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有給休暇取得の義務化はいつから?企業の取るべき対応をチェック
国会で可決された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」。通称「働き方改革関連法案」には、時間外労働の上限規制やフレックスタイム制の見直しなど、盛りだくさんな内容になっています。
そしてこの中に含まれる「有給休暇取得の義務化」は、企業としても早く取り組まなければならない内容なのです。今回は、有給休暇の義務化について法改正の内容や企業の取るべき対応のポイントについて解説します。
2018年12月20日
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年次有給休暇とは

有給休暇は、企業によって年休や有給などと呼ばれますが、正式名称は「年次有給休暇」。年次有給休暇は、勤続年数が6ヵ月を超えた労働者に与えられるお休みのことです。
一般的に、入社後半年勤続し続けることで、会社から年間10日の有給休暇がもらえます。最長で6年6ヵ月以上勤続すると、20日の有給休暇がもらえることになるのです。
日本の年次有給休暇取得率
では、現状の日本の年次有給休暇取得率はどのようになっているのでしょうか。
総合旅行サイト「エクスペディア・ジャパン」が2017年に実施した調査によれば、日本の有休消化率は53%。これは、今回調査対象となった世界30か国中でも最下位です。
下から2番目の韓国でも67%、ビジネスイメージの強いアメリカやシンガポールは意外にも80%以上と、日本の取得率は世界的にみても非常に低いことがわかります。2017年より以前の調査でも日本はほぼ最下位で、有給休暇の取得が進んでいない国というイメージがついてしまっていると言えるでしょう。
※参考:有休消化率2年連続最下位に!有給休暇国際比較調査2017(https://welove.expedia.co.jp/infographics/holiday-deprivation2017/)
取得率が低い理由
では、なぜここまで取得率が低くなっているのでしょうか。
同調査で、日本人は有給休暇を取ることに対して、「罪悪感がある」と考える人が多いという結果も出ています。ほかには病気などの「緊急時に備えて残している」という意見や「同僚が休んでいないので休みづらい」という心的要因が大きく関わっていそうです。
年次有給休暇5日間取得の義務化

今回、働き方改革関連法案によって、労働基準法が改正されました。それにより、年10日以上の有給休暇が与えられている従業員については、最低でも5日以上取得することが義務付けられたのです。
義務化される前とされた後の大きな違いは、有給休暇の取得しやすさ。有給休暇の取得率の低さを改善するために、今回の法改正が行われるのです。
いつから義務化されるのか
では、一体いつから義務化されるのかといえば、2019年4月1日から。もう間もなくの話なのです。あなたの企業では、すでに義務化に備えた制度整備は進んでいるでしょうか。
義務化の対象
義務化の対象となるのは、年10日以上の有給休暇が与えられている従業員ですが、具体的には以下のような人が当てはまります。
⑴入社6ヵ月以上経過している正社員もしくはフルタイムの契約社員
⑵入社3年半以上経過している週4出勤のパート社員
⑶入社5年半以上経過している週3出勤のパート社員
正社員やフルタイムの契約社員の場合、入社6ヵ月経過すると、年10日間の有給休暇が与えられます(ただし、出勤率が8割を越えることが条件)。その場合、年間の消化日数が5日未満の場合、企業側で有給休暇取得日を指定する義務が発生します。
⑵、⑶の場合も直近1年間の出勤率が8割を越えれば、年10日の有給休暇の権利が発生します。
週2出勤のパート社員の場合は、有給休暇の権利は発生しても7日まで。そのため、法改正により有給休暇取得日を指定する義務には当てはまりません。また、法改正により有給休暇取得日指定の義務になる場合でも、計画年休制度で有給休暇を取得していたり、従業員が申請して有給休暇を消化している場合。その日数分は、有給休暇取得日指定の義務の日数から差し引きます。
例えば、有給休暇を3日消化済みの人の場合、あと2日有給休暇取得日を会社側で指定すれば問題ありません。また、計画年休制度によりすでに年5日以上の有給休暇を付与している場合や従業員がすでに年5日以上の有給休暇を取得している場合。このような場合には、有給休暇取得日指定義務の対象から外れます。
取得できなかった場合には罰則もあり
この義務を怠った場合、労働基準法に違反してしまいます。罰則として、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。これは事業規模に関わらず、中小企業でも罰則の対象になるのです。
企業はどう取り組んでいくべきなのか
では、企業はどのように取り組んでいけばいいのでしょうか。まずは、現状の把握が必要になるでしょう。
社員の有給休暇取得日数の把握
まず、従業員の有給休暇日数の正確な管理が必要になります。誰に何日有給休暇が付与されていて、すでに何日取得しているのか、都度確認可能な体制を作ることが重要です。
確認したうえで、現状5日以上の取得が見込まれていない社員のいる企業は、対策を考える必要があるでしょう。
業務内容や職場風土の見直し
企業としては、「従業員の年休の取得が思うように進まず、特定の期間に誰も出勤できなくなってしまう」というような事態は避けなければなりません。
対策として、まず業務内容の見直しが必要になるでしょう。業務量や繁忙期を把握し、フレキシブルに見直しを行うことで、従業員が休暇を取得しても代わりが務まるように取り組むべきです。
また、もう一つ重要なのが職場風土の見直しです。前述した通り、罪悪感があることで取得率が低いという現状があります。そのため、上司が率先して有給取得を進めたり、メリハリのある働き方の重要性を説明するなど、取得しやすい風土づくりが大切になってくるでしょう。
どのように取得を進めるのか
では、どのように有給取得を進めていけばいいのでしょうか。大きく分けて2つの施策が挙げられます。
【1】個別指定方式
まずは、従業員の有給取得状況を確認し、5日未満になってしまいそうな従業員について、会社から有給取得日を指定する方法。
この方法のメリットは、会社と該当従業員との話し合いで有給取得日を指定するので、柔軟に対応できることです。デメリットとしては、従業員ごとの管理が必要になるため、手間がかかることでしょう。会社側から指定することを忘れないようにしなければなりません。
【2】計画年休制度の導入
もう一つの対応方法は、計画年休制度を導入することです。計画年休制度とは、会社が従業員代表と労使協定を結び、各従業員の有給休暇のうち5日を超える部分についてあらかじめ日にちを決めてしまう制度。
計画年休制度を使って年5日以上の有給休暇を決めてしまえば、改正法の指定義務を果たしていることになります。この方法のメリットとしては、従業員ごとに個別に有給休暇取得状況を管理する手間が省けることです。例えば、お盆休みや年末年始と合わせて計画年休制度を実施することで、できるだけ業務に支障が少ない時期に全社一斉に有給消化することも可能でしょう。
デメリットとしては、労使協定の締結が必要になるため、一度定めた有給休暇取得日を会社側都合で変更することができない点です。そのため、先の業務状況の見通しがたてづらく、あとで日程変更をする可能性がある企業には向いていないでしょう。
自社にあった「休み方改革」を
現状で有給休暇を5日以上取得している社員が多い企業の場合は、個別指定方式が適していると言えるでしょう。また、計画年休制度を導入する場合、有給を5日以上取得している人にも適応されるため、個別指定方式よりも有給消化が増える結果になります。
この新しい有給休暇に対する制度は、施行日も近いものです。企業としても自社の方針を定め、自社にあった「休み方改革」をすすめていってくださいね。