所が2024年10月に実施した「大都市圏オフィスワーカー調査」は、ワーカーの働き方と価値観のリアルな変化を浮き彫りにしています。

この調査によると、調査対象者の働き方を「完全テレワーク」「ハイブリッドワーク」「完全出社」の3つに分類した結果、テレワーカー(完全テレワーク+ハイブリッドワーク)の割合は首都圏で52.8%に達しました。地方都市でも約4割がテレワーカーとなっており、テレワークがある程度定着したことが分かります。

出典:【図表1-1】<オフィス所在地別>オフィス出社とテレワークの状況(大都市圏オフィスワーカー調査2024)株式会社ザイマックス不動産総合研究所

このような環境下で、現在の働き方に対する不満・課題として突出して高かった項目は以下の2つです。
1.通勤が苦痛に感じる(45.7%)
2.テレワークでできる仕事でも出社を要求される(43.1%)

出典:【図表4】現在の働き方で感じている不満・課題(大都市圏オフィスワーカー調査2024)株式会社ザイマックス不動産総合研究所

企業が目的を明確にせず「とりあえず出社」を強制することが、従業員の深刻な不満と課題に直結していることを示唆します。実際、働き方に対する満足度が低いグループほど、現在の勤務先からの転職意向が高い傾向が明確に見られており、単純な出社強制は従業員のエンゲージメントと企業の競争力を同時に下げる、逆効果な施策になりかねません。

出典:【図表3-1】<働き方に対する満足度別>現在の勤務先からの転職意向(大都市圏オフィスワーカー調査2024)株式会社ザイマックス不動産総合研究所

企業が出社を求めるのであれば、従業員の「不満」を解消し、「行きたい」と思わせる「理由」を提供する必要があります。

2. 調査データが解き明かす「出社したくなるオフィス」の2大要素

では、従業員はオフィスに何を求めているのでしょうか。同調査の結果では、出社したいオフィスの条件として、以下の2大要素が上位を占めることを示しました。

出典:【図表5】出社したいオフィスの条件(大都市圏オフィスワーカー調査2024)株式会社ザイマックス不動産総合研究所

要素①「働きやすい環境」の正体

「働きやすい環境が整っている(通信、什器、執務スペース等)」が60.3%と最も高い支持を得ました。これは、単に「綺麗なオフィス」を求めているのではありません。現代のワーカーが求めているのは、シームレスなWi-Fi環境、長時間使用しても疲れない質の良い什器、そしてWeb会議に必須の個室ブースなど、現代の業務内容に最適化された環境です。

特に重要なのは、在宅ワークの利便性を超える「オフィスならではの快適性」です。高速通信環境、複数のモニター設置、専用の会議設備など、自宅では実現困難な設備が出社する明確な理由となりえます。また、コーヒーマシンやリフレッシュスペースも、オフィスでの体験価値を高める重要な要素として機能します。

要素②「業務に集中しやすい」環境とは

次に「業務に集中しやすい」が46.1%で続きました。オープンすぎる空間では周囲の会話や視線が気になり、集中作業が妨げられるというケースもあるでしょう。

ここで重要となるのが「静と動のゾーニング」です。個人で集中するエリアとチームで協業するエリアが明確に分かれていることで、従業員は業務内容に応じて最適な場所を選択できます。

また、同調査では「どのようなオフィスでも出社したいと思わない」という回答は12.8%に留まりました。これは大多数のワーカーが、ニーズを満たしたオフィスであれば出社してもよいと考えていることを示しています。企業は従業員に出社を求めるのであれば、出社時の働きやすさや快適性を意識し、自発的に出社したくなるようなオフィス環境を整備することが重要です。

3. 「オフィスでなければならない価値」とは

ここで挙げたデータが示す「働きやすさ」と「集中しやすさ」は出社のための「前提条件」です。これをクリアした上で、企業が本当に追求すべき「オフィスでなければならない価値」は、従業員同士の交流と文化の醸成、そしてパフォーマンスの最大化にあります。現代のオフィスには、以下の3つの重要な役割が求められています。

.イノベーションを加速させる「共創の場」:偶発的なコラボレーションや、知識・経験の非言語的な共有を促す場としての役割。

2.企業文化を醸成し、エンゲージメントを高める「求心力の場」:チーム・組織の文化を体感し、帰属意識を高める場としての役割。

3.心身の健康と生産性を支える「ウェルビーイングの拠点」:最新のインフラとデザインにより、従業員の心身の健康と最高のパフォーマンスを支える場としての役割。

リモートでは難しい「熱量」や「空気感」の共有こそが、組織の創造性やエンゲージメントを高める要素であり、これこそが「オフィスでなければならない価値」といえるでしょう。

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4. パフォーマンス向上に繋がる「働き方」と「オフィス」のあり方

これらの「オフィスでなければならない価値」を最大化するためには、「働き方」と「オフィス」の両面からアプローチすることが重要です。

「働き方」の改革

出社の目的の明確化

「なんとなく出社」ではなく、明確な目的を持った出社を促進します。チームビルディング、ブレインストーミング、重要な意思決定、新人教育など、リアルな場でこそ価値を発揮する活動を意識的にオフィスで行うことで、出社の意味を従業員に実感してもらいます。

ABW の導入

従来の固定席制度から脱却し、業務内容に応じて最適な場所を選択できるワークスタイルの導入が効果的です。集中作業、チームミーティング、電話対応といったように、活動に基づいた働き方の選択肢を増やすことができます。

リアルな交流を促す仕掛け

シャッフルランチ制度、部門横断プロジェクト、社内勉強会など、自然な交流を促す仕組みを設計します。これらの取り組みにより、さらなるコミュニケーションが生まれ、組織全体の活性化につながります。

「オフィス」の改革

多様なワークスペースの提供

一律の執務スペースではなく、個人の集中作業用ブース、チームでの協業スペース、リラックスできるソファエリア、立ち会議用のハイテーブルなど、多様な選択肢を用意します。従業員が気分や業務内容に応じて場所を選べることで、パフォーマンスの向上が期待できます。

テクノロジーの活用

最新のWeb会議サポートシステム、IoTセンサーによる空間利用状況の可視化、スマートフォンでの会議室予約システムなど、テクノロジーを活用することでオフィスの利便性が向上します。

ウェルビーイングへの投資

従業員の心身の健康をサポートする設備への投資も重要です。自然光を最大限に活用した空間設計、身体的負担を軽減し最適な作業姿勢をサポートする家具の導入、リフレッシュスペースの充実、観葉植物の配置などにより、働く環境そのものが従業員のウェルビーイング向上に貢献します。

5. まとめ

調査データが明確に示すように、従業員は「働きやすく、集中できる」環境を求めています。企業に求められるのは、従業員の声に耳を傾け自律的な働き方を尊重し、それを実現できるオフィスを提供することです。

重要なのは、従業員一人ひとりが「会社は自分のパフォーマンスを最大化するために投資してくれている」と実感できる環境を作ることです。その積み重ねこそが、従業員が自ら「行きたい」と感じる魅力的な企業文化を育み、持続的な成長へと繋がっていきます。

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