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理想のオフィスを実現するための坪単価の正しい扱い方を解説!

新しいテナントオフィスを探す際、毎月の賃料は予算を考える上で重要な要素ですが、オフィスの場合居住用の賃貸物件と異なり「坪単価」という記載が必ずのように出てきます。

あまり聞きなれない単語ですが、この坪単価の概念を理解することで、コストを抑えながらよい条件のオフィスに入居することも可能です。

今回は坪単価について、考え方から計算方法、さらに坪単価の価格を考える上で重要な要素についても解説を加えていきます。

オフィス選びにおいて有益な情報が多数含まれているので、これからオフィスを探す際ぜひ参考にしてみてください。

坪単価とは?計算方法(延床面積、施工面積)や注意点

 

 
坪単価とは、物件の購入費用や賃料などの相場として表される1坪(約3.3平米、約2畳分)あたりの単価のことです。
 
元々は家を建てる際の1坪あたりの建築費のことを指す単語でしたが、現在はオフィスの賃料相場を表す単語としても一般的に用いられています。
 
・物件の購入価格としての坪単価算出する場合:坪単価=購入価格÷坪数
 
例)50坪で2,000万円の家の場合、坪単価は2,000万円÷50坪=40万円です。
 
・オフィスの賃料としての坪単価を算出する場合:坪単価=家賃÷坪数
 
例)家賃20万円で10坪のオフィスの場合:坪単価は20万円÷10坪=2万円です。
 
今回の記事では、特に断りがない限り後者のオフィスの賃料相場と意味合いでの坪単価について解説します。
 

坪単価の計算方法①延床面積

 
オフィスの坪単価の算出根拠となる「坪数」ですが、原則としては建築基準法に準拠した「延床面積」が用いられます。
 
延床面積とは壁や柱の中心線で囲まれた部分の床の面積のことで、複数階に跨っている場合はその合計値で表されます。
 
壁に囲まれていない吹き抜け、バルコニーなどの部分は延床面積の計算には含まれません。
 

坪単価の計算方法②施工面積

 
施工面積とは建築業者などが独自に定めて算出した坪単価であり、施工した床全体、すなわち吹き抜けやバルコニーなどの部分も含んだ「可能性のある」面積です。
 
それぞれの業者独自の基準に準拠するため、正確な定義があるわけではありません。
 
気をつけなければならないのは、「坪単価」という記載には延床面積、施工面積いずれの数字であるのかの記載がない点です。
 
「施工面積」として吹き抜けやバルコニーを含んだ場合、母数である家賃を割る「坪数」が業務スペースとして利用できるフロアよりも大きい数字で表されるため、坪単価としては安い数字がでてきます。
 
見た目の坪単価が安いからとこういった要素を精査せずに物件を決めると、「思ったよりも狭かった」といったことが考えられるため注意が必要です。
 

坪単価を用いる理由は?広さを問わずオフィスのグレードを算出可能

 

 
坪単価というのは不動産業に関わっていたり、自社のオフィスの契約や管理に関わっていなければあまり聞きなれない概念かもしれません。
 
その上、そのそもオフィスの賃料は「坪単価」という一見見慣れない概念で表さなくても、その物件を借りるための賃料(家賃)がいくらなのかは明示されています。
 
しかし、現在のオフィスのテナント契約においては坪単価という概念はごく普通に利用されています。
 
坪単価という概念が用いられることにより、周囲の建物の価格の相場を把握出たり、そのエリアの市場における価値の変動といった長期のトレンドを読むことにも繋がってくるなどといった事情があります。
 

オフィスの広さには大きな差があり「家賃相場」の策定が難しい

 
居住用の賃貸物件を探す場合、あえて坪単価という少し難しい概念を用いなくとも直接「家賃相場」を調べることにより、検討している物件と周辺の他の物件を比べたり、そもそものエリア選定をしたりといったことが可能です。
 
その理由は、居住用の賃貸物件の場合、基本的には広さの上限が想定でき、かつ似た種類の集合住宅であればその広さに大きな差はないからです。
 
例えば、1人暮らし用の物件を考えると、ワンルームマンションの場合は15~18㎡、1Kや1DKの場合は20~25㎡といった面積が一般的です。
 
居住用の物件であれば、「1人暮らし」「(夫婦やパートナーなど)2人暮らし」「家族暮らしやシェアハウス(3人~)」と、居住する人数によって物件の種類が選ばれ、その物件ごとの大きさの差は限定されています。
 
しかし、オフィスの場合、数人の小規模な事務所もあれば、一つのフロアに何百人と人が集まって業務をし、場合によっては複数のフロアにまたがることもあります。
 
法人は、規模により所属している人数も異なり、当然その規模によってオフィス事情も変わってきます。
 
例えば、仮にですがあるエリアで賃料20万円の物件が二つあったとして、一つは10坪、もう一つは20坪であれば、前者の物件の坪単価は2万円、後者の物件の坪単価は1万円と2倍もの開きがあることが分かります。
 
つまり、このような中で単に周辺の物件の「家賃相場」を比較して検討している物件が高いのか安いのかを探るのは困難です。
 
もし、一等地の新しいビルの家賃が安かったとして、安易にそこに入居を決めてしまった場合、面積が想定よりも遥かに狭く、業務を行うのに不十分である、といった可能性もありえます。
 
坪単価であれば「一坪あたり」の価格を出すことができるため、少人数用の狭いオフィスでも、大企業向けの大きなオフィスでもその価値を測ることができます。
 
そういった事情もあり、公平にそのオフィスの賃料が周辺と比較して適正なのかを容易に判別するたためにも、現在のオフィスのテナント契約においては「坪単価」という概念が一般的に使われています。
 

坪単価はその物件のグレードを表すことが可能

 
坪単価であればオフィスの人数に関係なく「一坪あたり」の単価を比較するため、簡単にいうと「その物件のグレード」を表すことが可能です。
 
オフィスのグレードはエリア、エリアの中での立地、オフィスビルの新しさなど、複合的な要因で決定されます。条件については次の項目で詳しく説明しますが、簡単にまとめると条件の良い物件ほど坪単価は高くなりがちで、坪単価の低い物件は高い物件と比較すると何らかの要素で優位性がないと考えることができます。
 
逆に言えば、諸条件の中で無視しても構わないものがある場合(例えば「ビルの築年数にはこだわらない」、「エリアとして一等地であれば駅から遠くても構わない」など)、他の条件には恵まれていながらも坪単価が低い(≒相対的に賃料の安い)ような物件を探すことができるようにもなります。
 

エリアごとに坪単価の相場をまとめることにより、エリア全体の需要を探れる

 
坪単価は物件個別に算出されるものではありますが、エリア近辺の坪単価の平均値を算出することで、「エリアの平均坪単価」といった数字が算出可能です。
 
それらの数字を横で比較することにより、現在どのエリアのオフィス需要が高いのかといったことや、一つのエリアにおいて時期を変えて坪単価を比較することによりそのエリアの需要が増えているのか減っているのかを調査することも可能です。
 
例えば、東京都の2020年7月と2021年1月の100坪程度、新築のビルを除いた物件から算出した坪単価のエリアごとの平均値をまとめたデータがあります。
 
【2020年7月】

(C)木幡大地 (C)Google
 
【2021年1月】

(C)木幡大地 (C)Google

(出典:都心のオフィス賃料相場、この半年で最も下落したエリアは?)

 
坪単価3万円以上の「赤」のエリアを見ると、一般的にビジネスの伝統的な一等地としてのイメージの高い「大手町」「丸の内」「日本橋」といったエリアの坪単価が半年で下落していることがわかります。
 
さらに影響が大きいのは「原宿」「青山一丁目」「渋谷」「恵比寿」「六本木」など比較的新興のベンチャー企業を中心に人気の高い一等地エリアで、特に渋谷・恵比寿の2エリアにおいて下落が顕著です。
 
この下落には複合的な要因が考えられますが
 
・先行きが見えないため高額な家賃の支払いを抑える方針を取る企業が多い
・新興の企業の方がリモートワークへの移行が容易でありオフィス自体の需要が低下した
・シェアオフィス(レンタルオフィス)などへの入居が一般化し、占有的なテナント物件の需要が減った
 
などといった要素が予想されます。オフィスの家賃ひいては坪単価の下落のトレンドが計測できます。
 
このようにエリアの縦軸・横軸を坪単価で比較することによっても、ある時点でのどのエリアの需要が高いのかや、あるエリアにおける中長期的な需要のトレンドを予測することも可能です。
 

坪単価が高い物件・低い物件の要素

 

 
先述の部分と一部重複しますが、各物件で算出される坪単価について、坪単価が高くなる物件の要素、安くなる物件の要素について挙げていきます。
 
一般的には、居住用の賃貸物件と同様に良い条件が揃えば揃うだけ坪単価も高くなる傾向にあります。
 
逆に考えれば、自社にとって重要視しない条件を妥協することにより、坪単価を抑えながらも重視するポイントを満たすような物件を探すことも可能です。
 
例)一等地にオフィスを構えることが重要で、駅からの距離や築年数はあまり気にしない
例)新しくデザイン性の高いオフィスに入居することが重要で、エリアそのものはあまり気にしない
 
このように、予算と重視するポイント、重視しないポイントを明確にすることで、費用を抑えながら理想のオフィス物件と出会うことができるかもしれませんが、中には坪単価が相場と比較して著しく低い際、注視すべき個別の事情がある可能性もあるため、注意が必要です。
 

坪単価が高くなる物件の要素

 
・人気の高いエリアである:先ほどの坪単価MAPからもわかるように、人気の高いエリアにおいては坪単価は高く、それほどでもないエリアにおいては坪単価は低くなりがちです。東京23区内においても1万円台~5万円台、6万円と大きな差があります。一等地にオフィスを構えたい場合は相応の坪単価が求められます。
 
・エリア内でも立地が良い:エリアの中でも最寄り駅、それも複数の路線が乗り入れているような大きな駅の近くにあり、人が行き交うような立地にある物件は同じエリア内でも坪単価が高くなる傾向にあります。
 
・築年数が浅い物件である:新築や築年数が浅い物件は同じようなエリアの中でも坪単価が高くなる傾向にあります。近年はオフィスに機能性だけでなくデザインが求められる場合も多く、デザイン性の高い物件の坪単価が上昇するような傾向もあります。
 

坪単価が低くなる物件の要素

 
・人気の高いエリアから外れている:一等地と認識されているようなエリアから距離があったり、アクセス面で不利な面があったりするようなエリアにおいては坪単価が低めになる傾向にあります。
 
しかし、中には「初台」「人形町」「勝どき」など一等地エリアに隣接していながらも坪単価が低いようなエリアもあります。こういったエリア、立地に強いこだわりがなければ狙い目とも考えられます。
 
・エリア内での立地が悪い:一等地であっても、駅から遠く人通りの少ないような立地にある物件であれば坪単価が低くなりがちです。
 
取引先からの訪問があまり想定されないなど、エリア内での立地を妥協できる場合は良いエリアの新しい物件の中でも坪単価を比較的抑えたオフィス探しも不可能ではありません。
 
・築年数が古い:ビルの築年数も坪単価に影響します。エリアや立地などの条件が近い場合、築年数の古いビルの方が坪単価が低い傾向にあります。
 
一般的には建物が新しい方が外装、内装ともに綺麗であることが期待されますが、中には古いビルであってもリノベーションを加えることによって専有部分ではデザイン性の高い空間を実現することも可能です。
 
ただし、単にビルの築年数が古いだけでなく、法改正前に建てられたビルで、かつ改正にそった適切な対応がなされていない場合は注意が必要な部分もあります。
 
・耐震性:建物には大地震でも倒壊しないような「耐震基準」を満たして建造物を建築するよう建築基準法で定められていますが、この耐震基準が大幅に改定されたのが1981年です。この以前の耐震基準を「旧耐震基準」、以降のものを「新耐震基準」と呼びます。
 
旧耐震基準において最低限満たせばよい基準は「震度5程度の地震で倒壊しないこと」であり、震度6以上の地震が至るところで起きうる現状と照らし合わせると心許ない水準です。
 
旧耐震基準の元に建てられた物件であっても、耐震診断を受けて現在の基準に適合していることが認められるか、もしくは必要な耐震補強が行われていれば問題ありませんが、そうでない場合は災害時に他の物件に比べ倒壊リスクが高い可能性があります。
 
そういった物件の場合、テナント入居者がつきにくいため家賃を下げざるを得ず、坪単価も下落する傾向にありますが、社員の人命を守るためにもそういった物件への入居は避けるべきです。
 
・アスベスト対策:丈夫でありながら加工性が高く、安価なアスベスト(石綿)はかつて建築資材として重宝されてきましたが、現在は人体への有害性が強いことが発覚し、使用が禁止されています。
 
規制が強まる以前に建築された物件であり、かつアスベスト調査や必要なアスベスト対策が行われていないような物件については、耐震性対策と同様に家賃を下げなければ入居者がつきづらいため、家賃・坪単価が低く出る傾向にあります。
 
しかし、こうした物件への入居も長期的に社員の健康被害に悪影響を与える可能性もあるため、坪単価が低いからと安易に選んでも良い物件ではありません。
 
・事故物件:物件において事件や事故など、次の入居者が入居を躊躇するような要素(心理的瑕疵)があるような物件を「事故物件」と呼びます。
 
「事故物件」には明確な定義はありませんが、物件のオーナー側には入居を検討している相手に対し、そういった事象が起きた物件であることを説明する告知義務があります。(この告知義務についてもいつまで必要であるかの明確な定義はありませんが、一般には事故が起きた直後の入居者に対して行えばよいとされています。)
 
事故物件は相場と比べて家賃を下げないと入居者を募集するのが難しいため、坪単価も相場と比べ下落します。相場と比較して坪単価が極端に低い場合事故物件である可能性もあるため、そういった物件を避けたい場合は慎重に確認したほうが良さそうです。
 

SERECTで坪単価も含めた理想の物件オーナーと繋がれる

 
坪単価はオフィスを選定する際の重要な指標になりうる数値です。正しく理解し、物件探しの参考にすることができれば、理想のオフィス探しを予算を抑えた上で実現することが可能かもしれません。
 
しかし、坪単価の計算には法的に延床面積で行わなければならない規定はなく、場合によっては坪単価の低い物件は想定よりも面積が狭い可能性があります。
 
また、上手く条件を妥協すれば坪単価を抑えた物件を探すことも可能ですが、中には耐震やアスベストの対策など妥協すべきでない理由により坪単価が低い場合もあり、注意が必要です。
 
こうしたミスマッチを避けるために必要なのは坪単価の見た目だけの数字に囚われず、事前にオーナーに確認を行いながら坪単価の算出根拠や相場よりも低い場合何らかの特殊事情がないかをよく確認することです。
 
オーナーと直接繋がることのできるプラットフォーム、SERECTでは複数のオーナーと同時に直接やり取りを進めることができるため、リスクを回避しながら理想の物件を、条件を抑えながら探すことも可能です。
 

→ SERECTを見てみる

 

まとめ

 

 

オフィスの賃料に直結する「坪単価」について重要な論点をまとめました。坪単価はオフィスのグレードを表す指標であり、坪単価の高い物件に入居していることはステータスにもなりますが、逆にそれだけのコストがかかることも意味します。
 
全ての条件がそろったグレードの高いビルと比較して、何らかの条件で妥協することで、重視する条件を満たしつつ坪単価の低い物件に出会うことも可能です。
 
ただし、坪単価が低くなる条件の中には無視すべきでない要素が含まれている場合もあるため、坪単価のみで判断せず複合的な要因を事前に精査する必要もあります。
 
坪単価を重要な指標としつつも、それだけでは判断せず事前にオーナーと話し合い諸条件を確認するといったことも合わせて行うことが理想のオフィス選びを実現する上で大切です。

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